念の気配 計人
今日も今日とて、清掃活動。違った、地域防衛。
困ったことに、今日は高速の中におかしな吹き溜まりが。
「本当にあるのか?」
「うん、何かカーブのところだから、結構良くない感じだと思う」
高速の地図を見ながら、美奈が言う。
さて、困った。
こうもはっきり言うからには、さっさと蹴散らさないとやばいんだろう。
だが、高速内を徒歩で歩きたい、なんてのが許可されるわけもない。
こちとら一般市民だから、一時的に高速閉鎖なんて無茶は出来ねーし。
かといって、高校生な俺達の中に車運転できるやつもいないし、タクシーで入っても、いきなり高速内で止まってくださいとも言えない。
そこを過ぎ去る一瞬で、とかも無理だし、そんな吹き溜まり目指せば、そもそも俺らの乗ってるタクシー自体が事故りかねない。
「何かいい案ねーか?」
面倒なので、まるっと美奈に投げてみることにした。
「こういう時って、いつもはどうするの?」
美奈の質問に、梨亜はこちらを冷ややかに見ながら言う。
「普通だと、術を使うんだけどね」
計人に才能ないのよね、とため息をつかれる。
「うるせーな、あんなんで分かるわけねーだろ」
「まぁ、今日はソレ使って何とかするしかないでしょ」
指差す先には、借りている武器。
武器っていうか、箒だが。
これは、その時その時により形状が変わるもので、普段は単三乾電池程度の大きさの物体になっている。
念を消す時は、消しやすいと思われるものに変化させるんだが、大抵淀んで溜まっているので、箒でさっさっと払うのが一番という話からこうなっている。清掃ボランティア気分になるのは、これによるところが大きいのは間違いない。
「これをどうすりゃいいんだ?」
ちょうど止まっている車の下とか、その程度なら柄を伸ばしたりすりゃいいが、高速の真ん中まで伸ばすのは無理だし、そうでなくても絶対に見つかっておかしな騒ぎになるに決まってる。
「うーん、やり方は色々あるけど……。美奈、ひょっとしてこれ、鳥に変化させたり出来る?」
梨亜が何かを思いついたかのように、美奈に話しかける。
「これを? 出来るかな……?」
美奈は箒を手に取り、眼をつぶった。
「……」
「……」
「……」
暫くするが、何も起こらない。
「えっと、どうやればいいのかな?」
こてん、と首を傾げて聞く美奈から、梨亜が箒を受け取る。何故か安心したような顔をしてるのは気のせいか?
「流石に無理だよね、ごめん」
ひょっとして出来るかなって思っただけだから、と謝りながら、箒をぐねぐね捻じ曲げていくと、やがて掃除機に似た形のものに変化した。
「これをリモコンで動かしてお掃除させればいいかな」
遠隔操作可能な掃除機かよ。
「でも、そんなもんが高速走ってたらぜってー騒ぎになるぞ?」
気付かれねー訳もねーしな。
どうするんだ? と尋ねた俺に、梨亜はふふんと胸をそらして自慢してくる。
「この状態だと、普通の人には見えないもの。元々、私達の道具は、現地人には見えない様に隠蔽されているの。箒はむしろ、態と見えるようにしてたのよ」
そうじゃないと、いきなり変なパントマイムを始めるおかしな人だと思われちゃうでしょ? と事も無げに言ってくる。一応、ご近所の評判とかそういったものにも配慮されてんのか。
「でも、俺にも美奈にも見えてるぞ?」
「計人は代理だけど持ち主だし、私は夢人だから、とか?」
そう美奈が言ってくるが、それだったらもっとやばくねーか? 夢人ってそれなりにいるんだし。
「美奈が見えるのは夢人だからって訳じゃなく、目の前で見ていたからでしょうね。これ、普通の夢人にも見えない様になってるから」
「ふぅん。で、どうすりゃいいんだ?」
どうやって見えなくしてるんだ、とか、色々疑問に思いもしたが、考えるのは面倒だったので、使い方を聞く。
「これで見ながら、こうやって……」
そう言って、モニタを見ながらリモコンで掃除機を動かしていく。
ラジコンだ。紛う事なきラジコンだ。まぁ、車じゃなく掃除機型ってところが少し違うが。
「車に轢かれそうだな」
「平気よ。壁伝って行けばいいし、これのスピードは車より速いから」
「暴走掃除機……」
不意に、掃除機と車がデッドヒートの争いを繰り広げ、カーブを曲がりそこなった車と共に大破するシーンが浮かんだ。
大丈夫か、これ?




