『北の邸』へ 隊長
さて、結城を問い詰める必要性に気づいたのはひとまず置いておいて。
「『北の邸』にどんな名目で入るかが問題だな」
『北の邸』は通常、俺達が行ったりする様な場所じゃない。
ましてや、結城いませんか? なんて、いるかも分からないのに聞く方がおかしい。
いるかどうかを確かめてから出直せ、と言われても仕方がない場所だ。
「それは、そのままでいいのでは?」
暢気に言う美奈に、『北の邸』の厳重度を説く。
「あそこは、滅多なことでは入れない場所だからな。そんな気軽に入れてください、とは言えないさ」
「門番さんに、『統括者の妹が行方不明になったことを伝えに来ました』って言えば、お兄さんの方から連絡来ないですかね?」
丁度会っている人間が行方不明だと言われたら、何らかの返答は来ると思いますよ? と言われる。
「いなかったらどうするんだ?」
「その場合、詳しく話を聞きたがるのでは? わざわざ呼び寄せてお話したがる位、仲良しなのでしょう?」
確かに。
「どちらにしろ、梨亜ちゃんがそこにいるかいないかは分かると思います」
「……そうだな。なら、駄目で元々、試しに行ってみるか」
鳥谷も含め、三人で頷きあって早速行こうとした時、今まで黙って聞いていた五十嵐が口を挟んできた。
「……なぁ?」
「どうしたの? 計人」
「統括者がえらくて、梨亜のにーちゃんだってんなら、そこにいるか確かめるんじゃなくって、最初から頼めばいいんじゃねーの? 梨亜を助けてくださいって」
「「「あ」」」
思わず、鳥谷達と三人で顔を見合わせていた。
確かに。
統括者にお願いなんて大それたこと、考えも付かなかったが、眼に入れても痛くないほど大事に可愛がっている妹が行方不明となれば、あの方は言われなくても動くだろう。なりふり構わず。
……知らせて平気か?
下手をすると、こちらの勘違いで、結城を拘束している人間の将来を消し潰すかもしれないという不安もあるが、仕方がない。
こちらは、部下が行方不明になり、業務にも支障が出、罪のない二人の人間が危うく犠牲になりかねなかったのだから、多少の恐怖は我慢してもらおう。――多少かどうかは大いに疑問だが。
「じゃあ、行くか」
俺達は伝える内容を整理した後、『北の邸』へ向かった。




