天界へのお誘い2 計人
――それにしても、珍しいな。
美奈が ――俺が一緒にいるとはいえ、それとはあまり関係なく―― 夢追人の手伝いを楽しんでいる気がする。
他人に知られたら変人扱いされかねないのに。
いつもと違う美奈の行動を疑問に思っていると、梨亜が話してきた。
「ところで二人共、今度の土曜日、暇?」
「別に用事はねーけど、何するんだ?」
突然の質問に、また面倒くせーことやるのか? とげんなりするが、美奈にも予定を聞いたことを疑問に思う。
美奈が「私も予定ないよ」と同意すると
「私の代わりに地界人が夢追人やるって、きちんと報告しておこうかと」
一応上司に口頭説明はしてるんだけどね、と言われても、そうなのか、としか言いようがない。
よく分からないが、報告ってのは俺達の予定に左右される様なものなんだろうか?
勝手にすればいい気がする。
そんな俺らに、梨亜の言葉が続いてくる。
「だから、用事がないなら、うちの世界へ行ってくれる?」
――梨亜の世界は、他から見ることも出来ないんじゃなかったのか?
外界から隔絶されただの、そこだけが特別だの、なんだかめんどくせーことを聞いたような気がしたんだが。
そんな俺の疑問が分かったかの様に、説明が入る。
「私達の世界は、いうなれば、大きな膜で覆われているようなものなわけ」
「夢人ってのは、自分に合いそうな世界を選んで共鳴するから、存在するか分からない世界を見てみようとする事はないのよ」
「適当にふらふらさ迷う意識があっても、膜が邪魔してたどり着けないしね」
「つまり、普通なら行けないけれど、そこへ行こうとする明確な意思さえあれば、行けなくはないということ?」
「そう。それと、膜の通り方を知っていれば、ね」
美奈の質問に、にっこり笑って言う梨亜。
「でも、行くって、具体的にどうするの?」
――まさか、空飛べとか言わねーよな?
でも、飛べたら楽しそうだ、とか考えていると、梨亜は小さなピコピコハンマーの様なものをぷらぷらと揺らした。
どっから取り出した? 今。
「これで地面を叩くと、向こうへ帰るための穴が開くのよ」
帰るための、『穴』ねぇ?
「……。で? どうすんだ?」
嫌な予感はするが、一応、聞いてみる。
すると、にっこり笑って梨亜は答えた。
「勿論、中に入る。大丈夫、怪我したりはしないから」
フリーフォールに決定のようだ。……やっぱ、用事あったわってのは、流石に無理か。
なかなかにスリリングな休日になりそうだ。
「いつくらいに行くんだ? 行ったら観光位はさせてもらえんだよな?」
「あ、一日がかりなら、お弁当とか作ってもいいよ?」
一応、こちらの要望を出してみると、美奈からもうまそーな提案がされる。
――美奈の弁当か、それは悪くねーな。
弁当の中身を注文すべく、何を頼むか考えてみた。
やっぱ、唐揚げは鉄板だな。竜田揚げでも構わねーけど。後は、ご飯は散らし寿司にしてもらうのもありだし、食べやすいよう茶巾寿司もいいかもしれない。
後は適当に作ってもらって当日の楽しみにするのもありだな、と考えていたら、
「それも魅力的だけど、うちの料理も食べてみない?」
と言われる。
天界の料理か。それはそれで興味あるな。
美奈も、どんなものか食べてみたいというので、現地調達となった。
基本はこちらと変わらないようなものがあるらしい。今から行くのがちょっと楽しみになった。