タイミング 計人
梨亜が戻った次の日の見回り。
梨亜も美奈もいなかったせいで、昨日はえらく時間が掛かった。
美奈が用事を後回しにして付き合おうとしたのを、大丈夫だからと遠慮しなきゃよかった。全然大丈夫なんかじゃねぇよ。
いつもは通っているだけで見つかる念が、ちゃんと通りの裏や車の下まで覗かないと見つからねぇんだぜ?
つくづく一人でやるのは無理だと実感したわ。うん、ありゃ無理だ。
今日は梨亜がいるため、さらっと回っていける。楽だ。次からは絶対、美奈か梨亜と一緒にいくことにしよう。
「しっかし、ここもちょいちょい念が溜まるな」
「えぇ、ここはロングセラーの物語だから。ブームは過ぎても、思い出したかのように読まれるものなのよね。全く、もう少しタイミングがずれてくれれば……」
訳の分からん感想に首を傾げる。
「ずれればどうなったんだ?」
「ここの話、複数の夢人が共鳴してて、最初に物語書いて発表した人の話を皆が見てるんだけど、他の人も出版しようとしてたから、そっちの方が早ければ、こっちは発表できなかったのにって」
「何だ? そいつそんなに文章書くの下手なのか?」
でも、そこまで売れねーなら、元のやつも、似た作品があるなんて気付きもせずに出しちまうんじゃねーか?
「ううん、むしろ先に出しちゃった人より売れっ子作家よ」
は?
「なら、意味ねーだろ」
読む人増えれば、それだけ感応者も増えるはずだ。むしろ、売れてねー方が出してくれてよかったってことじゃねーのか?
「いや、でも実際に出版した方の作家さんって、鬱な展開を書くのが好きな作家でね。もう一人の方は軽いタッチで書く人だから」
そこまで不満にならなかったと思うのよね、としきりに悔しがっているが、分からん。
「そうはいっても、実際に起こってることは変わんねーんだろ? 同じもん見たら、同じ感想になんじゃねーの?」
物語だけだったら、作者の書き方で変わるかもしれない。だが、それで記憶世界に実際に見に行った場合は、見るもん同じなんだから、不満だって変わんねーだろ。
むしろ、軽く書かれてたのが実際に共鳴したら悲惨だった、と更に酷い拒否反応が出る可能性だってあるわけだし。
「それが、結構違うのよね。自分自身で共鳴する力ない人だと、作者と同じ道すじ辿るし」
首を振って言うが、全く分からん。同じもん見るんだろ?
「そんなもんか?」
「うん。多分、美奈だったら分かるんじゃないかなぁ? 力強いから、他人の見たものを見に行っても、周りも見ることが出来るし」
「ふーん」
よく分かんねーけど、聞いてみるか。




