正しい銘菓の召し上がり方
一応、銘菓の名前は本物とは違う名前に。でも、分かりますよね、これ(信○餅、んまんま♪)。
「そこのお三方、お土産どうぞ?」
そう言ってクラスメイトが差し出したのは、ビニール風呂敷に包まれたお菓子だった。
「「ありがとう」」「サンキュー」
貰ったものを見て、美奈が歓声を上げる。
「わぁ、謙信もちだ」
それは、竜胆屋の謙信もちであり、たっぷりの黄な粉と黒蜜の付いた、ごくごくポピュラーな越後銘菓だった。
「有名なの?」
「うん、これ大好き。おいしいよ」
顔いっぱいの笑顔になる美奈に、謙信もちの期待がいや増す梨亜。
そんな梨亜に、計人は正しい食べ方を伝授する。
「まず、風呂敷を開けて、綺麗に広げる」
「ふんふん」
「黒蜜をどかして中蓋を取り、容器を逆さまにする。ポイントは、風呂敷中央に中身を出すことだ」
「へっ?」
「その上から黒蜜を掛け、風呂敷の四隅をつまんで上に引き上げる」
「えぇ?」
「そして、風呂敷の中身をよく揉み、黒蜜と黄な粉をしっかり混ぜる」
「……」
「風呂敷を開いたら食う。これで完璧だ」
「嘘だ!」
最初はきちんと聞こうとしていた梨亜だったが、中身をぶちまけるという所から、だまされていると感じたらしい。すっかり疑いの眼になっている。
「何が嘘だ、正しいのはこう。なぁ、美奈?」
「うん。このやり方、公式Webサイトに載っているのよ」
「ほ、本当に?」
「本当だよ。ただ、私はいつもは他のやり方で食べるけどね」
「ど、どんな方法?」
「えっとね、まず、中蓋を取って、ようじを手に取ります」
「ふんふん」
「黒蜜のあった部分が凹んでいるので、平らにすべく、ようじで黄な粉をさくさく平らにしていきます」
「ふむふむ」
「平らになったら、お餅と容器の隙間にようじを入れて、黄な粉を下に落としていきます」
「ふーん」
「お餅とお餅の間にもさっさか落とし込みましょう」
「ふんふん」
「黄な粉が殆ど容器の下の方へと移動したら、黒蜜を掛けます。全部掛けちゃって大丈夫よ」
「ほうほう」
「お餅を少し持ち上げたりして、さくころさくころ黒蜜と黄な粉を混ぜます」
「さくころさくころ……」
「黄な粉と黒蜜がしっかり混ざったら、召し上がりましょう」
「さくころさくころ…………?」
どうも説明の擬音が気になるようだ。ころって何の擬音? と思ってはいるが、直接聞く勇気はないようだ。
「つまり、やってることは一緒だな」
計人が身も蓋もないまとめをする。
「そうね、きっちり混ぜて食べる訳だし」
「だろ?」
「他には、お餅を風呂敷に開けちゃって、黒蜜を容器に入れてお餅を蜜につけながら食べるって方法や、真ん中のお餅を縦にして間に黒蜜を流しいれて食べるって方法もあるよ」
「そっちは、黄な粉と黒蜜はあんま混ぜねーんだよな」
「うん、でも混ぜた方が好きかな、私は」
梨亜ちゃんも一つは混ぜないで食べ較べてみてもいいかも、という美奈に、呆然と呟く。
「この風呂敷、そんな使い方するためのものなんだ……」
「当たり前だろ、何のために付いてると思ってんだ」
その夜、竜胆屋のサイトを見た梨亜は、二人の教えた方法が本当に載っているのを見つけた。
こうしてまた一つ、この世界の奥深さを知った梨亜だった。
友達と一緒に食べた時の「さくころさくころ」が気になる北西みなみなのでした。ただ、これを書きたいがために無理矢理梨亜に食べさせてみました。
ちなみに、食べ方はWebサイトに本当に載ってます。見てみてね。




