説得 1 梨亜
隊長が美奈と一緒にいるためのいい理由を思いつく前に、家に辿り着いてしまった。――もう少し家が遠くてもよかったのに。
「おら、とっとと吐け」
家に着くなりそう言われ、どう話をしようか決まりきっていなかった私は、何とか誤魔化せないかと思い……
「関係ねーこと言うつもりなら、会話録音してたいちょーさんに聞かせるぞ」
挫折した。
ダメだ。あんな出鱈目ばらされた日には、隊長から一生逃げるしかなくなる。
私は覚悟を決めた。
「えっと、簡単に言うと、隊長が美奈を監視しないといけなくなったの」
物騒な単語にピクリと眉をあげ、聞いてくる。
「監視? どういうことだ?」
「えっと、前にこちらに来た時、美奈が牢にいるにもかかわらず、力を使って色々なことをしていたでしょう?」
無表情のまま、くいっと顎で続きを促される。
「それがうちのお偉いさん達にばれて、勝手に動き回る人物だって危険視されて、しばらくの間、監視をつけなくちゃならなくなったの」
言葉を発さないまま、段々と計人の表情が険しくなってくる。――こちらに非があると分かりきっていることだけに、怖い。
何となく身を縮めながら、話を続ける。
「それで、うちの隊長なら、美奈と面識あるし、変に意識することもないかな? ってことになって……」
「それはつまり、お前は俺を監視してるってことか?」
「え?」
突然、予想していなかったことを言われ、我ながら間抜けな声が出た。
それを見た計人は、違うのか、と呟くと、
「わざわざ、お前じゃなくて新手が来るってことは、お前は別の役目があるってことじゃないのか?」
――成程。確かに、そう考えてもおかしくない。最初は、私も立候補したくらいだし。
「ううん。私では、監視役としては不安だって話が出ただけ」
ぷるぷると首を振って答えると、ふーん、と返ってくる。どうやら、一応は信じてくれたようだ。
「何で、美奈が動き回ってんのばれたんだ? あん時は誰も気付いてなかったんだろ?」
じぃっと見ながら言われる。……ひょっとして、私達が報告したと思ってる!?
「ち、違うよ? 私達がばらしたんじゃないよ? ただ、あちこち探し回ってくれてた美奈が、通ったものの情報を記録しておく場所に踏み込んでいたせいで、行っているはずのない場所に美奈の情報が残されてしまったから……」
大きく手を振りながら、慌てて弁解する。
「これでも、美奈が好きに行動してたんじゃなくて、隊長が面会に行った時、意図せずに強い想いが念の様な形になってついていってしまっただけだ、とごまかしたのよ? ほんとよ?」
「あぁ、そんなん疑ってねーよ」
やる意味ねーだろと言われて、ほっと胸をなでおろした。
「で、監視ってのは一体何を監視するんだ?」
は? 何を?
美奈に決まっているじゃない、と言いそうになる口を慌てておさえる。
――やばい、眼が笑ってない。
ここで下手に、全行動をつぶさに監視します、なんて言った日には、何を言われるのか分からない。
かといって、私には、計人が何を警戒しているのか分からないので、迂闊なことは言えそうになかった。
計人に私達の目的がばれている以上、どうあっても協力してもらわなければならない。邪魔をされたり、美奈に目的を話されたら大変なことになる。
どうしようどうしよう、何とかして説得しないと。




