手紙 梨亜
最終話いっき更新です。最初から読んでね。
その夜。夜も十分に更け、朝からの行動に備えて寝ていたところ、どんどんどんっと何かを乱暴に叩く音が聞こえた。
こんな夜中に一体何が、と思いつつ、パジャマの上から軽く上着を羽織って廊下に出る。
「結城! 五十嵐! いるか!?」
こちらが開ける前に、隊長が悲鳴の様な声を上げながら家に入ってくる。
「隊長!? どうなさったんですか?」
「たいちょーさん? 今どーやって入ったんだ?」
寝ぼけ眼の計人も部屋から出てきた。
「お前達、美奈に言ったのか!?」
「は?」
「はい?」
言ったって……? ――まさか、決定を!?
「いえ、何も! 美奈は、知っていたんですか!?」
ひょっとして、保健室の話が聞かれていたのだろうか? あの後私は帰ってしまったので美奈の様子は見てないけど、それで不安に思っているようならすぐに行って大丈夫だと言わなくちゃ!
慌てて着替えに走ろうとする私達を止め、隊長は顔を歪ませながら言った。
「美奈は……自殺した」
……。
「はぁ!?」「はい?」
美奈が、何したって?
「毒を飲んだ挙句、心臓を一突きだ。病院には運んだが……」
「何言ってんだ、お前?」
「あの、隊長? 一体誰が何をしたんですか?」
美奈が、自殺? 自殺ってどういうこと?
訳も分からず固まる私と、隊長を引っつかんで詰め寄る計人に、隊長は苦しそうに答える。
「……信じたくないのは分かる。だが、事実だ」
「……病院は、山口系列んとこか?」
「あぁ。専属医の所だそうだ」
聞くや否や、隊長を放して踵を返す計人に続き、私達も病院へと向かう。
――お願い、無事でいて!
しんとした病院に相応しくない足音が響く。
「おいっ! 美奈は、山口美奈はどこだ!? お前らのオーナーは!」
計人が通りすがった医師をひっつかんで叫ぶ。
「只今、緊急治療中です。……今晩、もつかどうか」
医師は、そういいながら私達を美奈のいるという部屋の前まで案内してくれた。
手術中の文字が光っている部屋の前で、皆で座っていると、隊長が私達二人を手招きした。
美奈の幼馴染みや、使用人たちには聞かせたくない話なのだろうと判断し、その場を離れる。
隊長の差し出す手には、一通の手紙が握られていた。
「他の人間に対する手紙も残されていたが……、これはお前達宛だった」
「ふざけんな! 美奈は死んでねぇよ!」
「計人っ!」
隊長に掴みかかろうとする計人を押し止める。
「こちらも、美奈は助かると信じたい。これは、他人に見られぬように取っておいただけだ」
手紙が分けられていたのは、見られたくない内容が書いてある可能性もあるからな、と呟く。
私は、読んでみる事にした。
『
計人、梨亜ちゃん、隊長さん、突然こんな方法を取ってごめんなさい。
最近、ここは自分の居場所ではないのではないかと思うようになりました。
私は一旦全てをなくし、新たに生まれ変わりたいと思います。
出来れば、計人と梨亜ちゃんの子供になりたいな、なんてね。
隊長さん、忙しいのに、いつもお料理付き合ってくれてありがとうございます。
私がいなくなってもお家はそのまま使えるようにしておきました。よろしかったらこちらのお仕事がある時に使ってくださいね。
生まれ変わった私は何も覚えていませんが、あちらの方は生まれ変わりが分かるというので、もし会えたならまた、沢山お話してください。紅葉の小川のお話、凄く好きです。いつか一緒に、という約束が生まれ変わっても有効なら、ぜひぜひ連れて行ってくださいね。
梨亜ちゃん、私に色々教えてくれてありがとう。お姉ちゃんみたいに可愛がってくれてとっても嬉しかったよ。
私も、大好きなお姉ちゃんに守られるだけじゃなく、お姉ちゃんを守れるようになりたいな。
計人、十数年間ずっと友達でいてくれてありがとう。計人とゆっかが私の幼馴染みでいてくれたので、私はいつだって楽しんでいられた。
私に幸せを教えてくれた大好きな友達に、抱えきれないくらいの幸福が訪れますように。
自分勝手な理由で命を絶つ私を許して、とはいえないけれど、どうか悲しまないでください。
私は最後まで、とっても幸せでした。
いつかまた、巡り会えることを信じて。
山口 美奈
』
一文字一文字、丁寧に手書きされた文字に、乱れはなく、穏やかな美奈の心を反映しているかのようだった。
「美奈ぁ……」
私だって、美奈といて楽しかったよ。守ってくれてたのはそっちでしょう? 今回だって、私を守ろうとしてくれたんでしょう? 私達が議会に逆らわないですむ様に……。
でもね、美奈。犠牲なんて誰も、望んでないんだよ? お願いだから、死なないで。こんな手紙、後で目の前で笑って破り捨てるんだから。




