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夢追人  作者: 北西みなみ
第五話
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どっちなんだ? 計人

中庭で待っていると、注文の品を抱えた同級生がやってきた。


「まいどおまちどーさまです、焼きそばパンにオレンジジュースと、コロッケパンにミックスジュース、ハムカツサンド三つと水道水でございます」


「お、ハムカツサンドがおまけか、まぁまぁだな」


買ってきたものを聞き、感想を述べる。


「違ぇよ! ハムカツは俺のだよ!」


「三つあるってことは、一つずつだよなぁ?」


「なぁ?」


うちのハムカツサンドは、予約では買えない裏メニューで、大きさはラン○パックよりも少し小さいか? という、育ち盛りの高校生としてはちょっと寂しい大きさなんだが、値段がすごい。


何と三十円なのだ。よって、懐が寂しいやつらが複数買って昼を凌ぐ、というのに大いに役に立っている。


薄っぺらいとはいえ、ソースのたっぷりかかったハムカツが入ってるし、キャベツの千切りも入ってるからな。三つも食えば、腹が満たされるまではいかずとも、腹が減って動けないという事態は免れる。


ちなみに、焼きそばパンは四百五十円、コロッケパンは五百円だ。うちの学校のパンは、女子なら二人で一個を分け合って食べたりするほどでかいのだ。


コロッケパンの方が高いのは、低確率で三つ挟まれているコロッケの一つがメンチカツになっているものがあるから、というお遊び要素があるからである。メンチを引き当てたくない人間は、メンチ混入無し棚の方から取ればいい。


メンチカツパンには、反対に低確率でコロッケが。こちらもそれなりの人気で、メンチ中心かコロッケ中心かで買い分けられる。


「やめろ、もう買えねーんだぞ! ……金銭的な意味でも」


ハムカツサンドは、当然ながら売り出しと同時に飛ぶように売れる。裏メニューといったって、一年生が最初に知らないかも程度で、生徒は皆知っているし(先生は購入資格がない)。


弁当食べるがあと少し欲しいとか、放課後部活前にちょっと食べるためとか、そういった理由でも好まれるため、四時間目終わると同時にとび出さないと、大抵売り切れだ。


だから買えないと言ったのかと思ったら、三十円が捻出できないという意味もあったらしい。


俺らは顔を見合わせ、


「仕方ねーなぁ。貧乏人に恵んでやるか」


「干からびたミイラが出来ても、顔が悪くて売れねーだろうしな」


「ありがたき幸せ……って、ひでぇ!?」


友達って? 友情って? と呟くいじけ虫に、二人で五百円ずつ渡す。


買ってきた金額より少ないが、それは気にしない。元々俺らは、互いにしょっちゅう奢り奢られを繰り返してる。特に記録とかはねーが、大体トントンのはずだ。


途端に、へへーっ! お代官様方ー! と手のひらを返すお調子者が飲み物を買ってくるのを待って、食べ始める。


「で? どうなんだ?」


いきなり言われて、首を傾げる。


「何がだ?」


「決まってんじゃねーか。てか、ぶっちゃけ、山口さんと結城さん、どっち取るんだ?」


「は?」


「かーくーすーなぁよー。それともあれか? 両方纏めて俺が責任持つってか? リア充爆はっ……」


――しまった! あまりのうざさについつい手が。


食事中は気をつけないと色々飛び散って危険だからな。反省。


「ま、バカは置いといて。で? どっちだ?」


俺は白い眼を向け、ため息をつきながら答えた。


「どっちもねーよ」


「なんでだ? 両方とも学校を代表する美女だってのに、何が不満なんだ」


「なんだそりゃ? 何の代表になんだよ」


「はぐらかすなよ、お前だって二人のこと美人だってのは認めるだろ?」



――二人が美人、ねぇ?


まぁ、美人と不細工どちらかと言われたら、美人の部類に入るんだろうとは思う。


が、特別綺麗かといわれるとどうなんだ? 美奈は三歳児の頃からずっと見てるせいで、今更美醜を考えても、そういう顔だとしか思えんし、梨亜は造作以前に、どなりすぎだろ。


首をひねって考えている俺に、呆れたような眼差しが向けられる。


「マジか……」

「やっぱり、無自覚ハーレム……」


「んな訳ねーだろ。あいつらは、女の範疇外だ。それを無理矢理数に入れようって方がおかしい」


一人は女の範疇外どころか、人類の範疇外の可能性だってあるんだぞ。


「じゃあ、計人はどんなのが好みだ?」


「は?」


「二人が範疇外だとするんだったら、どんなんだったら範疇内なんだよ」


「そうだそうだ、彼女見つけて二人を解放しろ!」


「俺は誘拐犯かよ? 別に、二人を口説くのを邪魔はしねーぞ?」


「本当か!? なら紹介しろ!」


「紹介も何も、お前ら同級生だろーが」


「いや、彼女になってもらえるよう協力しろ、いやしてください」


「それは無理だな」


「やっぱ他に盗られんのは嫌なんじゃねーか」


「それはねーけどな。あの二人に関しちゃ、自分の力でどうにか出来ねーんだったら、付き合うのは無理だぞ」


梨亜は異世界人だし、美奈はなぁ……。


「まぁ、愛はなく義務だけが存在し、今までの生活すら捨て去って、針のむしろの一生でもどんとこいってんなら、お相手に推薦してやってもいいぞ?」


「んなもん、できるかー!」


「なら諦めとけ。あいつらと付き合うのはウルトラハードモードだ」


「あぁ、それならイージーモードで即死したこいつにゃ無理だな」


「うるせー!」


――にしても、恋愛か。


十年間後にいなくなるであろう梨亜と、それより前に会うことの少なくなる美奈。


リミットのある相手との関係を思うと、今はそちらを優先したいと思う俺は、何だかんだで充実した毎日を送ってんだろうな。

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