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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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妖精の村

妖精の国にはまだ秘密が!

外套一味はノーマンの指示で地下室の牢に移動され、頑丈な鍵をかけてメイド達が見張っている。


僕ともえ、ソネッタさんは客間に通された。今度は密室ではなく、ちゃんと窓のある開放的な場所だ。

僕の借り物の高そうな服はかなりボロボロになってしまっていたので、自前の服に着替えた。

ソネッタさんはあれだけの大立ち回りをしたにも関わらず、メイド服には綻びはおろか、よごれ1つ見えない。

もえの赤い着物も無事のようだ。伸縮自在な点でもうなにがなんだか。

ちなみにもえは半分寝ているような状態でうつらうつらと船をこいでいる。


昨日ティーポットを盛大に落っことしたメイドが、申し訳なさそうに運んできた紅茶を飲んでいると、ノーマンがやってきた。


「勇者様、旦那様が先ほどの件でお話をされたいとのことです。出来ましたらお一人で」


「わかりました、僕一人で行きましょう」


もえをソネッタさんに預け、僕はノーマンの後に続く。


書斎だろうか、重厚な扉の向こうには書棚が並び、部屋の真ん中あたりにギガンティスさんが立っている。

先ほどのやつれた感じはなくなり、びしっとした中年紳士だ。


「勇者様、フィリーとゼオライドを助けていただき、ありがとうございます。本来であればフィリーが戻ってきた際にお礼に伺う予定でありましたが…」


「なにかあったのですね」


「はい、詳しいお話は「村」に着いてからさせていただきます」


ギガンティスさんは書棚の1つに近寄ると、おもむろに何冊かの本の背表紙を押す。


突然書棚が左右にスライドし、「ゲート」が現れた!


「勇者様、この先で見聞きした内容については他言無用にて」


「はい、承知しました」


---


ほんのわずかな空気のゆらめきと共に、先ほどの屋敷内から木々が鬱蒼と生い茂る森の中へと移動した。


「ギガンティスさん、ここは?」


「「妖精の村」といえばお分かりになられますでしょうか?」


その昔、不老不死の薬の材料として捕らえられ、絶滅寸前まで追い詰められた妖精が隠れ住むという里。


「はい、いくつかの文献で拝見したことがありますが」


「私が治める「妖精の国」はこの「妖精の村」を守る砦の役割を果たしています。「妖精の国」に住む者には人間ヒトと妖精の血、両方が流れております」


フェアリーハーフというわけか。


「「妖精の村」には純血の妖精だけが住んでいます。その昔、人間から迫害を受け絶滅寸前まで追い詰められましたが…」


「なん…と…」


目の前にそびえる超巨大な木。中層ビル1つ分くらいのそれには、さまざまな形のミニチュアハウスがぶら下がり、そして。


「妖精!こんなに大勢?」


目の前を僕の手のひらよりすこし大きいサイズの妖精の団体様が、羽から光の粒子を振りまき通り過ぎていく。どうやら女性のようだ。


見れば巨木自体が1つの街を形成しているようだ。ぶら下がった家の数から推定するとおそらく数千人?いや数万人以上の妖精が住んでいるのであろうか。

シム○ティさながらの情景が目の前に展開されている。


「これが世間に知れたら…」


「はい、おそらく戦争になるでしょう」


ギガンティスさんは暗い表情になる。


「勇者様、こちらへどうぞ。この「村」を治める代表と会っていただきたいのです」


僕は巨木から少し離れた場所にあるコテージに案内された。こちらは人間のサイズで作られている。変わったところといえば、妖精専用の出入り口が別に設けられているくらいだろうか。


---


「ようこそ勇者様、「妖精の村」へ」


村長むらおさのジュリアさん、そして傍らにいる幼女はソニアという。二人とも妖精だと言うが人間サイズであり、唯一、背中の羽が妖精であることを物語る。


体のサイズについては、普段は住む場所と消費魔力の関係で小さくなっているのだという。


小さければ花の蜜程度でも代謝をカバーできるほど効率が良いそうだ。


僕が呼ばれた理由、それはこの村を守ってほしいとの依頼。


ギガンティスさんの話では、あとすこしでこの村の存在が知られてしまうところだったという。


そもそものきっかけは、昔、街の外から呼んだ商人が持ち込んだあの呪いの剣。


「妖精の国」に人が増え、自給自足では暮らしが成り立たなくなり、妖精の「力」で作られた治療薬などを外に売るために危険を承知で商人を招いたのだという。

その際、代金の一部として物納された中にあの忌まわしい王子の怨念がこびりついた剣があったのだという。


最初のうちは王子様ごっこ遊び程度の影響しかなかったというが、年齢が上がるにつれ日常生活にも影響が出始めたという。

女の子が王子の格好をして妹を婚約者などと言っている様子を想像してほしい。


「ゼオライドがあの呪いにかかってから、国中の医者や魔導士に見せ、それでも分からないため、人里に下りて呪いを解く方法を探しました」


何年か探し回り、偶然声をかけてきたのがあの外套の一団。


ギガンティスさんはわらにもすがる思いで頼ったのだが、代価として人の心を操る薬の調合を依頼されたという。


「そんなときでした。フィリーが一人で国の外へ飛び出したのは」


あの一団が国に居座ってから呪いが進行し、徐々に自我を失っていく姉の姿を見てフィリーが単独で呪いを解く方法を探しに出たらしい。


フィリーが飛び出した直後、ゼオライドの意識は王子に完全に乗っ取られ、外套の一団が両親がフィリーを隠したと吹き込み、ギガンティスさんたちを地下室に幽閉したという。


「我々を隔離したのは、ゼオライドをそそのかして薬の製法を知るためだったのでしょう。しかし、製法を知るのは私と妻だけでしたので、やつらにはどうすることもできなかったようです」


その後、フィリーが戻り、その後高熱にうなされて勇者の名前が出たせいで王子の怒りに触れ、僕を呼んで薬の力で記憶を消そうという流れに。


そして、先ほどの戦闘のどさくさにまぎれて持ち出されたのが、人の心を操る秘薬。


持ち出された量は、外套の一団に頼まれた半分程度だと言う。


「残りを取りに戻ってくる可能性が高いということですね?」


「はい。しかも連中はこの国へ出入りするための魔道具も持ち去っています」


秘薬は妖精の力がなければ作れない。そのことが知られてこの「村」にも危機が訪れる可能性は十二分にある。


ジュリアさんがソニアを僕の前に連れてきた。


「この子を連れて行ってください。何かのお役に立てると思います」


ソニアから途方もない魔力を感じると、おせっかい精霊が僕の耳元でささやく。


「勇者さま、参りましょう!ソニアにおまかせよ!」


どん!とぺったんこな山脈を叩いてむせている、自称「花の妖精」ソニア。大丈夫なんだろうか。


ソニアはステッキを振って呪文を唱えそうですが大丈夫でしょうか。

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