竜の血脈
赤いドレスの金髪ドリルさん。
竜の血を引くといわれる金色の瞳で勇者に迫る!
どうする勇者!
>今日は何事も無く終わるだろうか。
まぁフラグだよね。
迎賓館に戻ると玄関前に仁王立ちになっている真っ赤なドレスの女の子がいた。金髪縦ロールだ。セット代かかりそうだな。
年齢はよくわからない。姫さまよりは年食ってるかな。瞳は金色だ。
ちなみに姫さまは見た目は10歳、中身は14歳だ。先祖がえりで少しだけ胸元の成長がおろそかになっている。と思いたい。
「おまえが偽勇者か!」
「あの、どちらさまで。」
「偽者に名乗るのもおこがましい。が、これも礼儀だ。わたくしこそが真の勇者、勇者の中の勇者。おまえのもつ聖剣の真の継承者!」
「竜の血脈の名の下に!テスラ・ワイバーンとはわたくしのことである!」
ワイバーンって竜の劣化版じゃ(ry
オンラインゲームなんかだとブレスもそこそこ痛いし、数を相手にするのは大変そうだよね。
調教できれば長距離の移動も楽になるといわれるけど、このお嬢様の調教は無理っぽいし移動手段にも使えない。
今日はいろいろ疲れたので横を素通りする。頭の回らないモヒカンのほうが対処しやすい。
「そこのおまえ!素通りとは何事か!」
ここにおいていけばずっとしゃべっていそうだ。
「あの、ここだと目立つので客間にでもどうぞ。狭いところですが」
割と人通りがあって何かの見世物と勘違いした群集が足を止めてみている。
「エイトさま、すっかりご自宅気分ですね。よろしいですわよ。ついでに私を妾にしてください。」
ほんわかメイドさんからつっこみがはいる。
姫さまの目が丸くなる。妾という言葉は知っているのかシルフィール。
「いえ、いまのは言葉のあやといいますか。ん?いまさらっと何か」
いつまで迎賓館の一角を間借りするのも切ない。
---
「このようなもてなしで、おまえの罪が帳消しになると思うな!」
出された紅茶をうちの姫さまとちがって音も立てずに飲んでる。姫さま、口からお茶がでてましてよ。
「あのような茶番でわたくしがだませるとでも思っているのか!」
どうやらお披露目のときに柱が倒れかけたときのことを言ってるようだ。
「どうせあの赤竜車も違法に入手したものだろう。」
いえ、こつこつ働いて買いましたよ。ええ。こっちに来る前にローン終わっててよかった。
「おまえがもつ聖剣はわたくしが所有すべきもの、いますぐ返すがいい!」
非常にめんどくさいので、短剣状態の「テイルズオブドラグーン」をベルトから外すと、テスラの目の前にそっと出す。見た目はフィッシングナイフだ。
「あなたが真の所有者であるなら、この「テイルズオブドラグーン」を元に戻せるはずです。どうぞお試しください。」
テスラは目が点になっている。
「おまえはわたくしを愚弄するのか!このような短剣が!」
目の前でテイルズ(ryの擬態を解く。剣に戻れと念じると、にゅーんと短剣が伸びて元のサイズに戻る。100均で売ってるようなナイフが国宝に化けるんだからびっくりだよ。
テスラが固まっているが、かまわずもう一度短剣に戻す。
「さぁ、これで本物だとご理解いただけましたでしょう。どうぞ。」
テスラは鞘から短剣を抜くと、天高く突き上げ
「聖剣よ!われにちからを!」
しかしなにもおこらなかった!
