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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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太陽のお嬢様

勇者は徹夜明けのまま「学校」へ行きます。

「自宅」に戻ると姫さまが玄関先に走ってきた。


「勇者さま、お疲れ様です!おかえりなさい!」


既に通学かばんを肩に掛け、準備万端といった感じだ。サフランも眠い目をこすりつつ姫さまの隣に立っている。


「姫さま、いくらなんでもまだ早いんじゃ?」


学校が始まるのはあと2時間くらい後のはずだ。


そう言うと、「にゃは?」と声を上げて居間に走っていった。


にゃは?


僕とソネッタさんは寝てしまった双子ともえを寝室に運び、次にテスラを起こすべく僕は赤竜王の後部座席に入ったのだが。


「うぎゃあああああああ」


寝ぼけていたテスラにさば折りを食らう。デスハグとでも言うのだろうか。死の抱擁である。そのまま法要されるかとおもった。(謎)


まだ意識のはっきりしないテスラを赤竜王からおろし、寝室に運ぶ。


僕の絶叫が聞こえたのか、姫さまが様子を見に来た。


「勇者さま、テスラさんですよね?どうしてここに…」


「僕にもわからないんだ…」


本当はなんとなく知っているけれど、あえて言わない。


魔獣に襲われた馬車の護衛をしていたことは伝える。ちなみに姫さまも昨夜の一件は起きてから知らされたようだ。


僕が魔獣を倒しに行ったと聞いた瞬間、すこしパニックになっていたというのを後からカレラさんに教えてもらった。


玄関先で明るく振舞っていたのはそれを悟らせないためか…。


姫さまはテスラが怪我をしていないか確認してくれた。


かすり傷がいくつかあったようだが、ドレスはもうダメだろうという感じでボロボロになっている。かすり傷は姫さまの治療魔導によりきれいになった。


ソネッタさんが例によってメイド服を用意したが、他のみんなが来ている茶色ベースではなくシックな赤系統のメイド服だ。


いつも思うがお仕着せではなく、フルオーダーのようなメイド服がどこから出てくるのか。実はクローゼットの奥に無人の縫製工場があったりするのだろうか。謎は尽きない。


目覚めたら着てもらうことにして、テスラはしばらく寝かしておくことにした。


僕はソネッタさんに簡単な朝食を用意してもらい、身支度をして姫さまとサフランをつれて「学校」へ行く。


サフランの護衛をするランサーさんは人見知りがまだ治らないので不可視の術を使っているが、カレラさんはそのままだ。


この二人は僕と同じように学校に入るための特別な許可をもらっている。


---


予鈴が鳴る。


今日は新しく学校を訪れる生徒が多いのか、いつもよりにぎやかだ。


まずは教室に通され、顔合わせとなった。


五十ほどの席には様々な種族の少年少女、教室の後ろには保護者と思われる大人が並んでいる。


満員御礼のはずだがいくつか空席が見える。


例の狐耳の女教師が現れた。それまでざわざわとしていた教室が静かになる。


「みなさん、おはようございます」


「「「おはようございます」」」


挨拶をする者、そっぽを向いてるお嬢様、上の空でなにかぶつぶつ言っている子供。様々である。


ちなみに姫さまとサフランはちゃんと挨拶していたようだ。


「さて、今日からみなさんに勉強を教えることになりました、校長代理のルナールです。早速ですが出欠を確認します」


いつものようにめがねをくいっと持ち上げ、出席簿のようなものを取り出す。後でわかったのだが、教室の机にはかばんの魔導陣を感知する魔導具が埋め込まれ、自動的に出欠を確認できるしくみが備わっているという。


入れ替わりの激しい生徒の顔と名前を全員覚えるのは至難の技だろうと思っていたらすごい仕掛けがあった。


ちなみにかばんは本人が持っていないと魔導陣が作動せず、代返などは不可能だ。そもそも代返をする意味もないのだが。


出席簿をぱらぱらとめくり、出席を確認したルナールさんは、空席についての説明をする。


「今朝早く、城近くの街道に魔獣の大群が現れ、乗合馬車が襲われました。幸い、勇者様と騎士団の活躍により魔獣は退治され、けが人も出ませんでしたが…」


教室がざわざわとする。


今日から登校する子供の何人かが乗合馬車にたまたま乗り合わせていて、魔獣に襲われたショックで熱を出し、乗っていたほとんどが欠席したと言う。


護衛の大人もガタガタ震えていたし、馬車ごと喰われそうになった人たちはもっとショックだったであろう。


「ふん!あの程度の魔獣、どうということもないわ。ただのミミズにうろたえるとは」


一人、空気を読まないお嬢様がポップした。オレンジに近い色のあまり飾りのない洋服。栗毛のボブカットでもっさりとしたヘアスタイル。後ろの保護者の中に明らかに動揺している小柄な女性が一人。まだ少女といってもいい感じだ。


「お、おじょうさま。そのようなことをおっしゃっては…」


どうやらこのお嬢様に仕える使用人のようだ。メイドというより侍女だろうか。


馬車の中はソネッタさんに任せてしまったので、どんな乗客がいたのかはわからない。ルナールさんは魔獣の種類までは言っていないので、おそらく現場に居合わせたか、だれかに聞いたのか。


「あなた!口を慎みなさい!一歩間違えば」


気の強そうなそばかすの目立つ女の子が立ち上がり、お嬢様に怒鳴りつけたが、その先が続かない。


教室のあちこちで細い悲鳴が上がる。


お嬢様の手にはソフトボールくらいのサイズに膨れ上がった、プラズマの塊のようなものが揺らめいていた。


「勇者様に頼らずとも、ミミズくらいこの「紫電のサニー」が倒しましたのに」


サニーという名前に負けないミニ太陽を手にしたお嬢様。

今にもそのミニ太陽を放ちそうである。さすがにまずいと思い止めに入った。


僕とお嬢様との距離はほんの二メートル程度。


「はい、そこまで!」


僕はプラズマに触れる。一瞬嫌な感じが右手に伝わるが、何事もなくプラズマは消失した。


あっけにとられるお嬢様。


保護者の皆さんから安堵のため息が聞こえ、お嬢様に立ち向かった勇気ある少女は…。


彼女の名誉のため、おもらしという称号だけはつかないように願うばかりである。


「あなたはいったい何者!中型の魔獣なら一撃で倒せる「紫電塊しでんかい」を打ち消した?どういうこと?」


お嬢様が真っ青な顔で僕に尋ねる。


「勇者エイトです」


僕と歩く溶鉱炉との初遭遇であった。

そういえ勇者が飛ばされた世界には幼香炉というものがあるそうです。

姫さまとサフランのクラス、実は問題児だらけだったということが明らかになります。

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