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ドール客室乗務員(後編)

 713便は西に向け水平飛行に入りシートベルトサインも消えた。キャビンアテンダントによる機内サービスが始まったが、この便は格安航空会社なので機内販売に特に力を入れていた。それが大きな収入源のひとつなので仕方ない事だった。


 沙羅は後ろの通路側の席なので前からやってくる、ドールキャビンアテンダントが気になっていた。まさか自分と同じ人形娘にここで出会うとは思ってもいなかった。この飛行機は中央の通路に左右三列シートの小型機なので必然的に真ん中に視線が集まっていた。


 「みなさんキャサリンが皆様のところに伺います。写真は自由に撮っていただいて結構ですが、他のお客様のご迷惑にならないようにお願いします。またツーショット写真もお撮り出来ますが、彼女のグッズを何か購入していただいた方に限らせていただきます」


 そういいながらチーフパーサーの長井はカートを押していたが、後ろにはキャサリンを従えていた。乗客の多くはお目当てのキャサリンが来るとシャッターを押したり、グッズを購入して一緒に写真を長井に撮ってもらったりしていた。キャサリン目当てにこの便にのった乗客も少なくないようだった。


 しかし乗客にはキャサリンに興味が無い者もいるので爆睡していたり雑誌を読んでいたりする者もいた。そんな乗客の振りを沙羅もとりたかったが、どうしてもキャサリンが気になっていた。


 「どういうことなのよ! あんなに嫌だった人形娘に対して目線が行くのよ! あたしもあの中に入りたいわ! あのエナメルの質感が素晴らしい人形の中に・・・」 どうやら人形娘に一ヶ月間されていたので、身体の方が反応するようだった。


 そう思っていると目の前にキャサリンがやってきた。本当は無視したかったが視線を向けてしまった。そして思わず危険な質問をしてしまった。


 「このドールのCAさん。中の人はどんな人なのですか? まるでネヴァードリームランドで着せられたみたい」


 その質問に長井が反応した。着ぐるみなのは公然の秘密だが、そんな中学生みたいな質問をする大人がいるとは思ってもいなかったからだ。


 「お客様、月並みな答えですが”中の人”などおりません。その証拠にキャサリンは呼吸していませんし、癖のある行動をしていませんわ」


 その答えを聞いたキャサリンの内臓の愛華は驚いていた。なんでネヴァードリームランドでドールにされた事を知っているのかを。それにしても確かに愛華は人間らしく呼吸をしていなかったし、食事もしていなかった。本当にドールの中に閉じ込められていたからだ。しかも人間らしい癖のある行動が出来なかった。いつもなら、長い髪を左手で触る癖があるが、その癖は長い髪ともどもキャサリンに封印されていた。


 「それよりも、あなたのスマホかなんかで写真を撮ってみませんか? それに何かグッズを買っていただいたらツーショットで撮っていただきますが、いかがでしょうか? 」


 沙羅は少し躊躇したが、ワゴンの中にあったポストカードを買って写真を撮ってもらう事にした。これには目的があった。キャサリンに近づくためだ。


 沙羅はキャサリンの身体を近くで観察した。たしかにネヴァードリームランドの人形娘と同じく衣装に空気の取り入れ口があり後頭部に音声発生装置の端子が見えた。この中に自分と同じ人形娘に閉じ込められた犠牲者がいるのだと!


 立ち上がったついでに、そのような趣味はないがキャサリンと抱き合った写真を撮ってもらった。このときキャサリンの身体に接触したが、表面はエナメルの光沢のある素材だったが、わずかに体温を感じる事ができた。わたしも人形娘の時はこんな感じだったのだとシミジミと思ってしまった。


 「ありがとうキャサリンさん。あなた頑張ってね! 」


 そういって沙羅はキャサリンとハグした。この時愛華はキャサリンの中で、もしかしてこの人は人形娘の秘密をしっているのだと直感した。


 しばらくして、シートベルト着用のサインが出て、着陸態勢に入った。613便は夏空を降下し青い海に島影が点在する風景が大きく見えるようになった。もうすぐ目的の空港へと近づいていった。

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