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夢追人  作者: 北西みなみ
第五話
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帰宅 計人

「え? 計人今日は帰るの?」


どうやら、美奈は俺が泊まってくもんだと思ってたらしい。


――まぁ、いつもならそのまま泊まるしな。


だが、今日は泊まっていくわけにはいかない。


梨亜が言ってたじゃねーか。明日の朝までに帰ってくるかもしれないって。


もし、梨亜が帰った時に、俺がおらずに一人になってみろ。あいつは絶対、絶対に! 俺の楽しみにしてたNoロールを食う! 帰って冷蔵庫開けて、見つけた瞬間に食う! 俺もまだ一欠片も食べてねーのに!


許せん! 俺のNoロールを奪う輩には正義の鉄槌下すのみ!


「あぁ、梨亜が帰ってくる可能性もあるしな」


「そっか。なら、ハヤシちょっと持っていく?」


「本当か!?」


心残りだった、ハヤシライスを味わえるチャンスにとびつく。


「うん、但し食べる前にちょっと煮てね」


「おぅ!」



「じゃあな」


「また明日」


「おぅ、また明日」


たいちょーさんと美奈に見送られ、ホクホク気分で帰ったが、家は真っ暗だった。どうやら、梨亜はまだ戻ってないようだ。


俺は、ひとまず冷蔵庫にハヤシを入れ、Noロールを取り出して、少しだけ切って食った。


「……まだ腹、膨ってんかな」


わざわざ買ったのに、そんな美味くない気がする。この味のために帰ってきたってのに、期待外れすぎる。晩飯の後、コーヒーゼリーまで食ったせいだろうか。


――今度美奈にロールケーキ作ってもらうか。


そもそも、美奈が作る菓子が美味いのに、何でわざわざ買ったのか、いまいち自分の行動が分からなかった。


ただ、この前梨亜が美味しそうだと見ていたのを思い出して、何となく美味そうだと思ったんだ。


――丁度、今日がケーキフェア最終日だったせいだな。


美味いデザート独り占めは諦め、テレビをつけるが、面白い番組がない。


誰かにメールか電話、という気分でもなく、ただぼーっとバラエティ番組を眺めていた。




「――あ、何か美味しそうなもの食べてる」


いつの間にか寝ていたらしい俺は、すぐ後ろから聞こえてくる声で眼を覚ました。


「あれ? 計人起きた?」


声の方を振り向くと、梨亜がソファの後ろからこちらを覗き込んでいた。


「んあ? 帰ってきたのか、梨亜」


「うん、ついさっきね。ただいま計人」


「あぁ、お帰り」


「ロールケーキ、私も食べたい。あるよね?」


聞きながらも、勝手に冷蔵庫を開け、中を覗き込む。


「ロールケーキはいいが、ハヤシライスは明日の朝だからな」


一応、釘を刺しておく。


「ハヤシライス? 作ったの?」


「美奈がな。煮込みハンバーグの後は必ずハヤシライスなんだよ。ハンバーグの肉汁が既にデミグラソースに溶け込んでるから、じっくり煮た味が簡単に出来るーってな」


「へぇー、そうなんだ。――ところで、私の分もあるよね?」


「まぁ、二人分でも多いくらい貰ったからな」


途端に喜んで、楽しみにする単純な梨亜を見ていると、ついつい笑えてくる。美奈みたいに上手にはいかないが、明日の朝はオムハヤシにしてやろうか。


「さて、いっただきまーす」


勢いよく両手を合わせ、早速ロールケーキをぱくつく美奈。


「んー、おいしーい!」


ロールケーキを頬張りつつ、幸せそうに頷く。


何となく美味そうに見えて、自分のフォークを梨亜の皿にのばし、少し奪って食う。


一眠りして腹が落ち着いたせいか、さっきより美味い。


「ちょっと計人、何するの!」


怒った梨亜が、俺の皿の残ったケーキを殆ど奪い取り、食べる。


「夜にそんな食うと、太るぞ」


「おあいにく様、ここ数十年、全然体形変わりませ~ん」


俺の脅しも全く意に介さず、自分の分も取られまいと皿をガードしつつ食べる梨亜を見て、やはり今度、美奈に作ってもらって皆で食おう、と思った。

農ロールが好きな友人のエキサイトっぷりを思い出してしまった。元気かなー?

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