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夢追人  作者: 北西みなみ
第一話
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学校の裏山にて 3 梨亜

そういえば、セクション分けしてる人いたなぁ。あれのやり方って、どうやるんだろう?

夢追人とは、天界人が勝手にやっているだけで、それが本当に正しいのかは知らないし、地界人がその活動を知っている訳もない。


――そもそも、天界人が守っている時点で、それ自体が異世界からの干渉じゃないか、という説もあるし。


それなのに彼女は、夢追人になったと言っただけで、聞いたことのない単語に戸惑いもせず、大まかな事情をほぼ正確に読み解いた。


――やっぱり、私途中で眠ってたのかな?


首をひねりながらそんなことを真剣に考えていると、計人が話しかけてきた。


「他に、何かあるのか?」


急な質問に、思わず間抜けな声が出る。


「へっ?」


「へ?、じゃねーよ。説明不足だって言ったの、てめーだろ」


呆れた様に言う計人。美奈も、何かある? とばかりに小首を傾げている。


ようやく出てきた自分の言葉は、我ながらえらく間抜けに聞こえた。


「何で分かったの?」


何を? という表情を浮かべる美奈と、何故か威張る計人。


「何が?」

「だから言ったろ? 最低限は伝わってるって」


「だ、だって、夢追人になる、としか言ってないような気がするんだけど?」


「まぁ、そうだな。それしか言ってねーからな」

「他に聞いておくことあった?」


何故、話がかみ合わないのだろう?


――ひょっとして、私が物凄く理解力に乏しいの?


いやいや、それはない!と、思う。。思いたい。


段々と自信がなくなってくるが、さすがに、あの一言で、夢追人になったいきさつまで出てくるのは変だろう。私は間違ってはいない! 筈だ……。


「今の話は、どう聞いたら、そんな結論になるの?」


そう聞くと、やっと理解できた、とばかりに美奈が口を開くが。


「えーっと」

「ミナ、ささっとすませとけ」


面倒くさい、とばかりに入れられた横槍が入れられる。


「じゃあ、いくつか具体的な部分を説明するのでいいかな。一番聞きたいこととかってある?」


一番……。いや、一言がどうしてそこまで膨らむのか、その思考回路が全部知りたいが、どの部分が聞きたいかと問われると。。


少し考え、聞いてみる。


「じゃあ、山口さんが、計人が私に助けられて夢追人始めたって思ったのは何で?」


「あ、うちの組、山口二人いるから、美奈って呼んで?」


「分かった、美奈。私も、梨亜でいいかな」


「はーい、じゃあ梨亜ちゃん。改めてよろしくね」




「で、計人が梨亜ちゃんに助けられたと思った理由ね」


まぁ、理由は色々あるんだけど、という前置きの元、告げられた答えは。



「うーん、夢追人やるって言った時の計人の態度かな?」


言いつつ、何かを思い出すように、明後日の方へ顔を向ける。


「自分から進んで『やりたい!』というのではないけど、やること自体は決めていて、その決意は固い感じだったでしょう?」


そんな決意、見て取れたのか。私にはやる気ない様にしか見えなかったけど。。


ちらり、と計人の方を見てみるが、説明は美奈の仕事、とばかりに、木を眺めている。


……美奈の勘違いじゃないのかなぁ?


「あと、会ったばかりみたいなのに、『梨亜』って名前呼び捨てにしてるし、結構打ち解けているじゃない?」


一人うんうん、と頷きながら続ける。


「だから、他の夢追人がきっかけで、サポートは梨亜ちゃん、とかいうのではなく、梨亜ちゃん自身が、夢追人やる直接の理由なんだろうなって」


「で、そんな短時間で、その人のためにやろう!と決意するのって、何か恩を受けたからかなって」


……成程?


まぁ、それだけでそこまで分かるのか、という疑問はあるが、彼女がそれだけ計人のことを理解しているということなのだろう。多分。きっと。


しかし「何で私自身が夢追人やれなくなったと思ったの?」という疑問は残る。


「んーと。最初は、ただ単に、夢追人の数が足りなくて、誰でもいいから手伝ってほしい、というのもあるかな、と思ったんだけど」


「その場合、梨亜ちゃんが転校してきてまで、一緒にいるのはどうなんだろうって」


「もし人手が足りないなら、分散させたいと思うでしょう?」


違うかな? とばかりに小首をかしげ、上目遣いに見上げてくる。


――う~ん、可愛い。


はっ! うっかりおかしな世界の扉を開きそうになった気がする。いけないいけない、きちんと聞かなくちゃ。


「まぁ、二人一組のお仕事で、ペアの人が丁度いなくて困ってたから一緒に、ってのもあるかなー、とは思ったんだけれど」


「そこら辺は、勘違いしてても特に問題ないし、どちらでもいいかな? って」


てへ、とばかりに笑いながら答える美奈に、


「私自身が夢追人だった、と思ったのは何で?」


と、問えば、


「それは」


一旦言葉を区切り、ちらりと計人を見て、また話し始める。


「助けられたことに恩義を感じて、全く関係ないことをやるんだとしたら、計人は、もう少しやる気なさそうにするかなぁ? って」


……。


今でも十分、やる気がなさそうに見える私は、思いっきり胡散臭そうな眼を計人に向ける。


すると、口をはさむ機会を待ってたとばかりに


「ほら、もう十分分かったろ? 分かったら、菓子食おうぜ、菓子」


「あ」


いかにも、もう終わりでいいだろ、とばかりに告げられた言葉に対し、美奈が慌ててお菓子を取り出す。


「美奈の菓子は、奪い合いが起こる位うめーんだから、感謝して食えよ」


差し出されているクッキーは、くるみやレーズン、チョコチップ入りなんかがあり、確かにとてもおいしそうだ。


「よかったら食べてみて?」


どうやら、説明は終わりにされたらしい。


正直、まだまだ聞きたいことは山ほどあるのだけど。。


特に、計人はいつも他人に説明する際、こんないい加減な説明しかしないのか、とか、面倒だからと話を打ち切るのかとか、これより更にやる気のない計人というのは、一体どんな酷い状態なのかとか。。


ひょっとして、計人と付き合うには、これくらい察しがよくないとならないの?


それとも、長年一緒にいると、こうも理解出来るものなのかしら。


数十年はおろか、数百年ずっと共にいる上司の顔を思い浮かべ……。


――無理。私には分からない。


自分の達した結論に黄昏ながら、お菓子をいただくことにしたのだった。



ちなみに、クッキーは、さくさくで、口の中に入れるとほろっと崩れる、一枚食べたら止まらなくなる味だった。

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