中央高校の風物詩 1
何となく、番外編。
タイトルで初めて出てくる計人達の通う学校名。意味は無いのが私流。
七月。そろそろ暑さも厳しくなり、夏休みが近づいてくるこの時期。
それは同時に、その前の期末テストが近づいている時期でもある。
ある者は慌てて勉強し、ある者は諦めて部活に逃避する。先輩から過去問を貰うものもいれば、いきなり先生への質問が増えるものもいる。稀に、日頃からの勉強で十分と自信を覗かせるような者もいるが、そういった生徒は極少数であろう。
ここ、中央高校でも、生徒達のテストにおける姿勢は変わらない。一部を除いて。
「おい、今回はどうだ?」
「まだだ。昨日も購買行って普通に買ってた」
「でも、もうそろそろでしょ? ノートは出てきたもの」
「何っ!? こっち回ってきてないぞ?」
訳の分からない会話だが、話している本人達も見守る周りも真剣な表情である。
所変わって、とある教室。一人の生徒が、幼馴染みに話しかけた。
「計人、今日のお昼時間ある? 梨亜ちゃんも」
「おぅ、たっぷりあるぞ」
「特に用事はないけど?」
どうしたの? と首を傾げる女生徒に、にっこり笑って
「なら、お昼食べた後、お勉強会しない? そろそろ期末だし」
と、提案する。
おぉ、もうそんな時期かと、舌なめずりしながら頷く男と、勉強会? と聞く女。
「うん、試験前に、さらっと全体を見直して、試験に出そうなところをおさらいしておきたいの。一緒にやらない?」
「確かに、一緒にやった方が効率いいものね。じゃあ、学生の本分を全うすべく頑張りますか」
「オー!」
そうして、三人が勉強をすることを決めた後。
数人の生徒が、すっと立ち上がると、他のクラスへと駆け出した。
ばんっと扉を開け、誰にともなく宣言する。
「ついに動き始めたぞ!」
何がなにやら分からない台詞だが、そこにいた者達は、殆どが正確に内容を理解していた。
「ついにか!」
「袋だ! 集金袋を持て!」
「今日の昼には間に合うか!?」
何やら、興奮した様子で袋が用意されると、我先にと争うように小銭が入れられる。
「まだ入れていないやつはいるか?」
「A子が今いないから、二人分入れておいた」
「俺、小銭持ってない。誰か代わりに入れてくれ! 後で返す」
「百円でいいか?」「頼む!」
ずっしりと重くなった袋を取って、教室へ帰っていく生徒を、皆が見守った。
「五十嵐! 今日は昼飯持ってきてるか!?」
何の脈絡もなく言われた言葉に驚くでもなく、計人は返事をする。
「俺、今日は日替わりランチの気分」
「デザートにゼリーとかどうだ?」
「おぉ、いいな。オレンジの。美奈はピーチじゃないか? 梨亜は何食いたい?」
何の話か分からず戸惑う梨亜に、クラスの生徒の視線が集中する。
「勿論、アイスとかヨーグルトとかでも構いませんよ?」
貴方は誰? 何故に敬語? そして何の話?
救いを求めて周りを見るも、計人はにやにや笑ったまま何も言わず、美奈は今いない。
クラスの皆は、何かを期待する様な顔でこちらを見ている。その表情に切羽詰った何かを感じ、梨亜は疑問を口に出すことをやめた。
現状理解は諦めて、とりあえず質問に答える。
「しょうが焼きセット小にすると、プリン付いてくるから、それ食べようと思って」
ここの学食は、男子に合わせた量のため、女子には多すぎることが多い。
残すのは勿体ないので量を減らしてくれ、という要望が多かったため、小サイズ定食が用意され、全体量が少なくなる代わりに、女子に人気な甘味が付けられているのだ。
「しょうが焼きですね、畏まりました」
男子生徒は、大いに頷きながらメモを取って去っていった。
「え? 何?」
訳の分からない梨亜に、計人が言った。
「暫くの間、奢りで昼飯食えるってことだ」




