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夢追人  作者: 北西みなみ
第六話
72/175

違い 3 計人

「――だが、水掛けられたってのは、注意とかいう問題じゃなく、れっきとしたいじめじゃねーのか?」


「うーん、いじめというより対等な言い合い、というか喧嘩? といっても、小百合さんのお友達たちも、本当は水掛けようとした訳じゃないんだけどね」


「どういうことだ?」


「小百合さん、玲人さんにお菓子作ってあげてたのね。それを食べようとしてた時、横から主人公がおいしそうだって勝手に食べちゃって」


「他人のもんを勝手にか」


「うん。まぁ、小百合さんが作ってくれたものだって知らなかったんだけど」


「いや、そーいう問題じゃねーだろ」


美奈の菓子を他のよく知らん女が勝手に食ったとかなったら、俺なら切れる。


梨亜だって、俺の菓子食うことはあるが、まず俺に聞いて、不本意ながら ――非常に不本意ながら―― 俺が本当には怒らないのを見計らってから食う。本気で嫌がるような奪い方はしてこない。


「ともあれ、それが新作だったから、後で感想教えてと言われていた玲人さんは、小百合さんに謝りに行ったのね」


「ま、普通だな」


「で、その時一緒にいたお友達が、主人公のドジで美術の授業の時に作品を壊されちゃった子で」


「……悪いタイミングだな」


「そう。玲人さんが謝って去っていった後『私の邪魔だけでは飽き足らず、小百合さんのものまで盗むとは!』って、怒り心頭で飛び出して行っちゃったのよ」


「気持ちは分からないでもない、な」


「呆気に取られていた小百合さんは、少し遅れて慌てて追いかけていったけど見失っちゃって、やっと追いついた時には凄い言い合いになっていてね」


「お友達が『貴方は存在自体が邪魔なのよ!』と叫んで、思わずどんっと手をその場に叩きつけたのね」


「ほぉ」


「その衝撃で紙が落ち、水道のセンサーに当たったの」


「……おい、まさかコントみたいに、それで主人公に水が偶然かかったとかいわねーだろうな?」


恐る恐る聞くと、厳かに頷かれる。


「そのまさか。普通なら水が流れるだけだったんだけど、丁度その時、ちょっと水まくためにホースが繋がっていて。友達の方がホースを偶々踏んでいたんだけど、水が流れてきた感触に驚いて、足をあげてしまったの」


止められていた水は、一気にホースを跳ね上げ、主人公に向かってべしゃーっと一直線に飛んでいったらしい。


コントだ。紛うことなくコントだ。タライが落ちてくりゃ完璧なんじゃねーか?


「勿論、本人も濡れたし、他にも飛び散ったわよ? 小説では、主人公だけに態とかけたようになってたけど」


「……で?」


段々と聞くのが間違いな気がしてくるが、怖いものみたさで続きを促す。――おい、こらそこ! このタイミングで鳴くな、カラス!


「主人公が『酷い』とわめき始めたの。小百合さんはお友達にハンドタオルを渡して水を拭ってあげていてそれどころではなかったんだけど『貴方が水をかけるように言ったの?』『私がお金持ちでないからって、貴方みたいに心が貧しい人よりはまし』とか言っていたところにヒーロー登場」


「良いタイミング、と言っていいのか?」


いっちゃなんだが、嫌な予感しかしないんだが。

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