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夢追人  作者: 北西みなみ
第二話
32/175

伝わらなかった伝言 梨亜

二人と別れた後の梨亜。

「……だったんですよ」


「そうかそうか、それは良かったな」


にこにこと笑う兄は、私の話を聞くのが楽しくてたまらないとばかりに頷いてくれる。


ふと外を見ると、日が随分と傾いて、ここに来てからずいぶん時間が経っていることが分かる。


ついつい時間を忘れて話してしまったが、二人を隊長に任せて放っておく訳にもいかない。


「さて、兄上。私そろそろ……「お、そうだ。お菓子あったんだ。梨亜の大好きなスイートポテト。食べるだろう?」


う……。まぁ、もう少し位いても構わないかな? ささっと食べればいいし。うん、そうだ。スイートポテトなら仕方がない。


「いただきます。ただ、食べ終わったら戻りますね?」


兄は少し悲しそうに眉を下げつつ、分かったと頷いてくれた。


「それじゃあ……」


目の前に置かれたスイートポテトを食べようとした時、バタンっと大きな音で、扉が開いた。


「申し上げます! 妹君の梨亜様が、行方不明との事。どこかへ幽閉か投獄された可能性もあるとの――あれ?」


物凄い勢いで報告している兄の部下と眼が合い、ぽかんと口をあけて呆けた顔と見つめ合う。


「妹ならここにいるが」


全く動じず ――まぁ、私自身がここにいるので、動じる訳がないのだが―― 、兄が答えると、微妙な沈黙が辺りを支配する。


「あの、梨亜様の上司の方より連絡が参りまして」


急な展開に混乱しているのが分かる。


……って、上司から連絡?


「あの、どんな内容だったんですか?」


「梨亜様のお連れ様二人が投獄され、梨亜様も『北』へ投獄されたとの事だが、牢に行ってみてもご本人がいらっしゃらない、と」


――隊長ー!?


訳の分からない報告に混乱している私に構わず、話が続けられていく。


「お連れのお二人は見つかったものの、牢に入れられる明確な理由が存在しないまま、どこか上からの指示で出すことが容易でない。と、そのような感じでした」


えっと、整理しよう。まず、二人が今牢にいる? それに私もって、何!? だって隊長には、兄さんから……。


兄を見ると、何故か明後日の方向を向いている。


ふと、嫌な予感がして、聞いてみる。


「兄、うえ? うちの隊長に連絡してくださいました、よね?」


兄は、目を泳がせながら


「そんなことも頼まれた、な」


「……」


「確かに伝えた……と思っていたが、よくよく考えると、その前に昼の用意させようと思っているうちに忘れたような気もしないでもないので、伝えていないといったことがある可能性もないとはいえないかもしれんな」


「兄さん……」


じとーっと冷ややかに見る眼には、無礼だ、とか考える余裕がなく、敬意も何もなかったが、部下の方達も今回は兄が悪いと、見逃してくれるみたいだ。


「大体二人が投獄って、どういう事ですか? 何したんです!?」


「何も指示してはいない。が……」


言いよどむ兄。


「『が』? 何ですか?」


眼を泳がせている兄をじっと見つめていると、恐る恐るといった感じでこちらをちらりと見て、


「せっかくの妹との話は邪魔されたくないので任せる、とは、言った様な気も……」

「兄さんっ!」


なんということを! 最高権力に近い場所にいる人間がそんなことを軽々しく言ったら、何が起こるかなんて想像も付かないことは分かりきっているじゃないの!


「彼らは、『私が』『安全を保証』した上で『お願い』して『態々』『きてもらった』んですよ?」


一言一言、区切るように言う私に、及び腰になる兄。慌てて手を叩いて人を呼ぶ。


「誰か、書くものを持ってこい」


兄が計人達の解放指示を書いている間に、二人の捕らわれている場所が『風』であることを聞き出す。


――早く助けに行かなくちゃ!


書き終わった指示書をひったくるようにして奪い取ると、一路『風』を目指して走り出した。

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