説得 2 梨亜
――そもそも、こちらの世界にとって監視って普通は何するものなの?
監視されることに怒るのなら分かるけど、何を監視するかが問題というのは、一体どんなものなのか。
思わず首をひねっていると、計人に軽く睨まれる。
「言っとくが、いくらあいつが小っせぇっつっても、風呂だのトイレだの寝室だのについていくのは無理だぞ」
ぶっ! ごほごほ、げほ……。
「おい、平気か?」
吹き出しそうになるのを無理矢理こらえ損ねてむせた私を見て、計人が慌てているが、それどころではなかった。
「う、うちの隊長は変態か!?」
一体、何を監視するんだ、何を! ……って、そういえば、計人も何をって聞いてたね。計人が懸念してたのはそこだったの? そんなとこだったの!?
何だかくらくらしてくる頭をおさえながら、それでも反論する。
「まず、うちの隊長はちっちゃくない。あれでも軽く計人の何十倍も生きてるんだからね」
ここ重要。何より重要です!
「それに、いくら行動を監視するって言ったって、そんなプライバシーまで侵害したりしません!」
私は、美奈が力を使用する際に特有の気配が発生すること、その気配は近くにいれば、美奈の『心残り』から感じ取ることが出来ることを説明した。
「それもあって、隊長が監視役になることになったのよ」
「は? どういう意味だ?」
「だーかーらー、美奈の『心残り』、隊長が持ってるでしょ? だから、一緒の家にでもいられれば、直接監視しなくても、力使ってるかどうかわかるでしょうが」
――あれを持っていなければ、未登録の通行者が美奈だとばれなかったんだろうけど。
今回の天界訪問はつくづくタイミングが悪いなぁ、と考えていると、計人が訳がわからない、という顔をしていた。
「美奈が隊長に心残り? 一体何の話だ??」
一体あいつは美奈に何やらかした? と聞いてくる。
「何って、……あ」
そういえば、美奈の『心残り』預かった時、計人はいなかった気がする。
「『心残り』って、珠よ? 透明な光る珠」
「は? 何でそんなのを美奈が欲しがってるんだ?」
やはり、知らないようだ。私は、隊長に預けられた『心残り』について、計人に説明した。
「……美奈の力と心の一部が入った結晶だと?」
「そう、そのまま捨てていくのはちょっと不安だからって、隊長が預かることになったの」
必死に説明をしていると、計人の顔が険しく、何かを考えるような仕草になっていた。
「計人?」
私に呼ばれて、計人ははっとした様に顔を上げた。
「いや、なんでもない。……分かった。協力する」
「え?」
「たいちょーさんが、美奈んち住めるようにすりゃいーんだろ? あいつんち、部屋は余ってるからなんとかなんだろ」
「本当!?」
一体急にどうしたんだろう? という思いもないでもないが、こんなチャンスは逃すわけにはいかない!
私は思わず、計人の腕を掴んでいた。
「つっても、基本的にはお前がやるのを見てるだけだぞ。直接説得とかはしねーからな」
例え説得は自分でやるとしても、こと美奈に関する説得なら、計人がいるかどうかは、その難易度に大きく影響を与えるはず!
私は、計人の気が変わらぬよう、慌てて頷いたのだった。




