エンドレス・カーニバル
晩餐会とは名ばかりの集団見合い。ショタもいるよ!
が始まります。
打ち合わせが終わったころ、ほんわかメイドさんがお客様をつれてやってきた。
ルラーニャのご両親だ。
怪我の件も伝えておく。
ルラーニャは正義感が強く、村でも年下の子をいじめるガキ大将とやりあって生傷が絶えないという。
あまり無茶をしないよう釘を刺しておいた。
ご両親はアロハシャツの僕を勇者の代理と思ってたらしく、ルラーニャがいくら説明しても「またまたー」みたいな感じで取り合わなかった。
「勇者さま!またお会いしましょう!」
「ルラーニャ元気でね!」
双子ももえも名残惜しそうである。
またお会いしましょうがフラグになることなど知らず。
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晩餐会という名のショー(見世物)が始まった。
迎賓館の一番広いホールが割と埋まっている。
貴族と着飾った子女の洪水である。
僕はいつもの貴族服に着替え、国王さまと王妃さまのそばに立つ。
姫さまは僕の左に、双子は見栄えのするドレスにかぼぱん、もえはなぜかメイド服を着て僕の後ろにいる。
おこさまたちは途中からいすに座らせた。ただの挨拶なのにかれこれ2時間くらい応対しているのだ。
いつ果てるとも知らない人の波。もう3回くらい来ている貴族もいる。隣につれている子は違っているが。
そう、勇者への娘や息子の売り込みなのである。
なぜか紹介は1回につき1人というわけのわからない暗黙ルールが制定されてしまい、何人も子供を連れてきている貴族が並びなおしているのだ。
どんな教育を受けたのか、得意な剣術、魔導のスタイルetc。
娘が勇者と共に戦い、あわよくばお手つきになり子供をもうければその貴族の地位は磐石のものとなる。
息子にしても戦果を挙げればその後の出世は約束されたも同然。
つれてこられるのは15歳くらいから25歳くらいの娘さんが多い。
中には200歳くらいのエルフ族もいたのだが、どうやら腐った趣味の方のようで名乗りもそこそこに、いきなり英雄の掛け算の話を出されて驚いた。どこにでもあるんだ。
そして今の貴族、おしめも取れていないおさな子をつれてきて何を考えている(ry
国王さまとお妃さまはいかにもすまないといった表情でこちらを見ている。
会場の片隅で親に振り回され疲れた子供たちが固まって遊んでいる。
双子はそっちに行きたそうなので、遊んで来い!というとぴゃーっと走っていった。
「もえはどうする?」
「あるじさまといっしょにいます」
聞くまでも無かったが、この人波が掃けたら一緒に遊びにいこう。
だれかが司会進行役にメモらしきものを渡す。
「えー、ただいまを持ちまして、勇者様へのご挨拶を締め切らせていただきます。すでにご挨拶は一順以上されていると思われますので、会食中にお連れ様の紹介をされるのはご遠慮願います。」
誰一人不満を漏らすことなく、蜘蛛の子を散らすように列が消失する。仮にも国王の前でそのようなことを口走ればどうなるか、貴族もわかっているようだ。
ありがちな○○○完売で物販の列が崩れるときのような焦燥感は無かった。(謎)
僕がこの世界にいる限り、いつでも売り込みはできるわけだし。
「もえ、何か食べてから遊ぶか?」
「はい、あるじさま」
食べるというのを聞きつけたのか双子が戻ってきた。
もえが給仕をしたいというがテーブルの位置が高すぎるので、僕が取り分ける。
3人をテーブルに着かせ料理を運ぶ。
お皿を持って戻ると1人増えていた。姫さまも手伝ってくれるようだ。
ん?食べるの?ちょっと手伝って。
双子ともえにごはんを食べさせていると、だんだんとよその小さい子供が集まってくる。
貴族の親同士が腹の探りあいをしていて小さい子供たちはのけものにされてしまったのだ。
子供たちを座らせ、給仕に徹する。
貴族服の上着を脱いで、姫さまと一緒に適当に食べ物を持ってくる。
1人だけ手伝ってくれる人がいた。
