害夢 3 梨亜
私の話を聞いて一言。
「なんともやりきれねー話だな……」
手に持った武器をじっと見つめながら、ぽつりと呟かれた言葉に胸が痛む。――計人は優しすぎるんだ。
ついつい本当のことを教えてしまったけど、害夢がこの世界にとって招かれざるものであることは違いない。だから、この世界の住人である計人にとっては、世界を脅かす化け物と認識させたままでいた方が良かったのかもしれない。
倒すべき相手にまで心を割いて、倒さざるを得ないジレンマで壊れてしまうなんて嫌だ。
「でも、ここで感情を爆発させていったことで、夢人本人は少しすっきりしたはずよ」
私は、害夢は想いの欠片であり、本人とは関係のないものであることを説明した。
害夢を生み出した本人は、生み出したことすら知らずに生きており、倒したところで傷付く存在はいないのだ、と。
しかし、計人はこちらの方を黙ってみているだけで、何も言わない。心なしか、何かを耐えるような顔をしている気がして、焦ってしまう。
「それにそれに、計人だってほら、遠くまで出掛けて貴重な体験した訳だし! きっと人生経験多い方が大きな人間になれるって!」
――って、何言ってんの、私?
自分でもよく分からない変なことを言ってしまった。そんな人生経験、いらないでしょ!
私の慰めの甲斐なく、計人は俯いてしまった。どう慰めればいいのかと必死に考えるが、かすかに震えながら痛みに耐えている計人を見ると、から回るばかりで何も浮かばない。
――どうしよう!
こんな時、美奈がいればきっと何とかしてくれるのに、と思うが、いないものはどうしようもない。どうしていいか分からず、何かを言おうとしてはやっぱりやめる、というのが続いた。
すると、
「ぷっ! ロボットダンスの練習かぁ?」
……は?
計人は、一旦何かを耐えるようにしていたが、もう限界、と笑い始める。
その顔は、先程必死に元気付けようとしていた時にも見られた表情であり。つまりは……。
「なっ、計人! 騙したの?」
人が必死にフォローしようとしていたってのに!
怒りに打ち震える私をよそに、計人の笑いは留まるところを知らない。
「お、俺の人生経験まで、か、考えて……、ぶはっ」
ひぃひぃ笑いながら言う計人に、憂いの色は全くなかった。
――ま、いっか。
結果的に計人が笑っているのだ。どんな形であれ、計人が辛くないならそれでいいや、と深く考えるのをやめると、何だか私まで笑えてきた。
人のいない駐車場に、二人の笑い声が響いていた。
このままいられたら、と思ってしまうほど、楽しい時間だった。




