週末の約束 計人
「美奈、今週予定あるか?」
俺が尋ねた問いに、美奈はにっこりと笑いながら小首を傾げる。
「土曜は、ゆっかと遊ぶ約束してるよ? 計人も行く?」
ゆかりとの先約があるなら、土曜は無理だな。
「いや、遠慮しとく。それじゃあ、日曜は大丈夫か?」
これで、泊まりで一緒、とか言うと無理だろうが、俺も誘うってことは秀も一緒だろうから、一日だけの可能性が高い。
「うん。特にこれといってないけど、どうしたの?」
「梨亜がな、飲茶ってどんなもんか知りたがってるんだが」
「作ればいいの?」
「あぁ、こんなもんだって分かりゃーいいから」
美奈は、少し何かを考えるようにしていたが、すぐにこちらを向いた。
「うーん、土曜出掛けちゃうから、お昼までに作るのは無理そうなんだけど。お夕飯でもいい?」
むしろそっちの方が好都合なので、一も二もなく頷く。
「あぁ、適当に頼むわ」
「オッケー、任せて。腕によりを掛けて作っちゃうから」
言って、拳を握ってみせる美奈。
――よしよし、いい感じに気合入れてるな。
楽しみにしてるぜ、と告げて席に戻ると梨亜が早速寄ってきた。
「どうだった?」
「日曜、飲茶な」
説明が面倒だったので、用件だけを告げると、訳が分からないという顔をされる。
「え、何? 隊長のこと頼んでくれたんだよね?」
「いや、俺はお前が飲茶って何か知りたがってるって言っただけだが」
その言葉に、慌てたようにくってかかってくる。
「協力してくれるんじゃなかったの!?」
襟首を引っつかんで揺さぶりかねない勢いに、慌てて答える。
「いきなり、たいちょーさんが泊まるからよろしくな、って言ったって意味ねーだろ」
まぁ、俺がそう言ったら言ったで、普通にOKするだろうが。それじゃあ、つまらん。少しはそっちにも努力してもらわなきゃな。
「日曜、たいちょーさんが偶然こっちに来ることになりゃ、ご一緒にどーぞって呼ばれるから、そこで頼んだ方がいいんだよ」
美奈は、人数分ではすまない量を作る。確実に。
だから、俺や梨亜とも知り合いな奴が偶々近くにいるとなれば、それが理由で行くのを躊躇う振りをすれば、確実に皆で食べよう、という話になる。
偶然家にお邪魔したやつが、そこから上手く泊めてもらえるよう交渉できるかは、本人の努力次第。ま、せいぜい頑張ってもらわないとな。
「とりあえず、土曜か当日に、たいちょーさんが偶々来るのを知ることになる予定だから、その前にばらすなよ」
「そんなんで、大丈夫なの?」
梨亜は、懐疑的な顔して俺を見つめる。
「さーな。嫌なら別に、自分でやってもいいぞ?」
うっと詰まる梨亜に、おらおらどうする? と頬を突っつくと、不承不承頷かれる。
「最初っからそう言やいーんだよ」
やれやれ、と話を終わらせようとした俺の腕の上に両手が乗せられ、思わぬ反撃が来た。
「信じてるからね」
不安に揺れる瞳にすがるようにじっと見つめられ、柄にもなく動揺する。
「協力するって言ったろ。嘘はつかねーよ」
俺は、それで会話を打ち切った。




