守る決意 隊長
ちょいとだけ時間は遡って、梨亜が挙動不審になっていた理由に飛びます。
夢守隊・第三隊の隊長室。
いつもは俺と副隊長の鳥谷の二人である事が多いこの部屋に、今は結城の姿があった。
「――つまり、美奈が要注意人物とされたわけですか?」
納得いかない顔の結城に、俺は頷きながら答える。
「あぁ。やはり、コレがばれたのが痛かったな」
そう言って、携帯端末につけたストラップを示す。
そこには、澄んだ色をした珠が付いていた。
『この天界でその様な技が使えるとは、世界に危機をもたらすかも知れん』
鬼の様な形相で主張する同僚達の声が蘇ってくる。
この世界は、他世界からの干渉を受けない唯一の世界と言われている。
それは侵入に限った話ではなく、他世界の存在はこの世界で力を扱えない。
極端な話、この世界の者の許可がなければ立つことすら難しく、息をするだけで精一杯となる。
そんな中、牢屋に入れられながら他世界と同じように力を行使した美奈は、かなり異常な存在なのである。
「あの子は悪事を働く様には見えませんし、招かなければこちらに来ることもない、とは言ったのですけどね」
鳥谷も、苦々しい顔をしている。
重苦しい空気を無理矢理振り払うかのように、俺は話をまとめた。
「とりあえず、あいつが警戒するに値しないと証明できればいいんだ。能力がないでも、やる気がないでも」
「ですが、どちらも証明が難しいと思います」
「あぁ。しかし、やるしかない。議会は地界の美奈の存在抹消を主張してきたからな」
実際には、それをもたらした結城の処罰をも叫ばれたが、統括者たる結城の兄に睨まれ、完全に撤回された。
――同時に、先走って勝手に美奈を殺害しそうな者についても睨みを利かせてくれたので、暫くの間はもつだろう。
つくづく、結城の兄が統括者で助かった。
「で、美奈の直接監視、ですか……」
自分の命さえも脅かされていたことを知らない結城は、それでも上の決定に不服そうだ。顔に不満とはっきりと書いてある。
「……あぁ」
勿論、俺だって、別にやりたくはない。やる事は山積みだし、そもそも本人の許可もなく勝手に観察しながら追い掛け回すなんて、どう考えても変態だ。
「では、私がやれば良いのではないでしょうか? 幸い、美奈は計人とよく一緒にいますし、手伝いもしてもらっていますから」
それが出来たら、と、ため息がもれる。
「それなりの力がないと、あいつの企みを見逃すかも知れないんだと」
「私じゃ力不足だ、ということですか……」
そんなわけあるか。
言葉を素直に受け取り、がっくり項垂れる結城に突っ込みを入れる。
「三番隊にいるのに、か? ……ただの嫌がらせだ」
統括者の前で言ってのけた度胸だけはかうがな。
俺を貶めたかったんだろうが、妹を溺愛する統括者の前でその悪口を言えばどうなるかなんて、馬鹿でも分かるだろうに。
――いっそのこと、それで降格でもされて、今回の訴えがうやむやに終わってしまえば良かったのに。
「どちらにしろ、もうこれは決定してしまったことだからな。俺がやるしかない」
そんなことやってられるか、と突っぱねてしまうことは簡単だが、そうすると、美奈を処刑する気しかない者が監視を申し出るだろう。
そうなったが最後、出される結論は事実とは関係なく決まってしまい、自分の部下を助けるために力を使った者を見殺しにすることになる。
しかも、それによって得られるものは、『ひょっとするとあるかもしれない、美奈からもたらされる何か』という、非常にあいまいなものによって天界が『何らかの打撃を被る』ことはなくなるだろう、という程度。
自分で言っておきながら、あまりの虚しさに気が滅入ってくるメリットだ。
到底、面倒だからと無視してしまえるようなものではなかった。
因みに、会話主体をタイトル後ろに書いていますが、隊長だけ名前ではなく役職になっているのは、多分「要」って書いても、誰も分からないんじゃないかな、と思っているからです。




