表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢追人  作者: 北西みなみ
第二話
7/175

天界へのお誘い1 計人

今までの結城梨亜視点から、五十嵐計人視点になります。

ころころ変わる視点は、タイトルの後ろに書いてある名前で表しています。

ひょんな事から、夢追人という訳の分からない事をやるようになって、数週間。


ヒトの念とやらと戦うのにも、段々と慣れてきた。


というか、戦いと呼べるものではないんだが……。


念というのは、異世界の存在が、この世界に対して何らかの影響を与えてしまう力、もしくはそんな力を生み出す思いのこと、らしい。


んで、その強さは夢人の感応力やこの世界への不満度により決まるらしい。


さすがに、こんな世界滅んでしまえ! と思う程の強い念は、滅多に存在することはない。


何故なら、そこまで自分の感性と合わなくなった世界へは、自然と共鳴できなくなるから、だそうだ。


そう考えると、怪物に襲われた俺は、かなり貴重な体験をしたことになる。


ま、全然嬉しくないけどな。


せめて出るなら、お化けや幽霊を倒すことの出来る武器を手に入れた今にすりゃーいいのに。


おっと、話が脱線した。


大抵の場合は、何となく気に食わない、程度の念が、そこを通ると不安やイライラが起こりやすい一帯を作り出す、程度のもの、らしい。


よって、意志の強い者には何の影響ももたらさず、子供や意志薄弱な者達が気にする程度のものらしい。


――らしいらしい、ばかりだが、実際に何がどうやばいのか、実感できるようなことが無いんだから仕方がない。


ま、とりあえずそんなもの、放っておいても特に問題はない、らしい。


ただ、例えば高速道路で、何となく集中力が途切れがちになるような念が溜まっていたりすると、交通事故多発地域になったりするそうだ。


そういった所に溜まっている念を、こっそり消すのが、夢追人の主な仕事だ。


地味だ。大層地味だ。


それとは別に、他世界と共鳴している自世界人が、他世界に対して不満を持っている場合、それをそれとなく和らげ、他世界におかしな念を発生させないようにすることも仕事の一つだ。


これは何と、他人の夢に入って説得するものだったりする。


これに関しては、夢魔かなんかになった気分を味わえるため、密かに楽しんでたりする。


まぁ、他人の見ている夢に割り込んで説得するため、『覗き』みたいで、多少の罪悪感を覚えないでもないが。


――俺だったら、見られたりしたら殺すか自殺する! っていう、他人には見せられない様な夢を見てたやつもいたしな。


梨亜曰く、大きな敵と戦うより、敵を大きくしない努力が必要、なのだそうで。


世界への不満が大きくなると、この世界で言われるお化けや妖怪のようなものとなってしまい、直接的に世界を破壊しようとしたりするらしい。


いつか、妖怪大決戦みたいな戦いをする日が来る可能性もあるということか。


訳わからん強大な敵と戦う俺を想像し……。


……何となく、漫画やアニメで、それぞれの動きに技名があるのが分かる気がした。


あれだ、格好いいからとか、そんなんじゃない。素面じゃやってらんねーよ、の勢いだ。だって、こちとら平和な国の人間だ。生きるか死ぬかのぎりぎりの戦いなんてものは想像できない。


せいぜい、剣道などの息つかせぬ試合を思い浮かべる程度だ。が、そんなん世界を守るために! とか思いながら真剣にやるのは無理だ。しかも箒で。


言い忘れたが、俺が今持ってる武器は、箒だ。念を散らして消すにはこの形が使いやすい、ということには納得だ。納得なんだが……。


考えてもみてほしい。街中でやおら、普通の人間には見えない敵と箒を振り回して戦い始める俺。小学生低学年くらいまでは微笑ましいだろうが、高校生になってやってるのは、ただの痛いやつだ。


いつの世も、他者から外れたものは後ろ指さされる立場なのだ。


しかし、化け物が出たら、それを放置するなんて出来るはずもない。やらねばならない。従って、どうせやるならとことんまでやってやる、という心境で叫びたくなるのだろう。


「なぁ、化け物と戦う時、必殺技みたいなのってねーの?」


そんなことを考えながら問いかけてみると、梨亜に白い目で見られる。


「術を全く扱えなかった計人に、必殺技なんてものが使えるとは思わないんだけど?」


うっせーな。教師が悪いんだ、教師が。


「そんなのあるの? 面白そう」


そうのんびりと聞いてくるのは美奈だ。


美奈は、何を隠そう、夢人らしい。


夢人なんてどっかの特別っぽい人間で、それっぽい能力持ってる雰囲気漂わせてるもんかと思ってたから、こんな身近にいるのは拍子抜けだ。


以前、サイトに載せた小説が人気になり、出版までされたことがある。


――順調に増版され、ドラマ化の話も来たりしていたが、美奈が映像化するのを嫌がっているため、その話が実現することはなさそうだ。


その話も、実は実在する世界の一つだったらしい。


それを知った梨亜が、ものは試しと誘い、美奈も夢追人の手伝いをする事になった。


武器もないし、夢追人自体ではないんだけどな。


が、美奈がいるのはかなり助かる。


何故なら、自身が夢人であるせいか、美奈は他世界から干渉されている部分を探し出すのが上手い。


普通に歩いているだけなのに、「あっちに変な気配がある」「あそこの念はちょっと強いので消した方が良くない?」等々、俺が気付く前にせっせと発見しては意見を聞いてくる。


――正直、俺はやめても良いんじゃねーか?


俺が全く出来なかった術 ―発動のイメージが理解できないのだ― も、多分、教われば簡単にできると思う。


今度、美奈に術を覚えてもらって、分かりやすく噛み砕いてもらおう。


そうすれば、きっと出来るに違いない。


勉強やなんかを教わるのに、美奈ほど分かりやすく教えるやつはいねーしな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