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夢追人  作者: 北西みなみ
番外編
36/175

中央高校の風物詩 1

何となく、番外編。

タイトルで初めて出てくる計人達の通う学校名。意味は無いのが私流。

七月。そろそろ暑さも厳しくなり、夏休みが近づいてくるこの時期。


それは同時に、その前の期末テストが近づいている時期でもある。


ある者は慌てて勉強し、ある者は諦めて部活に逃避する。先輩から過去問を貰うものもいれば、いきなり先生への質問が増えるものもいる。稀に、日頃からの勉強で十分と自信を覗かせるような者もいるが、そういった生徒は極少数であろう。


ここ、中央高校でも、生徒達のテストにおける姿勢は変わらない。一部を除いて。



「おい、今回はどうだ?」

「まだだ。昨日も購買行って普通に買ってた」

「でも、もうそろそろでしょ? ノートは出てきたもの」

「何っ!? こっち回ってきてないぞ?」


訳の分からない会話だが、話している本人達も見守る周りも真剣な表情である。



所変わって、とある教室。一人の生徒が、幼馴染みに話しかけた。


「計人、今日のお昼時間ある? 梨亜ちゃんも」


「おぅ、たっぷりあるぞ」

「特に用事はないけど?」


どうしたの? と首を傾げる女生徒に、にっこり笑って


「なら、お昼食べた後、お勉強会しない? そろそろ期末だし」


と、提案する。


おぉ、もうそんな時期かと、舌なめずりしながら頷く男と、勉強会? と聞く女。


「うん、試験前に、さらっと全体を見直して、試験に出そうなところをおさらいしておきたいの。一緒にやらない?」


「確かに、一緒にやった方が効率いいものね。じゃあ、学生の本分を全うすべく頑張りますか」


「オー!」


そうして、三人が勉強をすることを決めた後。


数人の生徒が、すっと立ち上がると、他のクラスへと駆け出した。


ばんっと扉を開け、誰にともなく宣言する。


「ついに動き始めたぞ!」


何がなにやら分からない台詞だが、そこにいた者達は、殆どが正確に内容を理解していた。


「ついにか!」

「袋だ! 集金袋を持て!」

「今日の昼には間に合うか!?」


何やら、興奮した様子で袋が用意されると、我先にと争うように小銭が入れられる。


「まだ入れていないやつはいるか?」

「A子が今いないから、二人分入れておいた」

「俺、小銭持ってない。誰か代わりに入れてくれ! 後で返す」

「百円でいいか?」「頼む!」


ずっしりと重くなった袋を取って、教室へ帰っていく生徒を、皆が見守った。



「五十嵐! 今日は昼飯持ってきてるか!?」


何の脈絡もなく言われた言葉に驚くでもなく、計人は返事をする。


「俺、今日は日替わりランチの気分」


「デザートにゼリーとかどうだ?」


「おぉ、いいな。オレンジの。美奈はピーチじゃないか? 梨亜は何食いたい?」


何の話か分からず戸惑う梨亜に、クラスの生徒の視線が集中する。


「勿論、アイスとかヨーグルトとかでも構いませんよ?」


貴方は誰? 何故に敬語? そして何の話?


救いを求めて周りを見るも、計人はにやにや笑ったまま何も言わず、美奈は今いない。


クラスの皆は、何かを期待する様な顔でこちらを見ている。その表情に切羽詰った何かを感じ、梨亜は疑問を口に出すことをやめた。


現状理解は諦めて、とりあえず質問に答える。


「しょうが焼きセット小にすると、プリン付いてくるから、それ食べようと思って」


ここの学食は、男子に合わせた量のため、女子には多すぎることが多い。


残すのは勿体ないので量を減らしてくれ、という要望が多かったため、小サイズ定食が用意され、全体量が少なくなる代わりに、女子に人気な甘味が付けられているのだ。


「しょうが焼きですね、畏まりました」


男子生徒は、大いに頷きながらメモを取って去っていった。


「え? 何?」


訳の分からない梨亜に、計人が言った。


「暫くの間、奢りで昼飯食えるってことだ」

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