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夢追人  作者: 北西みなみ
第十話
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暗闇 梨亜

今日も真面目に地域見回り、頑張りましょう!


と、いう予定だったんだけれど。


「ざまーみろ」

「そこで精々反省する事ね」「じゃーねー」


そんな声を最後に、足音が遠ざかっていく。残されたのは、呆気に取られた私のみ。


――どうしてこうなった。



ことの始まりは、昼休み。


隣の組の女の子に、放課後空いているか聞かれた。体育の授業で一緒のため、何度か話したことはあるんだけど、反対にいうとその程度なので少し変だな、とは思ったのよねぇ。


けれど体育祭も近かったし、何より特に悪意を感じなかったので、何かの用事だろうと軽く考えたんだけれど。


まさか、本当にこんないじめが現存していようとは。昔々なら大いに有効だっただろうけど、携帯が普及しまくっているこの国で、人の出入りの少ない場所に閉じ込めるという行為は一体どの程度有効なのかしら?


――とはいえ、今の私にとっては有効なんだけど。


てっきり体育祭関連のお手伝いだと思っていた私は、倉庫の中が見えづらいから照らしてほしいと言われて、ほいほい携帯を取り出した。


そして、目的のものが高い所にあったため、照らす役をチェンジすることになり。


背伸びしながらポールを取ろうとしていると、光がバタンっと閉じた。いや、閉じたのは扉なんだけど。まぁとにかく、見事に真っ暗になったってわけ。


そうして冒頭に戻る、と。


一応天界の端末はあるため、隊長に連絡することは出来る。計人か美奈に頼んで助けてもらうのが一番早いだろう。


でも何とな~く、いなくなった振りをして、実際にはこちらを伺っている感じがするんだよねぇ。


携帯も持っていない私が、そんな短時間に救出されるのって怪しいだろうし、すぐに助けられたことで逆恨みされても困るし。……隊長に、素人さんに簡単に持ち物盗られたのを知られるのも嫌だし。


「どうしようかなぁ……」


ここから出るだけなら、扉を壊したり通り抜けたりすることは出来る。出来るんだけど、流石にそれは、ねぇ?


一旦天界帰っちゃって、別の場所に戻るとかも出来るんだけど、問題はそれをどうやって誤魔化すかであって。


これからも生徒として過ごしていく私に、おかしな噂が立つのは遠慮したい。


「暫く待ってから知らせるかなぁ」


誰かが探しに来てもおかしくない程度の時間を置いて、隊長に連絡しよう。


そうと決まれば、まずは座るところの確保なんだけど……。


「埃っぽい……」


とりあえず、候補は二つ。丸まってるマットか、跳び箱。


跳び箱は、毎回体育祭や文化祭で使われるくらいであまり使われていないため、そろそろ種目を決め始めるという段階の今は、日光による殺菌が必要じゃないかという状態。


マットはそれなりに使われてるけど、外側は床におかれてる面だしそもそも上履きで踏みしめるものだしね、これ。


どちらにしようか大いに悩み、結局はマットの上に座ることに。


――大体どれくらい経てば、人が探しに来ても不自然じゃないんだろう?


特にやる事もないので、ぼーっと考えてみる。


そもそも、彼女達は私に一体何を反省しろと言ってきたのか。


私は彼女達とろくに話した覚えすらない。そんな相手に、言わずとも考えが伝わることなんてあると思うほうがおかしい。


不満があるなら、その不満をきちんと正面からぶつけるべきじゃないか!


「ふぅ……」


一通り考えて、怒りに燃えてみるも、あまり長続きしない。


「十分くらいじゃ駄目かなぁ?」


用事があって出ていった人間が、十分後には救助されているというのは、流石に早いだろう。そんな結論に達し、マットを広げて寝っ転がった。


――そういえば、この学校に入って、まだ数ヶ月しか経っていないんだ。


計人と会って、まだ数ヶ月だというのに、まるでずっと一緒にいたかのような感覚でいる自分に驚く。


計人は、私のミスで自分が危機にあったにもかかわらず、助けたことを恩に着て、私を手伝ってくれている。


見回りだって、面倒くさいと言いながらも、真面目にやってくれてるし。


美奈なんて何もしてないのに、計人を手伝うと言って助けてくれた。私が暢気に兄上と話をしている間に、命がけで助け出そうとしてくれた。


そんな二人に私は何を出来るというんだろう。騙して監視なんてしている私達が。夢追人の仕事も部下に任せて、こんなところにいる私が。


美奈や計人にとって、私は疫病神にしかなっていないんじゃないだろうか? この世界にとって、私は害夢のように有害なんじゃないだろうか。



私は……。

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