害夢 1 梨亜
項番が1に戻っているのは間違いではないのです。
ちょっと時間を巻き戻して、梨亜視点で戦いを見ます。なので、これ含めて三話ほど、同じ内容が続きます。
今日も真面目に見回り活動。……なんだけど。
計人が微妙にまだ落ち込んでいる。
――術なんて、使えなくて当然なんだけどなぁ。
そもそも地球は科学文明が発達した世界で、術とか魔法とかそういった類のものは存在しないものになっている。
そんな世界で、術を見よう見まねで発動できるという時点で凄いのだ。
それを口を酸っぱくして説明してみたんだけど、言えば言うほど落ち込んでいってしまった。
まぁ、話題に出さなければその内忘れてくれるでしょ、と美奈に口止めして何事もなかったかのようにすることにしたんだけど。
――うわぁ、念をつんつく突き始めた。
何だか、辛気臭いため息つきながら突き回される念が少し不憫に思えてくるくらい凹んでいる。
これはちょっと、美奈にこっそり対処法を聞いた方がいいかもしれない……。
そんなことを思っていると、端末から音が鳴る。これは……。
「あ? 何だこの音?」
不思議そうな計人の声はひとまず無視し、端末で状況を確認する。――最悪。
「美奈、悪いんだけど、一人で帰っててくれる? 計人、ついてきて」
言って、家へと走り出す。
「おい、どうしたんだよ」
慌てて追いかけてきた計人が聞くが、とりあえず走る。走りながら説明とかいう器用な真似は無理!
家に戻ってから、害夢が出たことを簡単に説明し、早速現場へ向かう。
「計人、あっち見える?」
害夢のいる方角を指すと、計人は怪訝な顔をして見つめる。
「……カメレオン?」
肩をすくめて気持ち悪そうに言う計人に、あれが害夢だと説明すると、不思議そうに聞かれた。
「ん? 今度の害夢は、人の夢に現れてんのか?」
「違うわ、ここは現実よ」
「は?」
何が何やらさっぱりという感じの計人に、ひとまず現状だけを言い、ともかく現場へ向かう。
「これ、どうやって倒しゃいいんだ?」
害夢の近くまで来て、その大きさを実感したらしい計人がぼやく。
「うーん、まずは足止め……「やるっきゃねーか!」
いきなり、人の話を聞かずに害夢に跳びかかる計人。
「え、ちょっ、計人!」
触手を叩かれた害夢は当然怒って、別の触手で打ち払う。
「もぅ!」
更に続けて滅多打ちにしようとする触手を、間一髪かいくぐって計人を掻っ攫い、そのままの勢いで遠くまで飛ぶ。
「け、計人あなた、死にたいの!?」
何も考えずに飛び込むなんて!
驚きと疲れと間に合ったという安堵が交じり合い、思ったより声が大きく響いた。
「悪ぃ……」
声に驚きぽかんとした顔をした計人が、次いで苦しそうに項垂れたのを見て、はっと我に返る。
しまった、言いすぎた。




