一城の主(マイホームダディ)
潜入捜査中の目つきのするどいメイドさんに危機が迫る!
一方勇者にも危機が迫っていた。
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とある国のとある教会。
深夜、その地下で行われているあやしげな集会。
目つきのするどいメイドは教会の信者になりすまし、潜入していた。
まがまがしい祭壇の前には数十人のローブ姿の信者がいる。
「「「「我らこそ勇者!預言書の勇者は偽者!我らに勝利を!」」」」
司祭のような姿の老人が前に出る。
「わが同胞よ!よく集まってくれた。精霊を使ったゴーレムは惜しくも破れはしたが、あの偽勇者をぎりぎりまで追い込むことができた!」
「同胞の何人かが敵の手に渡ったが、彼らは教えに従い口を開くことは無い。」
「今回のゴーレムに使った精霊は人の街にさまよい出たはぐれ精霊のためか、力が弱かった。次は精霊などに頼らず自身の力をゴーレムに注ぎ込むことでより強い力を得られるであろう」
「…貴殿に新型のゴーレムを任せる。次こそはあの偽勇者を打ち倒し世界を救済する力となるのだ!」
「ははっ!おおせのままに」
「女神様から祝福を受けるがよい。女神さまの力により魔果実を体内に取り込み、自らゴーレムのコアとなるのだ」
祭壇の前に一人の少女が連れてこられた。薄い絹地の服を着せられ、手足には枷がつけられている。
その瞳には光は無く、生きているかすら疑わしい。額には小さな角らしき突起がある。付き添いの男が持つ盃には真っ黒な真珠のようなものが乗せられている。
「…魔族?」
目つきのするどいメイドはうっかり声に出してしまう。
「異端者だ!異端者がまぎれこんでいるぞ!」
「……予定変更」
目つきのするどいメイドは祭壇の前に躍り出ると、少女を抱え、盃を掴み、出口を蹴破って地上へ向かう!
「追え!追うのだ!女神さまと魔果実を取り戻せ!」
司祭が声を荒げる。
十数人が追跡体制に入った。
教会を飛び出した目つきのするどいメイドは少女を抱え、狭い路地を縦横無尽に駆け回る。
しかし地の利は追跡者にあった。
袋小路に追い込まれてしまった目つきのするどいメイド。
一人の男が何かの呪文を唱えると一気に間合いをつめ、メイドの着ていたローブに深々と剣をつきたてる!
ローブからなにかあたたかい液体がにじむ。そしてピクリともうごかなくなった。
「やった!異端者をたおしたぞ!」
その声に追跡していたほかの人間が集まり、勝利を分かち合う。
勝利の余韻に浸りながら男がローブから剣を抜くと、どす黒い…
「こ…これは…血じゃない!このにおいは…ソース?」
ローブをめくると、そこにはまだ湯気があがるお好み焼きがあった。
その場にいた人間はどうやって報告したらいいのか途方にくれていると。
「ああ!手がかりが!」
あつあつのお好み焼きは野良犬によって持ち去られた。
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そんな騒ぎをよそに屋根伝いに移動する目つきのするどいメイド。
少女は目立たないよう黒い布でくるんで背負い、盃に入っていた何かの粒は小瓶にいれてポーチにしまってある。
「おこのみやき、もったいない」
目指すはライスリッチフィールド。
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ところ変わって、例の野営地。
勇者は夕べの肌寒さから一転してあまりの暑さに仮眠から目覚め、テント内を見渡す。
両隣に姫さまと精霊女王が張り付いている。夕べは空きテントを探す気力も無くてここにもぐりこんだのだった。
勇者は痛む手足を引きずり、寝ぼけ眼でおしりやら平地やらをかきわけて外に出る。
体を伸ばしていると徐々に朝日が昇り、その光の中に妖精が立っていた!
