お手伝い 計人
振り返ると、いつの間にやら美奈がいた。ついでに、後ろに梨亜も見えるが、話しかけてはこない。話しかけてはこないが、こっちをすまなさそうな顔してみている。
――無視だ、無視。
「おぅ。いやな、こいつが俺に、美奈は俺を嫌いになるとかいうもんでな」
手をあわあわ動かして人の口を封じようとするバカを実力行使で黙らせながら、美奈に相対する。
俺の下でじたばたもがくバカを楽しそうに見ながら、小首を傾げて美奈が問う。
「ん? 計人、私に嫌われたいの?」
絶交しちゃう? と、笑いながら聞いてくる美奈に、真面目な顔して答える。
「いや、お前に嫌われると辛いからな。俺の方から嫌われるようにする気はないぞ」
具体的には、もう一度黒蜜プリンを作り直してもらいたいほど大好きだぞ。俺は。
「うん、よかった。私も大好きだよ」
にこにこ笑っている美奈に聞いてみる。
「あぁそうそう、因みに、昨日このバカと喋ったか?」
未だに下でじたばたうるさいバカを指すと、美奈は、うーん? と少し考え、
「私が筆箱ぶちまけちゃった時に拾うの手伝ってくれたから、親切にありがとうって言ったけど……。それが昨日、うん。昨日だったよ」
ね? と同意を求める美奈。無意味に空笑いを始めるバカ。
「……お前、改変しすぎじゃないか? 素敵云々は『親切に』部分かよ」
呆れた友人が、いっそ同情すら滲ませながらそんなことを言っているが、答えが分かったからには最早どうでもいい。
「で?」
話をぶった切って、何しに来たのか聞いてみる。
「あのね、クラスの書類、重くて一人じゃ運べないの」
ふむ。
とりあえず、あと少しだった昼飯をかっ込みながら尋ねる。
「どこだ?」
「社会化準備室」
結構外れだな。そりゃ、他人もあんま通らねぇから、手伝いもほしくなるな。
「分かった。――ごちそーさんっと。ちょっと行ってくるわ」
「おぅ、行ってこい」
「そのまま帰ってくんな! ――いや、それはむかつく。用事だけ済ましてさっさと帰ってこい!」
それぞれ勝手なことを言っているのを気にせず、美奈がにっこり笑いかける。
「二人とも、計人借りるね?」
「どうぞお構いなく」
「はいはい、思う存分こき使ってやっ……、いえ、頑張ってください」
勘の良いやつだ。時間が勿体無いので今は見逃すが、後で締めるという決心を嗅ぎ取ったらしい。ま、今更引っ込めたところで見逃す気はねーけどな。
「ふふっ、ありがとう。行こう? 計人、梨亜ちゃん」
手をひらひらっと振りながら、校内へと戻っていく美奈についていった。




