皆でお夕飯 梨亜
食欲を誘う香りに目を覚ますと、頭のすぐ上の方から声が降ってきた。
「お、起きたか梨亜。もうすぐ飯だぞ」
――な、何この状態!?
何故か、私は計人にもたれて眠っていたようだ。しかも、また急に動いて頭突きされてはかなわないと思ったからか、計人の腕が私の頭をがっちりと押さえ込んでいて、全く痛くはないけれど、動くことは出来ない。
バタバタと網に捕獲された魚のごとく、計人の手から逃れようとしていると、視界の端に、隊長と美奈がお揃いのエプロンをつけて料理を運んでいるのが見えた。
「え? え? え?」
事態についていけず、ただ驚いていると、二人がこちらに気付く。
「あ、梨亜ちゃん、お早う」
「結城、起きたのか? 今日はこっちで夕飯食べることになって、出張してきた」
「あ、そうなんですか」
私が計人に捕獲されてるのは、特にふれるまでもないことなのでしょうか?
「っつっても、殆どあっちから持ってきてもらったし、こっち来てからの仕上げもやってもらってんだけどな」
のんびり言う計人。――手、離してもらえませんかね?
さらに手をじたばたさせていると、計人は反対側の腕を腰に回し、よいしょっとばかりに私を自分の足の上に移動させて、頭を押さえていた方の腕も同じく腰へと回した。所謂、お膝に抱っこ状態。キャッチアンドリリースでお願いします。
戦い敗れて疲弊していると、美奈が何事もなかったかのように今日のメニューを教えてくれた。
「ふふふー。今日はサーチもどきでーす」
「サーチ?」
「うん。『皿鉢』って書くの。名前の通り、こんな風にお皿にいっぱい盛り付けるのよ」
「高知の郷土料理としたもので、皆が集まった時なんかに食べるものらしい」
「サーチと名前はついてるけど、中身はこれってのは厳密に決まってないんだけどね。こんな大皿に盛り付けて食べるってくらいで」
『よさこい』といい、サーチといい、決まりはゆる~く何でもありが高知らしいところよね、と楽しそうに笑う美奈。
「今回は定番の鰹の叩きや寿司を中心にしたらしい」
「あと、隊長さんが好きそうなものを集めてみたので、いっぱい食べてくださいね」
「あぁ、ありがとう。楽しみにしてる」
にこにこと二人で笑いあっている。隊長が笑うのって結構珍しいんだけど、やっぱり美奈みたいに可愛くほんわり笑う子を相手にすると、自分もほんわりとした気持ちになっちゃうものなんだろう。
隊長も、美奈との生活は結構上手くいっているようで、なんとなく安心する。
「あとは梨亜ちゃんが起きてきたら、お素麺茹でて出来上がりだったんだけど、もう食べられそうかな? もう少し待った方がいい?」
「ううん、ありがと。おなか減っちゃったし、お願いしていいかな?」
そう頼むと、美奈は満面の笑顔で答えてくれた。
「勿論! すぐ出来るから待ってて」
お願いね。私がこの拘束状態から早く解放されるためにも!
幸い、計人は食事時間まで捕獲敢行することはなく、私は心置きなく美奈のご馳走を楽しむことが出来たのだった。




