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夢追人  作者: 北西みなみ
第七話
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害夢 3 計人

ぜぇぜぇと息を整えながら言われた言葉に、流石に返す言葉もない。


「悪ぃ……」


神妙に呟いた俺を見て、あわあわと手を振ってくる。


「まぁ、こっちも説明後回しにしてたのが悪かったんだし」


その慌てた様子が何となくおかしくて、こんな状況なのに何故か和んだ。それがどうも顔に出たらしく、バカにされたと思ったのか、梨亜の顔が赤くなり、挑むように睨み返される。


「だ、だから、悪いとかは思う必要ないけど、危険なことはしちゃ駄目よ? ……」


後半何か言ったような気もするが、同時にそっぽを向かれたので、心の平穏のためにも聞き返さないのが正解だろう。聞こえない振り ――実際、聞こえてないが―― だ。そもそも化け物はまだ暴れているため、暢気に話している場合でもないしな。


とりあえず頷き返すと、ほっとした顔になって説明を始める。


「流石に、いきなり害夢を倒せ、なんて計人に言ったりはしないから。計人には、あいつの注意を引き付けて時間稼ぎをしてもらおうと思ったの」


そう言いながら梨亜は、箒を取り上げ、力を込めていく。


「これで暫く自分の身を守って」


箒は、鎖鎌の形になっていた。


「それはある程度、計人の意思で動くから、適当に振り回して触手から身を守りつつ、引き付けておいてほしいの」


鎖を持って試しにぐるぐる回してみると、思ったとおりの起動を描く。成程、失敗して自分が怪我するってことはなさそうだ。


「どれくらいもてばいいんだ?」


「術を発動させて押さえ込もうとしているから、それまで」


「分かった。注意ひいときゃいいんだな」


「そう。お願い」


簡単にやる事を聞き、再び駐車場へと移動する。化け物は、攻撃対象が急に消えたことで怒ったのか、先程より激しく暴れている。


「おら、こっちだ、木偶の坊!」


俺の挑発に応えるかのように、触手が一斉にこちらに向かって伸びる。俺は鎌をそちらに向けて振り回した。


箒では全く傷付きもしなかった触手が、スパスパ面白いように切れる。しかし、痛覚がないのか鈍いだけなのか分からないが、化け物は攻撃の手を緩める様子はなかった。


救いは、特に賢いわけでもないらしいことか。こちらががむしゃらに鎌を振り回してるだけなのに対し、それを奪おうとか、避けて梨亜を狙おうとかいう動きが見られないのだ。


迫りくる触手を切り裂いていると、後ろから凛とした声が響き渡った。


「街に舞いくる風に請う 平穏望みし我が意に沿いて 我が前に立ち塞がりし敵を 打ち払え」


同時に、化け物が突風に吹き飛ばされる。


「自由を纏いし風に請う 平穏望みし我が意に沿いて 怒れる敵を 縛りたまえ」


転がった化け物が起き上がる前に唱えられた術によって風の鎖が発生し、化け物の動きが封じられる。どういう原理かは分からないが、鎖が発生すると同時に ――縛られていない部分からは伸びても良さそうなものなのに―― 触手も伸びなくなった。


やったか!? と思った瞬間、鎖全体が震える。


「お、おい。平気か? これ」


引きちぎられるんじゃねーだろうな、これ、と思い、一応鎌を構えて備える。


「御霊を護りし水に請う 平穏望みし我が意を汲みて 怒れる敵を 鎮めたまえ」


梨亜の言葉に反応して化け物から光が溢れ、動かなくなる。


ふぅ、と一息ついた梨亜は、化け物に向かって歩いていく。


「おい! 術解けたらどーすんだ、危ねぇぞ」


慌てて後を追う俺に、梨亜は平気、とばかりに笑ってみせる。


「大丈夫、もうこれは消えるから」


言葉と同時に、化け物は段々薄くなり、やがて一つの言葉を残してパチンと消えた。


《お願い、隠れてぇ!》

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