失われた過去
「ひめたべラジオ第一〇回放送 From ワイバーン邸」
テ「ひめたべラジオ10回目、今日は私テスラ・ワイバーンとギルド長のユースィアさんでお送りします」
ユ「テスラさん、よろしくお願いする」
テ「ユースィアさんはエイトさんが倒した「りざーどまーん」の魔導結石を調べにいらしたそうですわね?」
ユ「勇者殿の倒した「りざーどまーん」の中に変異種がいたらしいとの報告を受けて、この目で確かめに来たのだが」
テ「こ…これが魔導結石なのですか!!!」
ユ「黒くて大きくて迫力があるだろう。勇者殿の力は底知れぬ」
テ「エイトさん…あの時は戦わずに終わりましたが、私のしっぽをさわった罪、必ず償わせて(けっこんして)みせますわ」
ユ「そなたほどの持ち物があれば勇者殿もイチコロであろう…」
※どこかの預言書のように胸をもちあげて落胆するユースィア。
ユ「竜の一族には胸を大きくする秘術があると聞くが」
テ「そのような秘術は存じ上げませんわ!そ!それではまた来週!」
朝。
胸の上に誰かいる。体が動かない。
こ…これは金縛り!
と、思ったらソニアが寝ていた。夕べ抱き枕にしていたのをすっかり忘れていた。
昔、こんなことがあったような気がする。
僕はソニアを起こさないように起き上がる。
ふと、足に絡まる蔦が目に入った。
「女王様、私の蔦ですから私が先に」
「いや、どう考えてもわらわが先であろう」
はじっこにあるベッドの陰でこそこそと話をする精霊女王と地精霊。寝込みを襲う代わりに蔦を使って生気を吸い取るつもりだったようだ。
二人が押し問答している隙に足から蔦をはずし、[風呂屋の三助]Lv.128を起動して蔦に魔力を流し込む。
「ひああああああ」
「みゃあああああ」
悶絶した二人を確認し、ベッドに横たえると寝室を後にした。
「おはようございます、エイトさま!」
「勇者様!おはようございます!」
「エイト、おはよう…」
ソネッタさんがナタリアやアルマと一緒に朝ごはんの準備をしている。
アルマは精霊女王に寝込みを襲われてからあまり寝られなかったらしく、目の下にクマができている。
「おはようございます!」
アルマの背後に「はじめてのキスが女の子同士だなんて・・・」という吹き出しが見える。
寝ていたはずのソニアのいたずらのようだ。
とりあえず見なかったことにして顔を洗おう。
洗面所でひどい状態の国王を発見する。精霊女王の件をそれとなく話すが、きちんと伝わっているか疑わしい。
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朝食が並ぶ頃にはオパール王妃も起きていた。僕は夕べの出来事をかいつまんで説明する。
ちなみに精霊女王と地精霊は先ほどの魔力放出でぐったりしており、エリーナが面倒を見ている。
三人の朝ごはんは別に用意され、部屋に運ばれた。アルマは怖がっていたのでナタリアにまかせた。
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公務があるというので国王さまとオパール王妃が城に戻る。
その後、マーガレットさんが伝令としてやってきた。サバンナさんとシルビアさんはお昼過ぎに来ることになったそうだ。
例の魔導スピーカの件もあるのだが、先に精霊石の話をすることに。
午前中、冒険者ギルドに行こうと思ったが、ふと目に付いてルティリナとかえでのブラッシングをすることにした。
人の姿と獣の姿はどうやらリンクしていないようで、人の姿の際に髪を梳いても、獣に戻ると体毛が乱れたままになっていたからだ。
僕がルティリナを、かえでをアルマが担当する。
子供の頃、飼っていた犬をこうやって三人くらいでブラッシングしたなぁ。三人?なにかが引っかかる。いやブラシじゃなくて記憶が。
ちなみに犬を飼っていた頃はまだ兄弟がいなかった。
「アルマ、ブラッシングがうまいなぁ」
ほめられるのに弱いのか特に返事は無かったが、ブラッシングの速度が上がったのか、かえでが焦っている。
こうした機会を作って、もう少し教団のことを聞こうと思っているのだが、なかなか話してくれない。
まだ、僕を疑っている節もあり、まずは誤解を解かねばと思っている。
ブラッシングが終わり、ルティリナをいじりつつ、かえでをもふもふしていると僕の隣に一頭、金髪の獣が増えた。
姫さま、猫耳を装着して寝転がって何をしていらっしゃるのですか!
「にゃーん!」
ぱんつがあぶないですぱんつが!
アルマがすこし呆れた顔で僕を見る。今ので好感度が下がった気がした。
サフラン、姫さまの真似をしなくていいからね。
うさぎ耳をもってどうしようかと悩んでいるサフランの姿があった。
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午後、復活した直後から屋台に行くと駄々をこねる精霊女王を引きとめ、メイドずに買出しに行ってもらい、屋台スペシャルで昼食を済ませる。
女王を引き止めた理由。屋台に心奪われ、午後の大事な話し合いをすっぽかす可能性があったからだ。
昼食後の紅茶を頂いていると、サバンナさんとシルビアさんが現れた。
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「このドア…すばらしい設計です!」
「魔導サーキットの組み方。特殊な素材の加工。どれをとっても我々には到底…」
二人の目は精霊女王がつけさせたゲートドア(仮称)に向けられていた。
このドアにも精霊石がふんだんに使われているそうだ。
国王さまとオパール王妃にも来ていただき、夕べの話の続きをする。
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ソネッタさんが食堂の防音魔導を起動する。双子には食堂のドアをあけないように言い聞かせてある。
まずはゲートドアを勝手につけた件の謝罪から始まり、ドアの使用許可と代価の話になった。
ドアは定められた者だけが出入り可能で、外部の人間が何かすることは不可能という。しかし双子の力なら…。考えるのはやめよう。
「ここにゲートがあることを女王を誘拐した犯人たちに知られたら、エイトさまが危ないのでは?」
至極真っ当な意見がオパール王妃から出た。僕自身はたぶん大丈夫だろう。一番危ないのは姫さまか。
警備のことを言えばメイド隠密部隊という強固な守りがあるのだが、ドアの存在が余計な負担になる可能性もある。
それと、一国の女王が出入りするドアのそばに僕がいてもいいのかという疑問もある。
精霊女王はこちらに来てからなぜか僕を信頼しきっている節がある。いくら自身の分身を埋め込んでいる相手とはいえ。
「精霊女王、つかぬ事をお伺いします」
「どうしたのだエイト」
「昔、僕の家に遊びに来たことがあったかなと思いまして」
「…エイトも思い出したのか。わらわは国へ帰ってからふと思い出してな。そなたに会いたくなったのだ。もちろん生気もほしいのだが!」
いきなり変な方向に飛んだ会話に周囲はぽかーんとしている。
僕の子供時代の記憶。すこし変わった雰囲気の女の子「達」が徐々によみがえる。
なぜこちらの世界に呼ばれたのがエイトなのか。
徐々に解明される感じで話が進んだり進まなかったり。




