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夢追人  作者: 北西みなみ
第三話
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交渉 梨亜

「ところで、隊長さんは、ご用事はもう終わられました?」


そう尋ねられ、はっとする。


ご飯のあまりのおいしさと、隊長が存在感消していたことで忘れかかっていたけれど、本来の目的は、隊長を美奈の家に入れることだった。。恐るべきご馳走の魔力!


用事はあなたの監視です、と言ったらどんな反応するだろう……。


そんな事はおくびにも出さず、隊長が答える。


「いや、まだだ。暫くこちらにいることになるんだ」


「そうなのですか。では、今日泊まる場所とか、もう決まってらっしゃるんですか?」


早めに決めておかないと、もう暗くなるし、という美奈。


「まだなんだが、どうするかと思ってな」


どういうことでしょう? と首を傾げる美奈に、


「基本的に、作業を地界人に見られるわけにはいかないし、夜中に出たり数日戻らなかったりする可能性もあるから、ホテルは難しいかと思ってな」


と隊長。


まぁ、隊長一人でホテルは難しいだろう、色々、そう色々と。


「かといって、部屋を借りるというのも、いつまでいるのか決まっていないし、そもそも、そんなに資金が潤沢に用意されているわけでもないしな」


こちらの戸籍を用意するのも面倒だし、と呟く隊長。


――用意しても、隊長では契約出来ませんよ、等と言ってはならない。絶対に。


「ちなみに、おれんちは、居候一匹でいっぱいいっぱいだからな」


むかっ!


横からちゃちゃを入れる計人に、ひとまず応戦する。


「一匹って何よ、匹って!」


「あぁ? 居候のくせに、態度でかいんじゃねーの?」


「いてもらっている身で、図が高いんじゃないの?」


こちらが仁義なき戦いを繰り広げている間に、美奈と隊長の話も進んでいたらしい。


「……駄目ですよ、野宿なんて! うちのホテルなら、言われない限り中に入りませんし、融通は利かせられますよ? 無料でいいですし」


「申し出はありがたいが、さすがにそこまでは甘えられん」


「料金なら、滅多に使われない特別室を使ってもらうので、こちらもメリットあります。空き室を痛まないようにするのは、結構手間かかりますから」


「それは、結構難しいと思うぞー」


ちゃっかりと二人の話を聞いていたらしい計人が、横から突っ込みを入れた。


「え?」


「確かに、お前が言えば大抵の無茶は通るだろうけどな。でも、さすがに小学生が何も言わずに数日間空けたり、夜中に出て行ったら、ホテルは心配するだろ」


何せ、オーナー様がくれぐれもよろしく頼んだ相手だしなぁ、とうんうん頷く。


横で、隊長が黒いオーラを出し始めているのは見なかったことにしよう。うん、小学生って言ったのは私じゃない。私は何も聞いてない。


「それに、補導でもされようもんなら、何で子供だけでそんな長期間泊めたんだとか、夜中出て行くのを止めなかったのかとか、色々面倒くせーこと言われると思うぞ」


計人の指摘に、美奈はうーん、と考え、何やら計人の方を見るが、即座に無理、と断られている。


どうやら何かを断られたらしい。何を頼んだのかも、どう断ったのかもさっぱり分からないが。


相変わらず、二人は何も言わずとも分かり合えるようだ。――便利でうらやましいこと。


何となくもやもやした気分を感じていると、暫くの間腕を組んで考えていた美奈が、一度計人の方をちらりと見てから、隊長へと顔を向けた。


「なら、いっそのことうちに泊まりませんか?」


思わず、はい、是非ともお願いします、と言いたいのを堪え、聞いていないふりをしながら計人をつねる。――少しあちらに注意を取られたが、こちらの仁義なき戦いはまだ続行中だ。


「それは正直助かるが、平気か?」


「はい、部屋だけは沢山余ってますので。但し、時々私の趣味の料理に付き合ってもらうことになりますけれど」


ふふふっと笑いながら美奈がいうことには、基本的に、料理は家付の料理人 ――最早突っ込みを入れる気力もない―― がやってくれるが、時々自分で作りたくなるそうで、その時は家中皆が美奈の手料理を食べることになるそうだ。


「計人計人、この家ってどれ位人が住んでるの?」


思わず気になったことを、こっそりと尋ねてみる。


「んー、ここ、本宅じゃねーからなー。殆ど通いだったと思うぞ?」


「えっ!?」


このお邸が別宅……?


「それって、本宅はもっと大きいっていったりする?」


「そりゃ、別宅より小さい本宅ってあんまりないんじゃねーか?」


ですよねー。


「とりあえず、日中いるのは十人かそこらだろうな」


いまいち、多いのか少ないのか分からない。普通に考えれば、美奈一人に十人ってのは凄いと思うが、このお家を掃除するだけだって大変だろうし。


こんな凄いところのお嬢様を監視なんてして大丈夫かしら?

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