---
しばらくおまちください
---
2時間ほどいろいろな掛け声がこだましていた。客間は吸音性の高い素材でできているのかキンキンした声を出しても割と平気だ。
その間に双子が寝てしまったので寝室へ運び、もえはモップの柄に戻した「ザ・シード」でお掃除を始め、姫さまとフィリーは魔導の自主練習に励んでいた。おたがいに手を取り合って百合っぽいね。いい眺めだ。
ほんわかメイドさんはいったんお茶を片付け、一瞬姿を消してまた戻ってきた。
僕はじっとテスラの行動を見守る。
すこし意地が悪いのだが、短剣に擬態させ元に戻せるのはたぶん僕だけだ。
双子がそう言ってたので間違いないだろう。
切りあって力試しという選択肢もあったけれど、木刀とはいえ手加減のできない相手だと怪我をさせる可能性もある。
剣の擬態ができるようになったので、めんどくさい人が来たらこの手を使おうとひそかに暖めていたのだ。
問題はその人の精神力により、非常に時間が掛かるということか。
ついにテスラが動きを止めた。
「この聖剣があれば…つぶれずに…」
テスラが騒いでいる間、ほんわかメイドさんがこっそりと手渡してくれたメモを見て事態を把握した。
テスラのおうちは傾きかけている貴族。事業に失敗し、ここ何年かは税をまともに納めていない。家計図をたどれば竜亜人らしき人が居るものの真偽は不明。税金を払うか、なにか功績をあげなければお取りつぶしになり、娘は税金のかたに国へ差し出されるという。
運がよければ城の小間使いに、悪ければ迷宮でミートシールドだ。女子も例外ではない。
ちなみにテスラの剣の腕はそこそこらしいと備考欄に書かれていた。
これだけの調査をわずか1時間かそこらでというのはおそろしい。
よく見ればテスラのドレスは割と着古された感じで、すこしくすんだ赤色になっている。ドレスを買うお金にも困っているのか。
ここ(迎賓館)に来たのは勇者の剣にドラゴンの名が入っているから、自分の家系にこじつけて勇者に成り代わり、成果を出せばお取りつぶしもなくなるだろうという、行き当たりばったりの淡い期待からであろう。と勝手に推察する。
このまま落ちぶれていくのを見るのも忍びないが、僕自身がどうこうできる問題でもない。
ほんわかメイドさんの目が光っている。
「エイトさま、救いの手を差し伸べるのですか?また女の子を増やして姫さまを嫉妬させるのはダメですよ?」
嫉妬の部分はスルーしたい!実はすこし考えがある。
「迷宮に入るならミートシールドではなく近接攻撃ができる前衛がほしいですよね。僕だけじゃ足りないでしょう。アイリスを投入するにしても鍛えないとならないですし。テスラさんを雇って働いてもらうのはどうでしょう?」
最低でも2-2フォーメーションじゃないかなと大昔のファン○ジアンを思い出しながら考える。
あのゲームにはまってビニールタイルの升目に沿って歩いた人も多いだろう。
キャラを作っては金を巻き上げ、全員にロングボウを持たせて。
古すぎてごめんなさい。
あとひとつ気になるのは瞳の色だ。竜亜人の血なのだろうか、よくみてもやっぱりきれいな金色をしている。これで逆鱗があれば完璧だが。
そのやりとりをハイライトの消えた瞳で見ていたテスラ。背徳感あふれる構図になっている。ちなみに勇者は無理やりは好きではない。
「ぐーーー」
発信源は目の前のテスラのようだ。たぶん無理をしてここまで来て食事代も無いんだろう。と勝手に決め付ける。
「とりあえずご飯を食べましょう。テスラさん、あなたが勇者と言い張るのでしたら食事の後に。」
テスラは空腹に加え、打ちひしがれて頭が回らなくなったのかあっさりと了承した。
---
割と静かな夕食。こんなことは初めてだ。
しんみりさせている犯人はもちろんテスラ。
今日はペペロンチーノである。全員で食べればにんにくも大丈夫。
双子はおしょくじセンサーにより児童的(誤字にあらず)におきてきて、ぱすたをちるちるしている。
もえはなぜかお箸で食べている。「ザ・シード」を変化させてきれいに洗ってつかっているのはひみつだ。
今度お箸を見つけたら買ってあげよう。
姫さまとフィリーはおしゃれ談義に花が咲いていた。やっぱり女の子だよねフィリー。
---
お茶の時間
メモで大体は知っていはいたけれど、本人の説明を聞く。
「父上に取り入った商人に言われるままに、森を切り開いて湿地を埋め立てて畑を作ったまではよかったのですが、収穫直前に黒い魔素が染み出して作物が全滅したのです。」
