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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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番外編:時空(とき)を渡る思い

勇者の元の世界でも騒動が続いています。

今回は勇者の勤め先の一こまです。


---

勇者「あのー」

???「ひみつじゃ」

勇者「いや、ひめたべラジオに出させてもらえるのかなと」

???「きゃっかじゃ」

日本と思われるこの国の真ん中あたりにある県。

お茶の生産でおなじみの地域にある、中小企業。


地上近くにテナント、中層にオフィス、上層階は割と高級なホテルという高層複合ビルにあるオフィスフロアの一角。


今日は天気がよく、山頂に掛かった雲が白く輝く日本一の霊峰が間近に見える。最上階のペントハウスはここよりもさらに眺めがいいだろう。

世界遺産に登録されてから注目度はさらにうなぎのぼりである。

うなぎといえば、主人公が通っていた小学校の給食でうなぎの骨を加工したおやつが出たのも懐かしい。


話がそれたが、ここは主人公の勤め先。本人の席には違う人物が座っている。


---


「ひなちゃん、益田の抱えてたプロジェクトの資料これで全部?」


「はい、課長。」


努めてあかるく返事をする。


益田先輩が地盤の大崩落に巻き込まれたらしいと連絡があってから数日。


ひなは先輩の進めていたプロジェクトの再チェックをまかされていた。

だれかがいなくなろうと欠けようと客先は待ってはくれない。


---


直径50メートル、深さは数百メートル以上。以上というのは測定する手段がなく、光学や音響、電波などでの深度測定は不可能、500mの釣り糸に小型カメラをつけてたらしてもなお底に到達することはなかったからだ。(糸を引き上げるとカメラが消えていたのは公表されなかった。)

国道下のアンダーパスとその上の構造物を巻き込んでそこは「消失」した。

その近辺で起こっていた地盤沈下とはスケールが違っていた。


一帯は封鎖され、警察が24時間監視している。

正確には警察の制服を着た政府が派遣した人間である。


崩落の起きる直前、先輩の車がアンダーパスを通るのを、防犯カメラが捉えていたと警察から連絡があった。

家族が運転手の特徴やナンバーを確認し、まず間違いないだろうという結論に至ったという。

現在は他にも巻き込まれた人や車がいないか、近辺の聞き込みや防犯カメラの映像を調べているという。


行方不明が判明した翌日、同僚と自宅をたずねると先輩のご両親は憔悴し、幼い妹さんは泣きじゃくっていた。


ひなはショックで3日ほど寝込んでしまった。ずっとおかしな夢を見てうなされた。


先輩には少なからず会社の同僚に持つ以上の感情があったのを改めて自覚する。


4日目になんとか気持ちを切り替えて出社できた。


課長から任されたのはプロジェクトの進行状況のチェックと引渡し資料の作成だ。

すでに完成間近で、一部は引渡しが終わっている。


整然とまとまったファイルやデータ。

以前の先輩は割と作りちらかし気味で、ひなが一生懸命整理をしていたのだが、今回のプロジェクトは何故かきれいに整理されていた。

まるで自分がいなくなることがわかっていたかのように。


実際、ひなのやることは共用ストレージからプロジェクトのデータをコピーし、資料を箱から出して目を通し、まとめるだけだった。

半日ほどで出てきた大量の資料を見て、課長も同じようなことを思ったようだ。


「そういえばあいつ、何か言ってなかったか?休憩時間、ひなちゃんとはよく話をしていたようだから何か知らないかと思って。」


「いえ、話すといっても雑談程度でしたので。」


実際、雑談といってもひなが一方的に話しかけ、それに益田が答えていただけだった。

自分の知らないことを先輩は全部知っている。ひなにそう錯覚させるくらい益田の知識は多かった。


先輩は社内では仕事に必要なことしか話さない。だれとも気さくに話す課長ともあまり話をしなかった。特にひな以外の女子社員には用件だけ伝えてふっといなくなってしまう。人当たりが悪いとも言われていたが、いちおう成果は出すので評価は悪くなかった。

なので雑談とはいえ、仕事以外の話をするひなが情報源となると思ったのだろう。

資料の準備がよすぎるので、課長は先輩があの崩落には巻き込まれず、単に失踪したと思っているようだ。ひなもそう思いたい。

ただ、仕事は順調に進んでおり、それが原因とも思えない。

ひなに別の理由が無いか聞き出せればと課長は思っていた。


課長は自分の新人時代、突然居なくなった同僚のことを思い出していた。

その同僚は半年くらいしてひょっこり戻ってきたのだ。

失踪中はいわゆる「遅れてやってきた自分探し」のために世界各地を回り、突然会社にやってきて退職届を出し、その後は自分で会社を興して手広くやっているというとんでもない自由人だ。