さっき挨拶をしていたときに見かけた腐った(失礼)エルフのおねーさん。シルフィール姫より明るい感じの金髪に緑色の瞳。胸元の平地は引き分けといったところ。
「先ほどはどうも。ベルリネッタよ。ベルでいいわ」
「エイトです。よろしく」
「さっきは変な話をしてごめんなさいね」
「父上にいきなりつれてこられて、勇者を誘惑しろというので趣味の話をして父上を困らせるつもりで。でもあなたはまじめに聞いてくれた。」
「いえ、大変興味深いお話でした。」
双子ともえがこちらを真剣な目で見てる。
「あと、挨拶に行ったとき後ろにかわいらしい子を3人もはべらせていたから、どんなひどい人なのかと思ったけれど、こうやって子供の世話をしているのを見てすこし考えが変わったわ」
「あなたならやってくれそう。風の精霊がそう言ってる気がする。もしそのときが来たら私にも手伝わせて」
ベルはそういって笑った。
「そのときはお言葉に甘えさせてもらいます」
姫さまがぷーっと膨らんでいるので、ほっぺをかるくつついてあげた。
数分後に異変に気づいたのか、会場の責任者と思われる男性があわててやってきて、お子様たちへの給仕から解放された。
その後すこしだけ料理をつまんで会場の隅に移動し、双子やもえ、ほかの子と遊んでいたせいか、ベル以外からは誰にも話しかけられることが無く(たぶん子供の世話を手伝わされると思ったのだろう)そうこうしているうちに晩餐会は自然にお開きとなった。
大臣の使者らしき人間からメモを渡された。夜中に暴れん坊ローブが現れると予告した場所が記されている。
念の為にマーガレットさんに夜中の件を聞いてみた。
バラの騎士団は別として、ほかの兵士に夜中の出動要請は出ていないという。
大臣が兵士を用意するといったのは嘘なのだろうか。もしくは私兵がいるのか。
あとすこしで判明する。
迎賓館のホールから自室に戻る。
姫さまには仮眠をとってもらうことにする。
双子ともえは時間が遅いのでそのまま寝かしつける。もえは心配そうだったが万が一のときは起こすという約束をした。
もえを本当に起こしたらこの辺一帯は消し飛びそうだが。
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しばらくの間封印していたローブを着る。
武器は「なまくら改」をシルビアさんから受け取っている。
姫さまとマーガレットさんをつれて闘技場に向かう。
しかしややこしいことになった。だれかにローブの代役を頼もうかと思ったけれど、危険なのでやらせるわけには行かない。
一度ローブのまま出て行って、正体を明かすことにした。
のだが。
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ふたを開けてみれば。
そこには多数の「暴れん坊ローブ」が出てくる最中だった。
背格好はばらばら、得物もさまざま。衣装も凝った手作りの黒いローブから、その辺のカーテンをひきちぎってきたようなスタイルと多種多様。
30人くらいはいるだろうか。
対するならずもの兵の数は50人くらい。大臣の私兵とは思えない身なりをしている。
暴れん坊ローブが1人だと思っていたのか動揺を隠し切れない様子だ。
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あとから聞いた話では、ローブのうわさに心動かされた腕に覚えのある冒険者が、ローブだけに腐敗兵士の退治を任せるのは人道に反するとばかりに駆けつけてくれたという。
集まった兵士も大臣の手先ではなく、ローブに悪事を穿り返されるのを恐れた別の腐敗兵士だったそうだ。
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その中でひときわ異彩を放つローブがいた。
「でけぇ」
やばい、素が出てしまった。
ローブでは隠しきれない筋肉の守護神である。
「お・・・おとうさま」
