幽霊の 正体見たり 枯れ尾花 梨亜
「そんな訳で、今日はデパートに入ります」
「入ります」
「ふぅん、呪いのデパート、ねぇ」
胡散臭そうにする計人。
まぁ、私達だって呪いの仕業とは思っていない。念の仕業でもなければとっとと帰ればいいだけだし、文句は言わないの。
「どこから行ってみる?」
私が聞くと、計人は美奈を見、美奈は口に指を添えるようにしながら言った。
「デパート行ったって人達に聞いたんだけど、どうも具合悪くなった人たちは長時間デパートにいたみたい。休みの人もいるし、全員に聞いたわけでもないんだけどね」
――凄い、いつの間にそんなこと調べたんだろう?
「場所は近いのか?」
「ううん、バラバラ。それに、具合悪くなってない人達と同じ場所行ってる人もいたの」
「ってことは何か? ここは関係ねーってのか?」
「まぁ、その可能性はないとはいえないけど。そうじゃなくて、短時間の人の中にも具合悪くなった人がいたんだけど、その子達が言ってたの。『外で遊んでたせいで暑かったから入った』って」
「で?」
「暑くて涼みに入った人や、長時間デパート内にいて疲れた人が行くところっていったら……」
「喫茶店、ね」
「うん、多分。新刊買いに寄った程度の人は、態々喫茶店に行こうとはしないだろうけど、じっくりお買い物してたら、ちょっと一休みしたくなるものね」
「こん中、三件あるな」
どれか聞いたか? と尋ねられた美奈は、事も無げに答える。
「一応、気付いてからは聞いてみたんだけど、皆同じお店に行ってたよ」
「どこだ?」
「ここ。甘味処ひがしやま」
美奈が案内板を指差す。
「うし、じゃあそこ行くか!」
そうして私達は店へと向かった。
「おぉ、ビンゴ」
計人がぴゅうっと口笛を吹きながら呟く。
甘味屋の奥、厨房との出入り口付近に渦巻く靄があった。しかし、簡単に見つかったはいいが、客がうろつくような場所ではないため、不可視の掃除機モードを使うことに。
「いけっ、ミニコン」
計人が変な掛け声と共に掃除機を放つ。掃除機は狙い過たず靄を消し去った。
「なんとかなったな」
「ふぅ、良かったねぇ」
喜ぶ二人を見つつ、首を傾げる。あの程度なら、勝手に消えてもよさそうなのに、人々の具合を悪くするほどの力がどこにあったのだろうか?
ひょっとすると、元々は強い念が段々弱って消える寸前だったのかもしれない。
「人がそんなに通らない所だったから、残ってたのかしら?」
「ん?」
いけない、考えがいつの間にか口に出ていたみたい。
「あぁ、いや、あれだけ弱い念だったら、既に消えてておかしくないのになって思って」
笑いながら手をぱたぱた振ると、美奈が不思議そうに眼を瞬かせた。
「でも、お客さんが来た時、注文受ける時、注文運ぶ時に必ず通る所だから、下手な場所よりずっと通ると思うよ?」
確かに。
「まぁ、いーんじゃねぇの? どっちにしろ消えたんだし。それよりとっとと食って帰ろうぜ」
少し釈然としないものを感じながら、注文したわらび餅を食べる。
うーん、まぁ丁度消えそうなタイミングに出くわしたと思えばいいか。
そんなことを思いながら食べていたわらび餅の味は、あまり分からなかった。しかし、黒蜜を気に入った美奈がお土産に一瓶買って、何か作る気の様だ。是非ともご相伴に預からせていただきたい。
――この時、そんな暢気なことを考え、きちんと調査していなかったことが悔やまれてならない。