退職届は「出し忘れてました」としれっと言ってのけた。上司は怒鳴りつけようとしたが、隣には身重の女性がいたので不発に終わった。

滞在先で懇意になりそのまま結婚したという。

時々ネット上の記事でも顔を出している。当時の上役たちはそれを見るたびにゆとり世代のこいつが!みたいな顔をしている。


失踪の件で何ヶ月も悩み続けた課長は、その教訓から、同僚や部下には極力話しかけ、なにか前兆をつかめば対処するようになった。


しかし益田からはその前兆を見出せなかった。自分の落ち度と思うのがしゃくで


「あいつ、帰ってきたらもっときつい仕事をおしつけてやる」


などと行き場のない怒りをぶつける課長。


---


「っくしゅ!」

そのころ、双子ともえを風呂に入れていた勇者がくしゃみをした。

「あるじさま、かぜをひかれたのですか?」

「「ひえたのなら あったまるの」です」

勇者は勤務先が修羅場なのを知らず、双子から湯攻めをくらっていた。

シルフィール姫も参加してお湯かけ祭りになっている。

課長やひながこれをみたらたぶん発狂するだろう。


---


まだ体調が完全に戻らず、早めに会社を引けて、自宅に戻ったひな。

ひなの両親も益田のことを心配している。学生時代も浮いた話の無かった娘が初めて夢中になった異性が益田なのだ。

本人には自覚は無いが、夕食のときの話題に益田が出ない日は無い。

あこがれであり目標でありよき理解者であり。

母親はひなと近所のショッピングセンターに出かけた際、偶然益田と遭遇していた。

会ったのがゲームコーナーというのがなんともであるが。

妹とレースゲームに興じる益田の様子と娘から聞かされる情報とのギャップに驚いたりもしたが、話をしてみて悪い青年ではないことは知っていた。

父親はまだ見たことの無い益田にあまりいい印象がなかった。

しかし今回の行方不明事件で見方が変わっていた。

娘が3日も寝込むほど思っていた相手だ。自分の考えていた不埒な男とは違うんじゃないかと父親は思った。


ひなは自室に戻ると先輩から借りっぱなしだったアニメのBDボックスを手に取る。

それは未来を切り開き世界を変える少女の戦いの物語だという。

不釣合いな大剣を持ち、幼い女の子を従えてドラゴンのような怪物と戦う様子がパッケージに描かれている。


先輩がいなくなる2日ほど前、無理を言って借りてそのままになっていた。

先輩が夢中になるアニメの内容を知りたかった。ただそれだけ。

ボックスと一緒にひながよく口にするお菓子が入っていた。女の子への気遣いに疎い先輩にしては珍しいと思った。



「先輩といっしょに見たかったな・・・。」


自然と涙が溢れる。


ひなは食事もそこそこに入浴し、ベッドにもぐりこむ。

明日でちょうど一週間。


---


気が付くとひなは真っ白な部屋にいた。

目の前には以前、先輩が見せてくれた黒服のドールの写真によくにた女の子がいた。

腕には分厚い本のようなものを抱えている。



「おぬし目がまっかじゃの。泣いておったのか。そんなに思いつめていたとは知らなかったのじゃ。こちらから何度か呼びかけておったのじゃが、ようやく呼び寄せることができたわい。ゆるせと言っても無理じゃろうが謝っておく。」


いきなりの謝罪の言葉にあわてるひな。


「あなたは誰ですか!ここはどこなんですか、わたしどうしちゃった」


「まぁおちつけ娘。わしは「預言書」おぬしが心配している思い人の近況報告にきただけじゃ。」


その真っ黒な姿から死神を連想するひな。自分の気になる人といえば先輩しかいない。


「もしかして先輩死んじゃった・・・」


「心配するな、若干死に掛けたりもしたがあやつはピンピンしておるぞ。」


「娘の住む場所とは異なる世界におる。向こうでは勇者として働いてもらっておる。」


「異なる世界?勇者?」


黒服の女の子は水晶球のようなものを取り出してひなに見せる。


そこには先輩が見知らぬ女の子にハンバーガーを食べさせ、気絶してベッドに運ばれて女の子が覆いかぶさり、先輩の車が暴走し、二人の子供に抱きつかれて気絶し、そのあとたくさんの女の子に囲まれてたのしそうに食事をしているシーンが悪意のあるダイジェストで映し出された。


