『風』へ 隊長
サブタイトルのみ変更。
美奈の話は、にわかには信じがたいものだった。
「結城が『北』に連行!? ――鳥谷」
「そのような報告は来ておりません。結城さんに連絡とってみますか?」
「頼む」
しばらく端末を動かしていた鳥谷だが、ため息をつきつつ首を振る。
「結城さんの端末、応答がありません」
駄目、か。
だがおかしい。仮にも部下が投獄されれば、上司に真っ先に報告が来るはずだ。
だが、実際に結城は姿をくらましている。一概に嘘だと決め付けるわけにもいかない。そもそも、こいつが本物の美奈なら、そんな嘘をつく理由が分からない。
「梨亜ちゃんがいなくなった後、私達も捕らえられました。『北』ではないらしいですが」
地界人を捕まえて、一体何になるんだ?
「目的は何か言ってなかったか?」
「分かりません。ただ、いきなり帰るよう言われたので、梨亜ちゃんを待っていたいと答えたところ、命令に従わないなら逮捕する、と」
何だそれは。
「そこでやっぱり帰る、と言えば見逃してもらえたようなのですが、二人で残ることを選んだので、牢に入れられました」
「そこがどこだか分かるか?」
「あちらの方にある、白っぽくて真四角な建物です。椅子だけ付いた個室のある」
子供は、指で窓の向こうに見える建物を指し示した。
「『風』か」
「恐らくそうでしょう」
俺の言葉に、鳥谷も同意する。
あそこなら、そんなに罪は重くない。ただ単に、結城が戻らない! と騒がれても邪魔だから入れられた、といったところか。
そうすると、結城が問題という事になるわけだが。
ここしばらく地界に行ったきりで、戻るのが本当に久しぶりな結城に、一体どんな過失があったというのか。
目の前の子供から聞く限りでは、理由は思いつきそうにもない。
「一旦、二人を先に出すか」
もう一人巻き込まれた、五十嵐計人に話を聞けば、また違う発見があるかもしれないしな。
そう考えていると、鳥谷がため息をつく。
「簡単にいけば良いのですが」
何故そんなに憂鬱そうなのかが分からない。
――『風』ならば、隊長格が出向けば、それなりの融通を利かせられるはずだが。
『風』は、元々が長くて二、三日入れられているところなので、手が足りない時など、責任もって労働させるから、と釈放させることはままあることである。
すると、こちらの疑問が伝わったのか、更に続ける。
「本日は十五日ですから」
そうか、今日は監察日か!
いつもは、大抵の融通を利かせてもらえる『風』だが、月に一度、係の上司が部下の仕事ぶりを確認にくる監察日だけは別だ。
上司の前で成果を見せるべく、皆張り切るし、監察者も報告を纏める必要があるため、イレギュラーな行動は許容されない。
まぁ、俺の立場ならごり押しは出来るだろうが、上策とはいえない。
「面倒だな」
「はい、面倒です」
それでも、やはり今のままでは情報が足りない。
「行ってみてから、どうするか考えるか」
一応、隊に何か連絡が入ったら転送されるようにして、鳥谷と美奈と共に『風』に向かうことにした。




