フィリーの決心
今回は何故か国王が同行します。たぶん赤竜王に乗りたかっただけですが。
「それでは、いってきます!」
翌日、総勢20名のバラの騎士団の皆さんと赤竜王がノーマンの先導で妖精の国への門をくぐる。
外套の一味の引き取りだ。
護送用の檻付馬車がその後を続く。
赤竜王の助手席には何故かマッスルキングさんが座っている。
姫さまは学校に行くための予習が終わらないのでお留守番である。
マッスルキングさんはひざに乗せたもえに何かたずねている。もえが何か答えるたびに「ほぉ~なるほど~」などと相槌を打つ。
「先日、サンダッティアの王子に子供ができたと国王から早くも孫の自慢の手紙が来まして。まだ産まれてもないのにですよ!」
マッスルキングさんから見ればもえの見た目年齢は孫くらいの年齢になるのだろうか。
「私も早く孫の顔が見たいです!どうですかエイト殿、シルフィールとの結婚式の日取りはいつごろ」
赤竜王が盛大にずっこけそうになり、「どーーーーーーーん!」と踏ん張ってなんとかこらえる。
コンソールに赤い文字がバラバラと並ぶ。魔導機関がエンストしたようだ。
魔導機関の核の部分はロータリーエンジンだが、今は魔素を圧縮するコンプレッサーとして動いている。と、いつものおせっかい精霊が教えてくれた。
エンジンはほどなく再起動されたが、騎乗したマーガレットさんが何事かと近寄ってきた。ハッチを開けてマーガレットさんに答える。
「あ、すいません。国王さまが突拍子もないことをおっしゃるので手元がくるいました!」
「国王様、あとで王妃様に報告をいたします!」
僕のいないところではいつも言っているようで、マーガレットさんが逐一報告をしているようだ。
そんなトラブルに見舞われたものの、1時間程度でギガンティスさんの屋敷に到着した。
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地下室にいた外套の一味は抵抗するそぶりも見せず、檻付馬車に次々と乗り込む。
暴れださないよう、沈静化の魔導をあらかじめかけておいたそうだ。
本来であればソニアを帰さなければならないのだが、朝から姿を消していて捕まえることができなかった。
ギガンティスさんにそのことを報告すると、もうしばらく預かってほしいとの返事が返ってきた。
「妖精の村」への門はしばらく封印をしておくので、ソニアはしばらく外に出ていなければならないという。
どうせなら、社会勉強をさせるのもいいのではという判断だ。それなら閉鎖的な「妖精の国」よりもライスリッチフィールドがふさわしい、とギガンティスさんが言う。
マッスルキングさんも同意したので問題はないだろう。預かるのはうちだけど!
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外套の一味の詰め込みを見届け、形式上の書類のサインを待つ間、フィリーのお見舞いに行く。
「フィリー、大丈夫?」
「お兄さん!それに熊のおじさん!」
「勇者さま、フィリー、こちらの方は熊のおじさんですか?」
ちょうど起き上がってゼオライドと話をしていたようで、いつもの元気な笑顔で答えてくれた。
熊のおじさんとはマッスルキングさんのことである。
ゼオライドもマッスルキングさんの正体は知らないようである。
ゼオライドがフィリーの容態を説明してくれた。
「フィリーはもう大丈夫です。この子は妖精の血を濃く引いていて、妖精特有の変化が現れたせいで熱を出していたとお医者様が」
「お姉ちゃん!」
「ごめんなさい、フィリーから言うんだったわね」
フィリーがベッドから出て、僕の前に立つ。
「お兄さん…。私、結婚できるようになったんだ!あの、結婚というのはその赤ちゃん…」
フィリーがもごもごと言いよどむ。
ソネッタさんの言葉を思い出した。妖精の性別の話を。
フィリーの性別はまだ決まってないようだと。
「お、おめでとうフィリー。なにかお祝いをしないと」
こちらもしどろもどろになってしまう。
「それじゃ…」
フィリーが大きく深呼吸をする。
「お兄さんのおよめさんにしてください!あの、今すぐじゃなくてその!」
隣で「どーーーーーーーん」という音がした。
あ、マッスルキングさんが卒倒した。床に穴が開いてないか?
フラグがたっていたのは国王でしょうか。
※ちなみにライスリッチフィールドでは重婚OKです。
国王がぶっ倒れたのは勇者を玉座に据える計画が破綻しそうになったからでしょうか。
詳しくは次回、本人が語るかもしれませんし語らないかもしれません。




