プロローグ
とある実験施設で人間を人形化する実証試験が行われていた。この日の被験者は佳澄といい遊園地のレストランでウェートレスをしていた若い女性だった。彼女は度重なる遅刻と欠勤によって退職干渉を受けていたが、この実験に参加することを条件に退職は撤回されていた。
「本当にあの娘を使ってもいいのですか? 彼女だって家族がいるでしょうし、いなくなれば問題になるでしょ? 」
「その点は大丈夫。調査によれば彼女は家族と当の昔に疎遠になっているし、近所付き合いもないし、職場にも友人はいない。だからいなくなっても直ぐには誰も探さないわ。それに実証試験だから一ヶ月もすれば元に戻すわ。失敗したらその時考えましょう」
何も知らない佳澄は、ちょっと昼寝をしていていいわよという言葉にだまされ居眠りしている間に全身麻酔をされたうえに、来ていた衣服を脱がされてしまった。すると人の形にくりぬかれた型に入れられた。ここで人形化の作業が行われた。
12時間後、佳澄の身体は人形、いや人間を依り代にした人形娘に変身していた。佳澄は驚いたが、彼女の意思には関係なく身体が動いたのである。
「あたしは人形娘のカスミです。これからあたしのお友達をいっぱいつくりたいな。これから仲間を増やすことをに協力しますわ」この日、人形娘のクイーン・カスミが誕生したのだ。彼女の身体は技術の不備により完全に人形そのものに変化してしまい、人間に戻れなくなってしまったが急激な進化をとげてしまい、その後の人間の人形化技術の進歩に無くてはならない存在になった。
彼女は水を得た魚のように人形娘として能力を発揮したため、十年が経過してもずっと人形娘の姿のままであった。そう、彼女は”中の人”を人形と一体化させる技術によって誕生した、女性型着ぐるみ着用者”人形娘”の第一号にして最強の人形娘の女王なのだ。
その後、人形娘は進化し様々な産業に投入されていたが、そのことは一般社会にはあまり知らされていなかった。そう、最高レベルの産業機密だからだ。しかし例外もあった、それが遊園地などの”夢の住民”だ。熟練スーツアクターが不足していることを理由に導入されたが、いつしか、人形娘にも労働者階級が誕生していたのだ。すなわち人形娘に正規社員と非正規社員があったのだ。
前者の場合には、個人個人のオーダースーツが与えられるが、後者は量産型しか入れず意に沿うことなく無理矢理人形娘にされるのだ。無論、後者の方が待遇は劣悪であった。この物語はひょんな偶然から人形娘として働かなければならなくなった女性の話である。