追及 3 計人
俺が理由を知りたがっているのを受けて、きっちりと原因追求を続けていた美奈。そうすると、さっきの狼狽も演技とみた。
「害夢ってなーに?」
「うっ!それは……」
最初は何とか誤魔化せないか試みようとしていた梨亜だが、美奈のキラキラと期待する眼に負けた。
「――つまり、計人がいる場所は念が溜まりやすくなるってこと?」
「うん、そう。だから、計人自身が念を消せるように、夢追人をやっておく必要があるのよ」
ほほぉ。ってことは何か? 俺は、梨亜が怪我するしないに関わらず、夢追人やってないとならなかったってことか。だが。
「俺の周りに念なんて、寄ってこないぞ?」
「それは、ある程度まで寄ってくると武器に消されてるのよ」
へぇ、これ持ってるだけで空気正常作用もあるのか。正に生活便利品だな。
「それを持っている限り、残滓に引き寄せられる程度の念は勝手に消えるから気にしないで」
「元々気にしてねーけどな」
「えぇ、それでいいわ」
そこで話は終わり、だと思ったんだが、美奈が口を出してきた。
「――何で、内緒だったの?」
「え?」
「いや、今のお話だと、内緒にしておく必要ないんじゃないかなって。むしろ、計人が勝手に武器を手放してどこかいっちゃったりしない様、言っておいた方がいいかなぁって」
「あー、それは。実は、害夢に汚染された対象自体が『自分の周りに念が多い?』って疑っちゃうと、引き寄せる力が強くなるの。そりゃもう、眼を覆いたくなるくらい」
物凄く気にする人間だと、街中の関係ない念まで引き付けて巨大なお化けにしてしまうこともあるらしい。
「計人は全然気にしそうになかったから、その点は助かったんだけどね」
「あぁ、だから梨亜ちゃんも一緒にいるのね? 計人一人で不安になっちゃって、念を引き寄せたりしないように」
そういうこと、と言う梨亜に、美奈は首を傾げて見つめた。
「あれ? なら、計人は全然気にしていないし、私もいるから、梨亜ちゃんは帰っても平気ということ?」
「え?」
「武器をもう一つ手に入れられるってことは、梨亜ちゃんの武器を借りなくてもいいってことだし、梨亜ちゃんの治療はこちらの世界にいないと出来ないというのでもないんでしょう?」
「そ、そう、ね」
「なら、いざという時は隊長さんもいるんだし、そこまで一緒に行動しなくてもいいんじゃない?」
「う、ん。そうね」
言いながら、梨亜はちらっとこちらの方を見る。
――梨亜と一緒でなくても構わない?
確かに、梨亜が俺といる理由が、俺が不安にかられて念ホイホイにならないように予防することだけなら、全く気にしない俺と一緒にいる必要はない。ない、が。
「ざけんな、てめー、人に面倒押し付けて一人楽しようったってそーはいかねーぞ!」
そうだ。考えてみれば俺、武器持ってる必要はあるけど、見回りやる必要はねーんじゃねーか。
それなのに、俺に見回り任せて自分はどっかそこらでのんびりしようなんて、絶対に許せん。意地でも引っ付いて連れまわしてやる!
俺はそう決意すると、逃がさんとばかりに梨亜の腕を掴む。
「てめーがいなきゃ、見回りなんて全部ぶっちしてやるからな!」
いきなり腕をとられた梨亜は、俺の剣幕に真っ赤になって反論してきた。
「いなくなるなんて言ってないでしょ! あんたみたいに不真面目なの、誰かが監視しなきゃならないことなんて分かってるんだから!」
「帰っちゃったりはしないの?」
「しません!」
俺とやり合ってた勢いで怒鳴られた美奈は、ふにゃっと笑った。
「じゃあ、まだこれからも一緒だね」
その嬉しそうな笑顔に、俺らは毒気を抜かれて顔を見合わせた。
……やらなくていいはずの見回りを、自らやり続けることを宣言してしまったことに気付いたのは、その日の夜だった。