ひなの悲しみが徐々に怒りに変換される。


決定的だったのが次だった。


例のおふろのシーンがじっくりと流れたのだ。

ハンバーガーを食べさせていた女の子に背中を洗われ、鼻の下をこれでもかと伸ばしている先輩が。

湯船の中で女の子の肩に手を回して(ひなにはそう見えた)ラブラブな雰囲気になっている先輩が。


「先輩・・・わたしが・・・こんなに・・・しんぱ・・い・・・して・・」


ひなは手のひらが真っ白になるまで握り締めていた。

一時はもう会えないとあきらめていた先輩が、どこの誰とも知らない子と仲良くしている姿なんて見たくなかった。


目からぼろぼろと涙がこぼれおちる。


先輩が他の女子社員と話をしていてもこんな感情は芽生えなかった。


今、ひなは猛烈に嫉妬している。本人は気づいていない。


「おっとこれは見せてはならんかった」


黒服の女の子がにやりと笑う。くすぐり倒され「おもらし」させられた勇者への報復だ。


「娘よ、つづきをみるのだ」


顔を上げたひなの目の前には別のシーンが映し出される。

薄暗い通路で、先輩が身の丈2倍はありそうな異形の土人形を相手に、剣を振り回して大立ち回りをしている。

何度弾き飛ばされても果敢に突き進んでいく。

先輩の後ろにはさっきの女の子がいた。

土の人形の狙いは女の子で、先輩が守っているのだろうか。

ひなの失敗をかばってくれた先輩と重なる。


「どうじゃ、惚れ直しただろう。あやつはなかなかやりおる。」


先輩の持つ剣が真っ二つに折れ、土人形がここぞとばかりに振りかぶったところで映像が切れる。


「先輩!だめ!しんじゃだめ!えいとさん!」


半狂乱になるひな。


ふと、隣を見るといま呼んだ本人が立っていた。


「あれ、メガネロリちゃん 一週間たったの・・・ひなちゃん?」


「先輩!」


ひなは勇者にしがみつく。


勇者は「預言書」をにらみつける。


珍しく激高する勇者。


「まさかひなちゃんまで呼んだのか、そんなことはゆるさな」


「まぁ待て、ここはおぬしの元の世界でも向こうの世界でもない。「境界の地」じゃ。そういえば説明してなかったの。おぬしの世界と向こうの世界は互いに行き来はできぬが、境界の地ならほんのわずかな時間であるがいつでも会えるぞ。」


「この娘が嘆き悲しんでおったから、おぬしの「武勇伝」を聞かせたあと、面会させてやろうとおもって呼んだまでじゃ。」


ひなは勇者にしがみついたまま話す。


「先輩がいなくなってみんな心配していたんですよ。それなのに・・・あんな・・・お、お風呂でちいさな子と何を!」


「メガネロリちゃん、いったい何を見せたんだ!」


「先日のしかえしじゃ。というかメガネロリとはなんぞや。」


「メガネを掛けたゴスロリ服の女児だからメガネロリだ!いや、何の仕返しだ、一週間後にとは聞いたがそれ以外覚えていないぞ。」


ゆうしゃは、みにおぼえがない!


「あぁ、記憶を消したのをすっかり忘れておった。年はとりたくないのぅ。」


遠い目をする「預言書」


「積もる話もあるじゃろうが、まずは勇者の報告を聞こうかの。ということで、娘よ、また日を改めて呼ぶことにしよう。しばしさらばじゃ。」


「そうそう、ここでの話は内密にな。」


ひなの目の前が真っ白になる。


---


飛び起きるひな。ものすごい寝汗をかいている。


手のひらを見ると爪のあとがくっきりとついてた。そして、なにかの布の切れ端を握り締めていた。

広げてみるとトロピカルフラワーらしき柄の半分ほどが見える。

先輩が社員旅行の時に着ていたアロハシャツの柄に似ている気がして、机の上にかざっていた旅行先で撮影した集合写真を穴が開くほど見る。


あれは夢じゃない。先輩が生きている!

足が震える。


この事を先輩のご両親や妹さんに伝えたらどんなに喜ぶだろうか。


しかし、それは誰にも伝えてはいけないと黒服の女の子に釘を刺された。

もししゃべってしまったら先輩の命があぶない。そんな気がする。


---


先輩から借りたアニメを見ることにした。

たぶんまた会える気がするから、そのときに感想を言おう。


布の切れ端はいつも身につけているお守り袋に入れた。


ひな自身がこの騒動に巻き込まれるのも、そう遠くないことなど知る由もなく。


---


勇者とすったもんだしたあと「向こう」へ帰し「境界の地」から戻った「預言書」は一人になる。

気が遠くなるくらいの時間ここで未来を予言し、たった一人で過ごしてきた。

彼女には正式な名前は無く、以前はIDと呼ばれる英数字の組み合わせで呼ばれていた。

16th_BlackMoon

今のところ、これ以上の情報は開示されていない。

ちなみに3サイズは**(ERR:Connection Lost)


※サーバ再接続までしばらくお待ちください※

???「わしのすりーさいずなど、どの層に需要があるのじゃ。数値だけは辛うじて押さえられてよかったわい。まったく」

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