シルフィール姫が握りこぶしを作ってぶるぶると怒りを隠しきれないでいる。
不確定名「筋肉ローブ」は手にしていただんびらを闘技場の床に「どーーーーーーーーん」と叩きつける。
何かの術なんだろうか。兵士は縮み上がり座り込んでしまった。
物陰からバラの騎士団が現れると、手早く拘束する。
拘束された兵士はバラの騎士団により闘技場の外へと連れ出された。
これで終わったかなと思ったら。
闘技場の扉がずずずずずずずずと音を立てて開く。
「勇者殿、準備に手間取りまして。おや、勇者はまだ来ないようですね。先にローブを片付けてから勇者はゆっくりと始末をしましょう。」
例の大臣が出てきた。その後ろには人の背丈ほどの異形の土人形が数体。
大臣の言う兵とはゴーレムだったようだ。
ローブが沢山いるのに気づいた大臣は一瞬戸惑った様子だったが
「ローブの数が多いようですが、誤差の範囲でしょう。」
ひときわサイズの大きいローブが口を開く。
「ラクーンよ、そのゴーレムはどうしたのだ。わが国で作られるものとは違うようだが。」
不確定名「筋肉ローブ」は大臣にだんびらを向ける。
大臣は筋肉ローブの声にうろたえた。
「国王! まぁいい、おまえもいなくなれば私がこの国を牛耳れる。あんな勇者ではなく私が世界を救うのだ。このゴーレムで!」
ギャル風に言うと超うろたえている!
「ほかのローブもまとめて倒してやる。おまえらのせいで計画が台無しだ!」
ゴーレムは確かに強そうだった。相手が国王さまで無ければ結構戦えたのかもしれない。
1体目は土とは思えないほどの速度で切りかかるも、だんびらでまっぷたつにされた。
2体目と3体目は同時に切りかかるも片方は蹴り飛ばされて壁にめり込み、もう片方はだんびらで叩き潰された。
4体目がけん制している間に5体目が大臣を抱えて脱兎のごとく走り出す。
4体目は足止めの役を果たしなすすべもなく土に返った。
ほかのローブたちが5体目と大臣の後を追う。
大臣はなにか捨て台詞を残していたが聞き取れなかった。
出て行くタイミングを失ってしまった。とりあえず「筋肉ローブ」に一声かけてから帰ることにした。
「この国の問題は私の責任。勇者殿には世界を救っていただく使命があります。情報だけはお伝えしましたが、このようなことでお手を煩わせるのは不本意と思い」
「おとうさま!危ないことはやめてください」
シルフィール姫が抗議している。
「すまなかったなシルフィール。おまえに何かあったらと思って」
姫さまがぐぅと言う。リアルで「ぐぅ」と言う女の子を見るとは思わなかった。
「危ないことはすこしひかえてください」
姫さまのトーンが少し下がった。
まだばたばたと騒がしい闘技場を後にして、国王さまと一緒に城に戻った。
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国王さまと別れ、城から迎賓館へもどる地下通路にて。
姫さまと二人、てくてくと進む。
そういえば二人っきりになるのは最初に会った時以来かな。
まだ1週間も経っていないと思うけどずいぶん昔に感じる。
あらためて何か話そうと思っても出てこないものだ。
仮眠したものの、姫さまは眠そうだ。
歩きながら寄りかかってくるので、柄にも無く肩を抱きよせてみたり。
時々はなみづまみれにされるけれど、自分を頼ってもらえるのはうれしい。
で、完全に油断していた。
「ここで張り込んでいた甲斐がありましたよ」
目の前の扉が突然閉まる。
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!
隔壁が落ちる音が響き渡る。
地下通路に缶詰にされた。ここはシェルターでもあり、侵入した賊のためのトラップでもある。
今の状態は間違いなく後者だ。
腐れエルフという字面はどうかと思いましたが、長く生きているといろいろとやりたくなるのでしょうか。
勇者はいまのところ主人公としては働かせてもらえないようです。
13/8/6 3:00
typoを修正しましま。




