双子の正体
ぷにぺたな双子ちゃんには秘められた能力が!
写真で盛り上がってしまいまたもや忘れていたことを思い出す。
双子にあらためて名前とどこから来たのか話を聞いてみた。聞くのをすっかり忘れていたのは棚上げする。
「しーすといいます。うまれてからずっとマスターのくるまのなかでねむっていました!」
「れーね です! マスターはしすねーちゃんとれーねのおとうさん です!」
的外れな回答の中に何か爆弾が投下された。シルフィール姫の表情が青ざめている。僕は未婚ですから!と一応フォローしたけれど。
マーガレットさんはまた顔があかくなってる。食前酒のワインのせいではないようだ。未婚の父ではないと一応断っておいた。
シルビアさんは別のことを考えていたようで特に表情は変わらない。
「さっきびりっというのでおこされてすごくいたくて、そしたらマスターのことがたくさんあたまのなかにながれてきました。」
「マスターをさがそうとしすねーちゃんとちからをあわせて、マスターのくるまをはしらせた です!」
びりっと言うのはシルビアさんの話していた調査の手違いのことだろうか?
それにしてもこの子たちが車の中にいたというのも信じられないし、どうやって車を動かしていたのか見当もつかない。ペダル類には足が届かないだろうし。
「そういえば、車はどうやってうごかしたの?」
二人は僕の手を引いて廊下に出ると、寝室の扉の前に絶賛放置中だった車に触れた。
「「こうやってうごかしました」です!」
突然まばゆい光の玉となってボディに溶け込む二人。
いやいや、ちょっとまって。何が起きているの!
体温といいやわらかさといい、人間だと信じて疑わなかったぷにぺたようじょが突然光の玉になるとはいくらおどろかない宣言をした身でも覇王吃驚拳を使わざるを得ない。
「「マスター、すこしはなれていてください」です!」
車から二人の声が聞こえたのですこし後ろに下がる。
キュルルルルルル フォン!
突然エンジンがかかり、ライトが点灯する。ハザードを出した車は一回クラクションを鳴らすと薄暗い赤じゅうたんの廊下をバックしていった。
ほどなくしてライトをパッシングしながら戻ってきて停車するとエンジンが止まり、ボディから光の玉が2つ現れる。
光の玉は幼女独特のイカ腹なつるっとしたシルエットになり、一瞬強く光るとさっきの双子の姿に戻って僕にしがみつく。
つられて廊下に出てきて光の玉になる様子を呆然と見ていたマーガレットさんが「お二人の光の玉は姫さまに宿る精霊に似ている気がします!」と驚きの声を上げる。
そういわれてみれば、無色の精霊玉に見えなくもない。
「せーれーってなんでしょう」
「たべるとおいしいもの です?」
マーガレットさんの言葉に触発されたのか、一緒に様子を見に来ていたシルフィール姫の体から3色の精霊玉が出てきた。もう辛抱たまらんといった感じで双子に近寄ってくる。
知り合いを見つけたわんこのしっぽのような感じでぶんぶん揺れ始めた。
双子は目の前に現れた3つの光る玉に目が釘付けになった
「もしかして、なかま?」
「たぶんなかま です!」
双子と3色団子は向き合うとFAXのような「ピーガガガガガガ」という音を出しあっている。
なにかやり取りをしているようにも見える。
これはシルフィール姫にも人の言葉として聞き取れないようで首をかしげていた。
しばらくしてやりとりが終わったようで音が止まった。
3色玉から さとがえりできた! よかった! と聞こえる。
赤玉だけがこちらに近寄ってきた。この子はすこし苦手かもしれない。
「あなたをまだゆうしゃとはみとめないが ふたりをつれてきてくれたことにはかんしゃする あのふたりはむかしおこったじくうのみだれにおちたまいごだった」
「ふたりはあなたをまもるそうだ だいじにしてほしい なにかあったら わたしがゆるさない」
そう言うと、ほかの2色玉のもとへ戻っていった。表情がわからないが喜んでいるのはなんとなくわかる。
シルビアさんが、あっ!と小さな声をだして大きな胸をゆらして食堂に戻り、マーガレットさんの席にあった「預言書」の写しを持ってきてめくりはじめた。
それをシルフィール姫とマーガレットさんにも見せている。三人は頭をくっつけて写しを覗き込みなにか話している。
「もしかしてシースさんとレーネさんは「預言書」にある勇者さまを守る精霊なのでしょうか?」
双子の精霊がいれば、エーテルの毒の件は解決するのだろうか・・・。
どうやれば精霊を体内に取り入れられるのかも不明なことと、今のところは姫さまの加護の力があるのでそんなに急ぐこともないだろうということになった。
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食事の前の約束どおり、シルフィール姫を車の助手席に乗せた。
マーガレットさんとシルビアさんにも乗るように勧めたけれど、姫さまを優先したいということでまずは姫さまだけの試乗となった。
車をいつまでも廊下に放置するわけにはいかないのでついでに外へ動かすことにした。
双子は「「マスターいってらっしゃい!」です」(にやにや)といっているので双子はマーガレットさんに預けた。
シートベルトを締めてから姫さまは助手席で放心状態になっている。大丈夫か?
建物の中とはおもえないほど長い距離をバックして双子が着地の際にブラックマークを残した迎賓館玄関ホールまでやってきたものの、どうやって外に出そうかと思案にくれていると、いつのまにか現れた目つきのするどいメイドさんがホールの裏手にある巨大ドアを開けてくれた。
どうやら大きな荷物の出し入れに使うドアらしい。車一台くらいは余裕で通れる。
そのまま迎賓館の裏のスロープから車を出し、迎賓館を一周した後たぶん邪魔にならない場所に車を停める。
馬車を置くスペースなのか、馬をつなぐポールがあり、ラインが引かれている。
だだっぴろいのでど真ん中でもよさそうだけど、小市民なので隅っこに置く。
ゆすっても反応のない放心状態の姫さまを抱えて食堂に戻ることにした。
お姫様抱っこでさらに刺激してしまったのか、腕を胸の前で組んでずっとにやにやしている姫さま。かわいいんだけどちょっと怖い。
食堂にもどる途中、戻るのが遅いのを心配したのか様子を見に来たマーガレットさんと遭遇した。
マーガレットさんは両手で顔をおおって「まぁ!」と感嘆の声をあげる。
最初はシルフィール姫にしてもマーガレットさんにしても行動の意味が不明だったが、この後理由の一端が判明する。らしい。
ロータリーとロリータって響きが似てますよね?次回くらいにサバンナさんがちょっとでてきます。
余談ですが、ホームセンターのだだっぴろい駐車場で邪魔にならないよう入り口からいちばん遠い端っこに車を停めると、ほかがいっぱいあいていても隣にぴったり寄せて停める人がいるのですが何故でしょう。
観音開きドアなのでぴったりつけられると後ろのドアの開け閉めがたいへんなのです。
脱線しました。