浮かんだ声 隊長
「どういう事だ?」
訳が分かっていない五十嵐に、美奈が説明する。
「隊長さんクラスは、自分の管轄の場所に対して、様々な能力を有しているの」
「つまり?」
「梨亜ちゃんがいるかどうか、迷わなくていいってこと」
えらくばっさりと説明を端折る美奈と、ふぅんと、こちらもあっさり納得する五十嵐。
「じゃ、タイチョーサンの管轄以外の牢を当たればいいんだな?」
大して数は変わらないぞ、と思っていると、美奈が首を傾げつつ、言う。
「それなんだけど、梨亜ちゃんが連れて行かれたのって、牢じゃないってことないかな?」
「どういう事だ?」
「梨亜ちゃんが捕まったとすると、やっぱり、その時の態度がおかしいと思うんです」
「『北』って、牢じゃなくて、普通の場所って事はないでしょうか?」
「そちらの方が、梨亜ちゃんの態度に説明つきやすいと思いませんか?」
まぁ確かに、聞く限り、結城は捕まってる意識があまりなさそうだが。
だが、『北』に似た場所なんて……。
考える俺の脳裏にふと、声が浮かんでくる。
《会えるのは、下手をすると年に数回ですし、義姉には殆ど会ったことありません》
あれはいつの話だったか。
確か、結城が統括者に話しかけられることを羨んだやつとの話だったような。
そうだ、いつも統括者に呼ばれる場所が、
「『北の邸』か……」
思わず呟くと、美奈が乗り出してくる。
「北の邸?」
「この世界で絶大なる力を持つ、統括者との面会をする際に使われる場所のことだ」
「そこ、どこですか?」
まるで、今にも飛んでいきそうな勢いに、鳥谷が慌てて答える。
「お待ちください。『北の邸』は、確かに『北』とは呼ばれていますが、面会には『北』とは、聞いたことありません。そもそも統括者は、一般人と面会なんてしたりしないでしょう?」
確かに、普通は面会なんて出来ないが、
「忘れたのか? 結城の兄は……」
「あっ!」
結城の兄は、統括者と結婚し、かつ自らも統括者となった人物であり、とても仲の良かった兄妹は、統括者となった後も、会える時は会っている。
それを思い出したらしい鳥谷が叫ぶと、美奈は背景にGO!マークを点滅させながら、さぁ行きましょうと促してきた。
「で、『北の邸』が『北』だとして、統括者って何だ? 梨亜がいる可能性があるのか?」
訳の分かっていない五十嵐が聞いてくる。
説明をしようとすると、先に美奈が答えた。
「梨亜ちゃんのお兄さんが統括者で、忙しくて滅多に会えないんだけど、丁度時間が空いた今、呼び寄せられたんじゃないかっていうお話。――ですよね? 隊長さん」
「……あぁ」
「統括者が会いたい、と言ったらきっと、言われた人達は何が何でも遂行しようとするから、一旦会いに行って、本人と話した方が早いと思って付いていったんじゃないかな?」
美奈の理解は早すぎないか? と思うが、ふぅんそうか、と納得する五十嵐を見ると、特に驚くほどのものではないらしい。
統括者についても、結城が話していたのか?
まぁ、家族の話とかする機会があって、たまたま話した、ということは考えられないでもない。
――あいつ、調子に乗って何でもべらべら喋ってるんじゃないだろうな?
何か色々と不安になるが、それは後で結城に問い詰めることとしよう。