「…フィリー?」
彼女の背中には無かったはずの羽があり、きらきらと虹色に光り輝いている。
「お兄さん!」
フィリーの羽は光の残渣と共に一瞬で消えた。寝ぼけていたのだろうか。
「お兄さん、いまの見た?」
「ああ、ごめん、まだ寝ぼけていて。朝日がきれいだなー」
「う、うん。そうだね」
僕はうそをつくのが下手である。フィリーのそばに立つ。
「できれば、みんなにはだまっててほしいな」
「うん。フィリーのためなら」
フィリーのあたまをわしわしとなでる。
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野営地から城までは何事も無く移動できた。
赤竜王も問題なく動いている。
魔素プール付けになったゴーレムの術者はいまだに目を覚まさず、見張りをつけているが、荷物のように馬車に積まれたままだ。
こちらの世界では点滴などもないので、どんどん弱ってしまいそうだけど、定期的にヒールをかけて体力を回復させれば問題ないようだ。
城門をくぐり、ようやく帰ってきた。
まだここにきてそんなに経たないのにすごく懐かしい感じがする。
城門を入ってすぐにバラの騎士団や魔導士のみなさんと別れ、久々に迎賓館へ。
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夜、赤竜車が突然消え、護衛をしていた騎士がうわごとのように「くまが!くまが!」と繰り返して大変なことになっていたのは別の機会に。
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「お疲れ様です。お待ちしておりました」
オパール王妃が出迎えとは…。
「エイト様、こちらへどうぞ!」
オパール王妃の後にみんなでぞろそろついていくと、城と迎賓館のほぼ真ん中あたりに建つ立派な一軒家に着いた。
「今日からこちらがエイト様の仮のお住まいです。すでにお荷物は運び込ませてあります」
僕の住まい?
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応接間に入り、昔CMで見たリビングで小さくなる婿養子の気分を味わってちんまりていると、筋肉の帝王がラフな格好で入ってきた。
「エイト殿、お疲れ様です!魔素のプールの一件、大活躍だったと聞きました!」
相変わらず体つきとしゃべり方が一致しない国王様。
「国王さま。僕自身はほとんど何も。バラの騎士団と魔導士のみなさんががんばってくれたおかげで」
「いやいや、実際見て、ああ、報告書を見て確認しましたので!」
地精霊と精霊女王の件は既に伝わっているようだ。
「精霊の国でクーデターですか!そのような情報は外部からは伝わってきておりませんが」
本人は家の中を見回っているので後で聞くことにする。
「討伐記録は後でギルドに行き、カードを確認していただければ詳細がわかるでしょう。魔導結石の回収も数がわかり次第手配をしましょう」
数千もの「りざーどまーん」の処理はおまかせすることになりそうだ。
肝心の家の事を聞く。
「この家はオパールと結婚してから数年間住んでいたのですが、城に居を移してから空き家にしておりましたゆえ、すこし痛んだところを直させておりまして、ようやく完了したところです」
「家をお借りしようとは思っていましたが、これほど大きい家ですと家賃のほうが」
「何をおっしゃいます!勇者さまから家賃など取れば国の威信に関わります!手狭な家で申し訳ありませんがしばらくこちらでお過ごしいただければ幸いです」
手狭?迎賓館の客間だけでも、広すぎてもてあましていたのに!
「すでに新しい家の建築も手配しております。エイト殿のご意見をお聞きした上で着工する手筈に」
こうして城とはいかないが立派な家をあてがわれてしまった。
隣に座っているシルフィール姫はぼーっとしたまま動かない。
口元がゆるみっぱなしであやしい。
ほかの女性陣は間取りなどの見学に出てまだ帰ってこない。
微妙にくつろげないままソファーにすわってお茶を飲んでいると、さっき門の前で別れたばかりのマーガレットさんが飛び込んできた!
「国王さま!た、大変です!精霊の国から緊急の知らせを持った使者が見えられました!」
マーガレットさんを追うように、小さな子供?が走ってきた。
「こちらに買い食いに出たままもどらない、うちの女王さまがいると聞いて!」
ちょうど応接間に戻ってきた精霊女王が固まる。
買い食い?もどらない?
「精霊女王さま、そちらに座ってお話を聞かせてもらいましょうか?」
僕は無意識のうちに「猛獣愛撫」の構えを取る。
勇者が住むことになった家は国王と王妃の愛の巣。
そこに姫さまと暮らすことになった勇者の運命は!
そして精霊女王が隠していた事とは。