一気にしおらしくなってしまって拍子抜けだ。精一杯虚勢を張っていたのだろう。
そもそもの間違い(僕的に)はテスラの父親がろくに調査もせず新しく畑を開墾し、一気に作付けまでやってしまったことだろう。
よせばいいのに、翌年も同じことを繰り返すという悪循環。
いまでは黒い魔素の巨大プールが出来上がっているという。
「ところで、魔素について調査の依頼はされたのですか?」
「調査票は何度も出しましたが、一度も返事は無く、王都に足を運んで直談判しましたが格の低い貴族のためか門前払いを」
タヌキ大臣の顔が浮かんできていやん!な顔をしてしまう。
聞けば馬車で2日くらいの場所だそうだ。そんな近い場所で魔素のプールを作って気がつかないというのも変な話だ。
「商人が言うには新種の作物のため、誰にも知られてはならないからと周囲に魔導結界を張り隠蔽していたのです。」
肝心の商人はダメになった畑から何かを取り出し、どこかに消えたという。
「もしかすると世界の危機にも関係しているのかもしれないよ!」と誰かが僕に耳打ちしている。振り返っても誰も居ない。
たぶんそのへんを漂っている遊び人精霊だと思うけれど、知らないと幻聴としか思えない。
ほんわかメイドさんはいつまで経っても本名を教えてくれず、呼びにくいので先ほどソネッタさん(仮名)と呼ぶことを了承してもらった。1週間ずっとメイドさんと呼んでいたのです。
ちなみにほんわかさんとか目つきのするどいさんは僕の中での識別符号です。
「ソネッタさん、ギルドの調査依頼が無くても調べに行くのは可能ですか?」
「エイトさま、調査そのものは許可が無くてもできますが、費用は自己負担になってしまいます。今回のような大量の魔素を放置するのは危険です。国王さまにお知らせして至急調査隊を派遣しましょう。エイトさまも同行されるということでよろしいのですね?」
「ええ、そのつもりです。」
かくして、2日後に出発する予定になった。城の外に出るのは初めてなのですこしわくわくしている。
ちなみに勇者の剣(件)はうやむやになった。よかった。
---
かぽーん。
いろいろと疲れたので命の洗濯である。
テスラにも入浴を勧める。ちなみに泊まる場所も確保できなかった(いま城内はどんちゃん騒ぎ中)というので調査出発まで客室に泊まってもらうことにする。
バミューダは1週間でループするようだ。ちなみに洗いざらしの無漂白綿である。
がらがらがr
ようやく普通に入れるのか!
なにか仕掛けは無いか!洗い場の隅でがたがた震えて体を洗う準備はいいか!
目の前をお尻の形がよい全裸の女性が横切っていく。いちおう大事な部分は全年齢的にタオルで隠している。
「テスラさん!水着!水着忘れてます!」
え?という感じでこちらを振り向くテスラ。
「見せて減るものではありませんし、わたくしは大丈夫ですわ?」
さっきのしょんぼりはどこへやら、普通に戻った。
いや、こちらが大丈夫ではないので!
「いちおう決まりらしいので、なにか身につけてください!」
しぶしぶ女子更衣室にもどるテスラ。おしりをふらないで!
あとの懸念はフィリー。トップスなしは目の毒だ。
こちらは心配しすぎたようで、姫さまとおそろいの白いセパレートでやってきた。
「お兄さん、この水着どうかな?」
天然の上目遣いでこちらに話しかけてくる。いやぜんぜん大丈夫じゃなかった。
たぶんソネッタさん(仮名)の入れ知恵だろう。
姫さまも真似してるけどこっちは養殖の上目遣いだ。何が違うんだろう。
「二人ともかわいいよ」
笑った顔は二人とも天然でした。
その後、双子ともえにも上目遣いをされて、最後に。
「エイトさま、私の水着はどうですか?」
ほんわかメイドさん改めソネッタさん(仮)がビキニ山脈を強調しながら上目遣い。
このまま倒れてもいいですか?
---
今日は雷風呂に入ってみる。
とはいえ魔導耐性があるのかあまり感じないので普通の風呂に入りなおす。
となりにテスラが来た。さんざん怒鳴ったのを謝りにきたという。
水に流そう。風呂だし。(うまいこといった気がする。)
気になっていた竜の血が入っている件で、テスラに質問をする。
「つかぬことをお聞きしますが、テスラさんには「逆鱗」ってあるんですか?」
はっと表情が変わる。金色の目がカッと開いて殺気を感じる。
「な、なななななななななななぜそのことをご存知なのですか!」
地雷を踏み抜いた気がします。生きていたらまたあおう!あでぃおす!
逆鱗に触れてしまったようです。




