世界の成り立ち 計人
異世界に共鳴できるのが夢人なのに、そもそもそんなの出来ないと言い始める梨亜に、頭が混乱する。
「世界ってね、今いる実世界と記憶世界があるのよ」
実世界と記憶世界?
話がどんどん分からなくなってきたので、俺は理解を諦めることにした。
「美奈」
俺のバトンを受け、美奈が頷く。
「今いるってことは、私達が世界と認識しているこの大地を実世界と呼んでいいの?」
「そう。それとは別に、記憶のプールというか、生物が死んだ時にその記憶を全て置いていく世界があるの。ここは、生物の記憶だけじゃなくて、大地とか石ころとか、そんなものの記憶も全部入っているんだけど」
それを記憶世界というらしい。
「実際に物理的に下ってわけじゃないんだけど、私達天界人は、実世界の下に記憶世界が繋がってあると認識していて、それらを纏めて世界って呼んでいるの」
そして、それぞれの世界は、記憶世界で繋がっているらしい。
「夢人ってのは、自分の記憶世界から繋がっている他の記憶世界を垣間見ることで、異世界の話を感じるものなわけ」
「つまり、今実際に生物が生きて動いている世界ではなく、その世界で起こったことの記録映像をみているような感じだと思えばいいのよね?」
「その通り。だって、考えてもみて? 何十年、何百年と続く物語を、一年で書ける訳ないでしょ?」
確かに、週刊で書いているものなのに次週になったら三年後、とか、どう考えても無理があるわな。
三年前に、三年ほど何も書くことがなくなることが分かっていて、ずっと温めてきた話を出していた、とかなら別だが。
そもそも、年がら年中共鳴しているわけでもないのに、大事なイベント見逃さないってのはどう考えても無理だ。複数作品同時に書いてるような奴らは特に。
「美奈、知ってたのか?」
美奈が全然驚いていないようなので聞いてみる。
「うん、まぁ。だって、私の共鳴は一時間で三十年とか進んだし、思い返すこと、というか同じ場面への共鳴し直しも簡単に出来たから」
成程。流石にそれで『自分の世界以外の時間をこちらから操れる』とは思わなかった訳か。
「でも、記憶世界が全部繋がってんなら、記憶世界と繋がっている実世界にも来れるんじゃねーの?」
「それは何というか……、上るための力が足りないから無理、かな」
「自分の世界は帰れんだろ? 同じ様なもんじゃねーの?」
俺の疑問に答えたのは、美奈だった。
「自分の世界には肉体があって、命綱が繋がっているから帰れるのよ」
曰く、
・共鳴とは、実世界の下にある記憶世界へ自分の意識を落とすようなものである。
・記憶世界同士は横に繋がっており、歩き回って他へ行くことが出来る。
・実世界は遥か上にあるから、上る手段がないと行けない。
・自分の世界には体があり、縄で繋がってるようなものなので、それを巻き取れば戻れる。
ということらしい。
「じゃあ、異世界のやつらが戻る時に引っ付けば、一緒に行けんのか?」
「……拒絶されずに、しがみ付いていられればね」
答える梨亜は呆れ顔だ。異世界探検ツアーは諦めるか。
「ん? 梨亜、そうすっとお前、幽霊か?」
の割には飯もばっちり食うが。
「そこが、天界の夢追人の違いね。私達は、他の実世界へ肉体ごと行くことが出来る」
そうじゃなければ今ここにいられないでしょうが、と言われればそうか。
そもそもここは実世界で、異世界人はこれない筈か。――どうやって来てんだ?
「まぁ、どの世界でも行けるのよ……」
移動方法は秘密らしい。言われても実際には出来そうにねーし、いいと思うんだがな。




