救助 梨亜
『――本……に、……ってくれ……の?』
『――……ちゃん、梨……ちゃん!』
『っいやぁぁぁーーーーーーーーっ!』
「――……亜、おい、梨亜っ!」
頬にぴたぴたと何かが当たる感触と私を呼ぶ声が聞こえた。
「うわっ、きゃあっ!?」
「うぉっ!? ……っー!!」
眼を開けた途端、息が掛かるくらい間近に顔があったため、慌てて身を起こしてしまい、結果計人の顎に思いっきり頭突きをかます羽目に。とっさで避けそこねた計人は私の一撃をくらって、声も出せずに倒れてしまった。
「……痛ぇ」
「ご、ごめん計人。平気?」
暫く私の上でひくひくと痙攣していた計人だったが、ようやく落ち着くと私を押しつぶしていたことに気付いたらしい。
「悪ぃ、大丈夫か?」
「いや、私が悪かったんだし。……えーっと、助けてくれたの?」
一体全体何があったんだ、と周りを見回すと、そこは体育倉庫だった。
――そうか、閉じ込められたんだったっけ。
何か、色々考えていたせいで夢を見て、現状をすっかり忘れていたようだ。――勝手に人の部屋に入るな、とか言わなくてよかった。セーフ。
計人は疑問系の私に、不機嫌そうな顔になる。
「お前が一時間経っても戻ってこねーから、美奈と一緒に探したんだよ。美奈があいつらに何か言われてんの偶然見てたからよかったものの……。――あぁ、犯人らは美奈が説教中だ、安心しろ」
いや、それは何をもってして安心しろっていうのさ。
「GPS見りゃ学校出てっし、行ってみりゃ携帯だけで本人いねぇし、相手探して居場所吐かせて迎えに来たら、てめーはマットで倒れて動かねぇし、慌てて呼びかけてみりゃ頭突きされっし」
散々だぜ、と顎をさすりながら言う計人には、何も反論できない。
「ご、ごめんなさい」
出来る限り神妙に謝っていると、ふと首筋に手が添えられた。
「け、計人?」
「頭くらくらしてねーか? 痛いとこもないか? 吐き気や寒気なんかも大丈夫か?」
真顔でこちらの眼をじっと見ながら聞かれ、慌ててぶんぶんと首を振る。
「そうか。脈がちょっと速ぇ気もすっけど、こんな目にあったんだから仕方ねぇ、か……。とりあえず、具合悪くなったりしたら言えよ? 歩けるか? 負ぶった方がいいか?」
計人の提案にも、力の限り首を振る。
――暢気に寝てただけなのに、心配された挙句負ぶわれるとか、どんな羞恥プレイ!?
「分かった。――おら、行くぞ」
思ったより大事になっている予感に、さっさと抜け出せばよかったかもと思いながら、差し出された手を取り外に出ると、外は夕焼け色に染まっていた。




