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夢追人  作者: 北西みなみ
第二話
9/175

天界へ続く穴 計人

天界にて、というサブタイトルがあまりに続きすぎるので、タイトルだけ変えることに。うん、毎回変えるのも大変ね。タイトル考える才能は無い。


あ、内容は何一つ変わってません。

どこまでも落ちていけそうな底の見えない暗い穴。それが今、目の前に出現している。


落ちたら、確実に天国へ行けそうな。


――行こうとするには死ぬ必要があるから天界、とかいうんじゃねーだろうな。


阿呆なことを思いつつ、穴を出現させた人物を見ると、


「もう繋がってるよ」


と、事も無げに言われた。


――気にしてるのは、そんなんじゃねーんだが。


やっぱり、行くのや~めた、とか言えねーかな、と、往生際悪いことを考える。


が、そんな俺に梨亜が、入って入って、と促す。美奈は、と見ると、屈んで穴にひらひらと手を入れたり出したりすると、えいやっと勢いつけて飛び降りた。


見る見るうちに姿が闇に飲み込まれていく。


――しゃーねー。まさか、ここで死にはしねーだろ。


俺も覚悟を決めて、思い切り飛び込んだ。


最初は勢いよく落ちていたが、あまりの長さに、段々と上っているのか下っているのか分からなくなってきた。


いや、いつの間にか、落下が止まっていた。


ふわふわと無重力に似た感覚の中、流されるまま進んでいくと、目の前に立派な門が現れる。流れが止まった。


「異世界人の入国許可もらうから、まずここで待ってもらえる?」


「はーい」

「許可って先に取ってないのか?」


それぞれ勝手に返事を返す。


「本人が来てからじゃないと手続き出来ないのよ。大丈夫、二人なら許可出ない理由がないから」


そんなもんなのか、と門を見ていると、中から数人、こちらに向かってやって来るのが見えた。


「――すみません、結城梨亜さんですね?」


物々しい格好の上、何か上から目線のやつだ。何となく気に入らねーな。


「はい? そうですけど」


「ちょっとご同行願えますか?」


「はい?」


「北へお連れしろ、との命を受けておりまして」


美奈は、いきなりの命令に困惑しながらもきちんと答える。


「しかし、今地界人の入国許可をとろうとしているところでして」


「待っている時間はございません。申し訳ありませんが、従っていただきます」


随分と乱暴な物言いに、ふぅ、とため息をつく。


「――分かりました。二人共、悪いんだけど、ちょっとそこの待機所で待っててくれる? すぐ戻るから」


どうやら行くことに決めたらしい。即決だな、おい。


俺ら、置き去りかよ……。


「大丈夫?」


心配そうに尋ねる美奈に、にっこり笑って答えたる梨亜。


「うん。ごめんね、ゴタゴタして」


「何か気を付けないといけないこととか、ある?」


「うーん。ここからふらふら歩いて、いつの間にか密入国、とかなければ、別に」


「待ちくたびれて帰りてぇ、とか思ったらどーすりゃいい?」


梨亜への質問だったが、待機所と呼ばれた場所にいた係員らしい者が答える。


「お戻りの際には、お送りしますよ?」


「あぁ、ありがとうございます。その時はお願いします。――というわけで、あの人に頼んで?」


「りょーかい」


これで、飽きて帰りたくなっても帰れない、という事態は回避されたわけだ。


「では、ご同行願えますね?」


さっさとしろ、とばかりに会話に入ってきた連中に、梨亜は連れ去られていった。


「さて、どうするか」


さすがに、こんな訳の分からない場所に置いてかれるとは思わなかった。


大体、梨亜は何も疑問もなくお願いしていたが、あのおっちゃん、俺らの帰りたい場所へ返せるんだろうか?


この世界の外に追い出すだけとか、間違って違う世界にとかは、しゃれになんねーぞ。


段々と不安になってきた。



「最初から波乱万丈だねぇ」


しみじみと言う美奈に、その通りだと頷く。――中入ったら何か奢らせよう。


「その内、俺らも捕まって帰れなくなったりしてな」


ははっと笑いながら言うと、美奈に注意される。


「言葉には言霊があるんだから、変なこと言っちゃ駄目よ」


「言うんだったら、『皆無事に帰れる』とかにしておかないと」


人差し指を口の前に立ててたしなめる様に言われ、首をすくめる。


「まぁ、確かにこれ以上の面倒はごめんだな」


「そうそう。平穏無事が一番」


そんなことを言っていた俺らだったが。


『言葉には言霊がある』


暫く後、俺はこの言葉を思いしる。


――やっぱ、重要だわ。先人の話に耳を傾けるのは。

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