追及 2 計人
「そ、それは。部下より私の方が力強いし、やれることも多いし……」
「いや、でも俺よりは本職さんの方が強いんじゃないのか?」
突っ込みいれてみると、分かりやすいほど眼が泳ぐ。
――こいつ、本っ当に隠し事できねーな。
こんなのが上司で大丈夫なのか? と、まだ見ぬ梨亜の部下とやらに同情する。
挙動不審になった梨亜を見かねて、美奈が口を挟んできた。
「例えば、その武器の力が特別強いもので、その力が必要な時があるとかそんな感じじゃないの?」
梨亜は、ばっとそちらを向くと、大きく何度も頷いた。
「なら、部下に渡しゃいーんじゃねーのか?」
「簡単に貸し借り出来ないんじゃないの? 武器は一つしか持てないから、既に持ってる人は借りれないとか、悪用されないように資格が必要だから、部下には貸せないとか」
梨亜を見てみると、その通り、とばかりに首を振っている。どうやら、ほぼ当たっているらしい。
だが……。
美奈に目線を送ると、意図を理解して付け加えてくる。
「でも、それだけが計人にお仕事頼んでいる理由ってわけではなさそうだけどね」
ぎくり、という音が聞こえそうな勢いで梨亜の肩がはね、ぎぎぎっと美奈の顔に視線を向けたまま固まる。
「計人にお仕事してもらわないといけない理由があるというより、何か理由があって、その理由のためにお仕事頼んだという感じかな?」
梨亜はピクリとも動かない。
それを見て、美奈がどうしよう? とばかりの視線を投げてきたので、ひとかけらの躊躇なく頷く。
俺のGOを受け、美奈は更なる攻勢をしかけた。
「どんな理由でお仕事頼んだのかは分からないけど……」
梨亜は反応せず固まったままだ。
「お仕事頼んだら、計人にお仕事教える人が必要だね」
お、今ぴくっと動いたか?
「そうなると、計人と一緒にいる必要が出てくるね」
梨亜の表情がよく見える位置に移動してみると、梨亜はこの世の終わりを見ているような顔になっていた。
「計人と一緒にいたかったとか?」
美奈が可愛らしく小首を傾げて梨亜を見るが、梨亜は反応しない。が、顔からはすっかり血の気がうせている。
――ふむ。
「なんだ、梨亜お前、俺に一目惚れか?」
反論しない梨亜に、からかいの言葉を掛けてみる。
「え……は!? ひとっめっ!?」
おぉ、テンパった。おもしれーな。
「何だよおい、そうならそーと言えよ。別にこんな回りくどいことしなくたって考えてやらねーでもねーのに」
更につついてみたら、きっと物凄い形相で睨みつけられる。
「誰が計人なんかに一目惚れなんてするもんですか!」
「ぁ?」
「自分の危機にぼーっと突っ立って、他人様まで危険にさらす人間の、どこをどうやったら素敵だと思えるっていうの!?」
別に俺だって、本当に梨亜が俺に一目惚れしてきたとは思ってない。
思ってはいないんだが……。
「そもそも誰かさんがきっちり仕事してりゃーよかったものを、態々他人を危険にさらして自分は怪我した間抜けに言われたかねーな!」
売り言葉に買い言葉で、俺らは睨みあう。
「まぁまぁ、二人共落ち着いて? 出会いはどうあれ、今はお互い一緒にいたいと思うくらい仲良しじゃない」
「「仲良しじゃない!!」」
俺らを宥めようとする美奈の仲裁を、同時に否定する。
「で、でも、いつも一緒にいるし」
狼狽えたように言ってくる美奈に、きっちりと反論する。
「そんなん、こいつに強制されて嫌々に決まってんだろ!」
「何よ!こっちだって何もないなら、あんたなんてお断りよ!」
「何があるの?」
「害夢の汚染がなけりゃ、今すぐ帰るんだから!」
「害夢の汚染?」
梨亜がしまった! という顔をする。
どうやら美奈は、マイペースに、梨亜が俺に夢追人をやらせる理由を追求していたらしい。流石は美奈。




