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夢追人  作者: 北西みなみ
第六話
74/175

違い 5 計人

「けど、最終的には婚約者を悪者扱いして、実家から絶縁させるまで追い詰めたんだろ?」


主人公がどんな手を使ったかは知らねーが、結局騙されてんじゃねーか。


この話の中で最低なのって、ヒーローじゃねーのか?


そんな疑問が分かったのだろう、美奈が首を振る。


「ううん、実はそれも間違いでね」


「絶縁させねーのか?」


「うん、実家と縁は切るんだけど、それ、玲人さんじゃなくて、小百合さんの希望だったのよ」


「はっ? なんだそりゃ?」


だってねぇ、と続ける美奈は少々呆れ顔だ。


「元々、家同士が仲良しで結婚予定だったのよ? 家と繋がっていれば、私生活でも社会生活でも何かと会う羽目になって自分も辛いし、玲人さんの罪悪感も刺激しちゃうし」


まぁ、まだ気持ちがあるなら、自分が会いたくないのは分かる。分かるが……。


「振った方は気にしねーんじゃねーの?」


主人公とラブラブハッピーエンド中な上、絶縁状態になろうとしてる相手を止めなかったんだろ? 鉢合わせは、ちったぁ気まずいかも知んねーけど、それくらい自業自得だろ。


「ううん、だって別れるまでの間、ずーっと二人の間で悩みまくっていたんだもの。最終的に主人公を取ったけど、それは純粋にそちらだけを好きになったんじゃなくて、小百合さんは自分がいなくても平気だけど、主人公には自分しかいないって思い込みや、責任取らなきゃ、という使命感とか混ざっての選択だし」


「はぁ??」


「ヒーローは、この小説ではいつも格好良く颯爽としているし、主人公ひと筋で単純に恋愛しているように見えるんだけど、実際にはかなり色々と精神的に追い詰められているのよ」


「ほぉ」


「主人公に迫られまくって、いじめられてる主人公への保護意識やら罪悪感やら色々あって、主人公のことが好きなのか、それも小百合さんより好きなのかってことが分からなくなってきてね。今までの自分達の想いはおままごとだったんじゃないかってとこまで追い詰められてたのよね」


一体、何をどうやってそんな追い詰めたんだ、主人公よ。


「小百合さん、あまりに思い詰める玲人さんを見て、自分を選ばなくても構わない、だから自分の心に偽らない答えを出して、と励ましたのね」


……とても良い話だ。良い話なんだが、何故だろう? すげーやな予感がするのは、美奈の表情が暗いからか。


「それを聞いた玲人さんは、小百合さんは自分のことをそんなに好きじゃなかったんじゃないか、今まで他に相手がいなかったから一緒にいただけなんじゃないか、って……」


「思っちゃったのか」


「思っちゃったのよ」


ふぅ、と何度目になるか分からないため息を吐く。


「主人公の方が『私はもう貴方なしでは生きていけないわ。一緒にいられないならこの命なんて……』的な脅しをかけてたのに対して、『別に選ばなくてもいいの』なんて言われちゃったから、と一応フォローしておくけれど」


フォローになるんだろうか、それは?


「いつも明るく自分に積極的に話しかけてきていた主人公が、小百合さん達のいじめにあって、明るさが翳ってしまった。だけど、自分がいれば笑っていられると言っている」


「それに対し、貴方がいなくても私は変わらないわ、と言う小百合さんは、一緒にいたいとは言ってくれなかった」


言わなかったからって、一緒にいたくない訳ねーってのは……、分かんねーほど追い詰められてたんだろうな。


「で、そんなあやふやな気持ちで主人公を選んだ玲人さんに、両家が怒ってね」


まぁ、分からなくはない。どう考えても、はっきり気持ち変わってるようには思えねーし。


「小百合さんの家は好きになっちゃったなら仕方がないって、ちょっと苦い顔する程度だったんだけど、玲人さんの家はもうかんかん。それこそ、お前なんて勘当だ! という騒ぎにまで発展したのよ」


「まぁ、大事な友人の大切な娘さんを不幸にしようとすりゃーな」


確かに恋愛は自由だって言われても、その心変わりの仕方じゃあなぁ。申し訳なさすぎて、下手すりゃ両親達の交流すら途絶えかねんわ。


「それを必死に宥めて、主人公の教育を頼んだのが小百合さんなのよねぇ」


「教育?」


何をだ? 卒業できそうにねーほど成績悪ぃのか? 主人公って。

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