懐かしさの理由
記憶というのは何かしらのトリガーにより一気に呼び起こされます。
精霊女王はすこし前に思い出していたようだ。
僕は、部屋の隅を見る。
右手を伸ばし、おもむろに何も無い空間をつまむ。
「エイト、ぬげる!やめて!」
スッと姿を現した妖精ソニア。僕の手は彼女のスカートの中につっこまれており、いわゆるかぼぱんをつまんでいる。
「ソニア、いつから気がついていたの?」
しゃべる様子が無いのですこし右手を引く。
「あわわわ!言います!エイトが妖精の村に入った時、マナの流れが変わったんだ!その時だよ!」
「どうして黙っていたんだ?」
「人違いだったら恥ずかしいじゃないか!」
なぜか口調が変わっているソニア。
かく言う僕も今朝まで全く思い出せなかったので、あまり責めるわけにはいかない。
しかし、体が覚えていたのか、自然とソニアをぞんざいに扱っていたようだ。
「すいません、話を中断してしまいまして。この二人の事は後で話します」
ゲートドアの話に戻る。
交渉の末、まずは週に1回程度、1泊したら戻っていただくということで落ち着いた。
代価については高純度の精霊石を1ヶ月に20個が果たして釣り合うのかという話になった。たった1つでさえも貴重すぎて値段がつけられないものゆえ、ゲートドアの警備費用に当てるにしても何十年分になるのか見当もつかないという。
対価については白紙に戻し、代わりに精霊の国と交易が出来ないか擦りあわせを行うという。
で、問題の僕の魔力の対価だが。
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子供の頃に時間がさかのぼる。
小学生の僕はいつものように犬の散歩をしていた。
近所のお寺の前を通りかかる。このお寺には昔、悪鬼を封じたといわれる大きな岩がある。時折、岩から鬼のうめく声が聞こえるといううわさがあって、子供たちはあまり近寄らなかった。
そのお寺の中に外国人の女の子の姿が見えた。
彼女は泣きながら何かを探している。僕より先に犬が走り出し、僕はリードを離さないようつられて走り出す。
うちの犬は泣いている子供を見つけると、近寄ってあやすのが好きだった。
「コロ!ちょっと!止まって!」
コロは泣いている女の子の目の前に座るとじっと見つめる。僕はその子におそるおそる声をかけた。
「ねぇ君。どうしたの?どこかいたいの?」
どうも言葉が通じないようで、どこか別の国の言葉をつぶやき、その子は首をかしげる。それにつられてコロも首をかしげ、きゅーんと鳴く。
それを見てその子が笑った。そして、僕の胸の辺りに右手の人差し指を近づける。
指先に光が集まり、僕の体の中に消えていく。
「わっ!!!!」
思わず後ずさりする。汗を吸ったTシャツをめくって胸の部分を見たが特に変わった様子は無い。
「ごめんなさい。びっくりしたでしょ?」
言葉が通じないはずの子が流暢な日本語でしゃべる。
僕は驚いていると、その子は自己紹介を始めた。
「初めまして!わらわは、いえ、私の名前はマイア。あなたのお名前は?」
「衛登です。んでこっちが「コロ」」
コロはわん!と一声吠える。
「エイトさんですね。よろしく。…まぁ、こちらの世界にも「はうはうどっぐ」が!」
彼女の言うことがあまり理解できなかった。最初は外国人だから日本語がおかしいのだろうと思っていたのだが。
そして、彼女の後ろにもう一人、小さな女の子がいた。
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「僕がこの世界の「言葉」を理解できたのは君の力のおかげだったのか!」
「あの時は後先考えずに「ことばのちから」をエイトに授けてしまったのだが…」
「精霊女王の力がなければ…」
精霊女王が僕に使ったのは今いる世界の言語を理解し、しゃべる力。
精霊女王が日本語を話していると思ったのは間違いで、実際はこの世界の言葉でやり取りをしていたのだ。
もし、この力が無いままこの世界に呼ばれていたら、僕は姫さまの精霊の加護を受けられずそのまま死んでいたかもしれない。
「精霊女王、いやマイアさん。僕の魔力は好きに使ってほしい。ただし、吸い出すのは手から!」
ぶちゅーだとシルフィール姫のふくれっつらを製造するだけだ。マイア女王はしぶしぶ承知してくれた。
こうして、マイア女王と週1回の面会が決まった。
精霊石はマイア女王を助けた際の謝礼として受け取ってほしいとのことで、用意されていた20個を受け取った。
魔導スピーカの件は国王さまに承認され、早速テストに入ることになった。
そんな話の最中も子供の頃の記憶がどんどんとよみがえってくる。何故忘れていたのか…。
ちなみにお弁当といえば「どんどん」だ。それは置いといて。
特にソニア、あんないたずらっ子の事を今まで忘れていたなんて。
※作中に登場した鬼を封じた岩ですが、実在のお寺に伝わる話を若干脚色しています。
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10/8 typo修正しましま
マイア王女→マイア女王
一応女王ですが、実際は王女とほぼ同じ扱いで、先代の女王も健在だったりします。
などと考えていたのです!




