帰還 梨亜
「美奈は、もう終わり?」
一人戻ってきたのを見て問いかけると、頷いてこちらに向かってくる。
「計人は何か色々測られていたけど、私は、ただの付き添いって扱いみたいで、名前とあと少し聞かれたくらいで終わりになったの」
「お疲れ様。どうぞ」
お茶と茶菓子を出しながら、声を掛ける。
互いに向かい合う形で席に着き、他愛のない話を楽しんでいると、隊長がやってきた。
「美奈、これはいつ回収するんだ?」
そう言って差し出した手に乗っているのは綺麗なガラス玉。
何なのだろう? と思い、美奈を見ると、何やら戸惑った顔をしている。
「……あれ? 私、回収しましたよ?」
何を?
「だが、これはお前のだろう?」
「そうですね……」
話に全くついていけていないが、どうやら想定外の事が起こっているらしい。
ガラス玉を受け取った美奈は、強く握ってしばらく目を閉じていたが、やがて顔を上げると、困惑した様に首を振った。
「どうした?」
「何かこれ、不純物が混ざっていて、戻せないみたいなんです」
不純物? 戻せない? 何が?
「どういうことだ?」
「何か、こっちの世界の力が溶け込んでしまったみたいで、分離できそうにないんです。。」
「一体どういうこと?」
流石に我慢できずに、説明してもらうことにした。
「つまり、それは美奈の力なのに、美奈の自由に扱えないってこと?」
「うーん、この珠のままならある程度自由に使えるみたいなんだけど、私だけの力として取り込むのは無理みたい」
そう言って、珠を手の上で転がす。
「でも、自分の力が抜けている状態で、あっちに帰って平気なの?」
「それは多分平気。髪の毛みたいなものだから、切り離しちゃったらもう一度戻すのは無理だけど、何か支障があるってものでもないってことだ、と、思う……」
えらく不安になる返事だけど、平気だろうか。帰った途端に力が足りなくて倒れた、とかなったら大変なんだけど。
「でも、あちらにもって帰った時、これがどうなるのかは、ちょっと……」
まぁ、あちらの世界で分裂はできないだろうしねぇ。
美奈は、珠をこちらにおいていくことに決めたようだ。
「隊長さん、これ預かってもらえます?」
「俺が持っていて平気か?」
「はい。流石に自分の力を知らない場所に放り出していくわけにもいきませんし、隊長さんに持っていていただけるようなら安心できます」
それに、と珠を手のひらで転がしながら美奈が言う。
「ずっと持ってもらっていただいたせいか、隊長さんの力も混じっているようですし、多分これ使えるんじゃないでしょうか」
そうして、隊長に珠を差し出す。
「簡単な失せもの探しとかには使えると思います、この心残り」
「心残り?」
何故そんな名前をつけたのかと首をかしげる私達に、説明してくれる。
「世界と共鳴し終わった後、なんとなくあちらに感覚が残っている気がする時があるんです。ほら、物語を読んだ後、余韻を感じたりするでしょう?」
「あぁ」
「あれって、今みたいに、何かが実際に残っているのかも、と思いまして」
感覚の一部が実際に向こうに残っている、か。それはなかなか面白い発想かもしれない。
「世界に行くのは心だけ。その一部が残るなら、それは心残りってことかな? って」
成程、だからこれも心残りかもってことなのね。
「だから、少し経ったら消えたりするかも知れませんけど」
「成程。じゃあ、あるうちは預かっておこう」
「よろしくお願いします」
こうして、元美奈の力だった珠は、隊長預かりとなった。
それにしても、まさか、美奈が牢から抜け出して、大冒険していたなんて……。
牢屋にいる二人と話せるなんてどんなカラクリなのかと思っていたら、自力会話だったとは、驚きだ。
今度やり方聞いてみようかなと思いながら、計人の戻りを待って地界へと戻った。
や、やっと天界に行ったお話が終わりました。
人物紹介くらいの位置づけだったんですが。
……長すぎやしないかね、私?




