夕食はみんなで
ごはん!ごはん!
食べ物の描写はむずかしいので簡単に。
僕がこの世界にやってきて、はや6時間。
思えば長い・・・
すこし落ち着こう。
まだ6時間しか経過していない。
外はすっかり暗くなっている。
ジェットコースターのような6時間をすごし、ようやく頭が回り始める。
それにしても何故僕が呼ばれたのだろう。
そして帰ることができるのだろうかという疑問もでてきた。
最初はだれもいない世界でハンバーガー1つ食べてぼっちで死んでいくのかと思っていたのに、突然現れた女の子に食べてほしいとお願いされて、その後幾度となく気絶して、やわらかい低反発枕を堪能して、気がついたらあたたかい人たちに囲まれて夕食会に参加している。
メンバーはシルフィール姫、マーガレットさん、シルビアさん、謎の双子と僕。
ちなみに双子はれーね!しすねーちゃん!と呼び合っている。
客間でシルビアさんといろいろしていたときに寝室に残されたシルフィール姫と双子が目を覚まし、僕が部屋にいないと騒いだのも記録しておく。目つきのするどいメイドさんのちからにより(ry
皆で客間の隣にある食堂に移動した。客間と食堂は内扉でつながっている。
来客が簡単な食事を取るための部屋らしくこじんまりとしている。
こじんまりと言っても30畳くらいはあるだろうか。
テーブルに着く前にこちらの食事のマナーがわからないので粗相しちゃうかも。と断っておく。
僕のいた世界とあまり変わらないようで安心した。
高級フレンチならまかせろ!(しかしバラエティテレビの知識程度しかない。)
運ばれてきた前菜は野菜の色が非常にカラフルな程度で味はレタスと変わらなかった。
おめでたい席で使われる七色葉野菜だそうだ。
メインディッシュのおにくがおいしいけど、どんな動物なのか聞くのに勇気がいるのでやめておく。
付け合せのにんじんに似た野菜が人形のような形をしている。もしかしてマンドレイクと関係があるのだろうか。
食事中、手のかかる双子の面倒を見ながら(途中からメイドさんにおまかせしました)自分の世界のことを専門的なことは避けてあたりさわりのないレベルで話す。
廊下に置きっぱなしの車が話のネタになってよかった。
シルフィール姫がどうしても乗りたいというので食事の後に、と約束した。
僕の世界の話を進めるとシルフィール姫の目がどんどんあやしく輝きだす。この子は大丈夫なんだろうか。
各人のお皿が空になる。双子も満足そうな顔をしている。シルフィール姫はお昼過ぎに僕が持ってきたハンバーガーを1つ食べただけでおなかがすいていたのか、すごい勢いで完食した。
食べ終わって、ポケットに入れっぱなしのスマートフォンの存在を思い出した。
みんなにスマートフォンで撮影した「あたりさわりのない」風景写真をすこしだけ見せた。
フィギュアやドールの写真は別フォルダに入れておいてよかった。
魔道具にくわしいというシルビアさんは写真よりもスマートフォンそのものに興味があるらしく、テーブルに置かれたスマートフォンをおそるおそる裏返したりして真剣に眺めている。
例の目つきのするどいメイドさんも様子が気になるのか、こちらをちらちらと見ているので思い切って見せにいくとすごい勢いで逃げていった。
武器か何かと勘違いしたのかもしれない。
こちらの世界には印画紙を使った記録装置は存在しないらしい。念写球という風景を封じ込める魔道具はあるそうだが、ぼんやりとしか見えないうえに人物などには不向きとのこと。
これですわ。とシルフィール姫が食堂の隅に飾ってあった念写球を見せてくれた。
台座には「ライスリッチフィールド城」と書かれている。観光名所のお土産的なノリである。
直径15センチ程度のスノードームのような半透明の球体にミニチュアのお城が入っているようにも見えるけれど、やっぱり映像にしか見えないのが不思議だ。
球体の中は夜の帳がおりて城の窓に明かりが灯っている。
「この念写球は夜になると勝手に真っ暗になってしまって不便ですの。朝になればまた明るくなるのですが。」
もしかして現実時間に連動して昼夜が再現されているんだろうか。おそるべし。
球体をまわすといろいろな角度からお城が見られる。よく見ると地面に小さな光がいくつも動いている。
「この明かりはおそらくたいまつを持った見回りの兵士ですわ。勇者さまがいらっしゃったので警備を厳重にするとお父様がいってましたの。どうして念写球に出てくるのかはわかりませんわ。」
もしかしてリアルタイム映像なのか!
人知を超越した技術は時としてわからない人には伝わらないというのを思い出した。
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せっかくなのでスマートフォンを使ってみんなとつーしょっと撮影などもしてみる。
僕ってこんなに積極的だったかなと思う。たぶんトラベラーズハイというやつだ。
姫さまと双子は一緒に写ると言い出して、無理やりフレームに入ろうとものすごい力でおしあいへしあい。
またまな板に押しつぶされるところだった。
おどおどするマーガレットさん。父親や弟以外の男性とこんなに接近する機会はなかったそうだ。
シャッターを切るタイミングがずれて半眼の変な顔で写るシルビアさん。これも罰ですというと、ほっぺたを膨らませて「もー!」という。その言葉に合わせて胸も揺れているもー。
みんなの写真は「異世界の知人」フォルダに登録した。
これをプリントアウトできる日は来るのだろうか。
双子をひざに乗せて頭をなでながらふと思った。
双子のことを聞き忘れてる。
インタラクティブなスノードームは日本科学未来館にあるジオコスモスのちっさい3D版のような感じです。
次回は双子の能力についても明らかに!