勇者と呼ばれる者(後編)
「ひめたべラジオ第一回放送」
ほ「記念すべき初回放送は「預言書」さんとほんわかメイドでお送りします。」
ほ「さっそくですがおたよりを紹介しますわねー。」
ほ「ひめたべラジオ放送開始おめでとうございます。さて質問です「猫耳女児は何かの伏線なのですか?」 異世界在住のペンネームゆうしゃさんより。」
預「今は教えられないのじゃ。わしの「目」がそう言っている」
ほ「預言者さんの右目が青く光っています!すいこまれそう!ところでどうしてだめなんですか?」
預「だめなものはだめじゃ。あやつのためにならん。」
ほ「あらまあ。それではまた来週!」
猫耳女児が目を覚ました。
若干頭に血が上りかけて、放置もできないので連れてきてしまったけれど家族が心配しているだろうなぁ。
「あの、ここは?」
ソファーの上できょろきょろとあたりを見回す猫耳女児。
「預言書否定派」のおっさんに突き飛ばされたときにできたと思われる擦り傷ができている。
ほんわかメイドさんにお願いして、傷の手当をしてもらう。
「ここはお城のそばにある迎賓館の中だよ。僕はエイト。君が車列の前に突き飛ばされたのを黙ってみていられなくてここまで運んだんだ。」
「あたしは、えっと私はルラーニャといいます。助けていただいてありがとうございます。抱き起こしていただいたあたりまでは覚えているのですが、そのあとのことが思い出せなくて。あの、勇者さまですよね?」
「一応勇者です。」
ルラーニャはふぎゃ!っと驚いて、ソファーから猫のような感じでジャンプしようとするのでがしっと肩をホールドして座らせる。
「もえ、おみずをもらえる?」
「あるじさま、どうぞ」
もえから水の入った木のマグカップを受け取ると、ルラーニャに飲ませる。
「ルラーニャ、今日は誰かと一緒に来たの?」
「両親や親戚の人たちと勇者様の式典を見に来ました。」
「お城の前で柱が倒れそうになったときにみんなとはぐれてしまって、探していたら勇者様にひどいことを言う人たちがいて」
「あの柱を勇者様が戻してくれたのを見ていたので、つい大きな声で」
ちょうどいいところにマーガレットさんがきた。バラの騎士団の人もいる。
とはいってもこれだけの混雑で迷子の案内とか無理だよなと思いつつ頼んでみる。
バラの騎士団の人が答えてくれた。
「今回の式典で、子供はおろか大人まで迷子になっておりまして。予想されていたことなので城内の各所に案内所を設置しています。」
「そちらのお嬢様も案内所に登録をしますので、一時お預かりしてもよろしいですか?」
不安そうになるルラーニャ。
そういえば「深緑の慈悲」を宝物庫に返すんだった。端的に言うと大きすぎて置き場所がない。
「ルラーニャ、僕も一緒に行くよ。」
みなさんでぞろぞろと移動する。
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双子と姫さま以外は宝物庫の前で待ってもらい、その間に「深緑の慈悲」を台にもどし、置きっぱなしだった服を着る。
防具用のインナーは暑苦しいので脱いでしまう。
そしていつものアロハ(ry
案内所の本部に向かう。
ここで登録をすると、城内に何箇所かある案内所に掲示された石版にそのまま表示されるらしい。
当然、ほかの案内所で登録された情報も共有される。仕組みはよくわからない。
双子に聞こうかと思ったけど、魔改造されてはかなわないのでやめておく。
名前と出身の村、保護者や同行者の名前、預かっている場所を登録し、それを探しに来た人が見て、預かっている場所まで引き取りに行く。
本部前も新たに登録される子や親が見つかって帰る子でごった返していた。
こってり絞られている大人もいた。どうやら踊り子に鼻の下を伸ばしてはぐれたお父さんのようだ。
娘ががみがみやっている。将来、あの娘の夫となるものはさらにおぞm(ry
ルラーニャの登録をすませ、迎賓館に戻ることにする。
乗りかかった船なので、ルラーニャの面倒を見ることにした勇者。
昼ごはんがまだだったのを思い出し、ほんわかメイドさんに頼んで軽食を用意してもらった。
もえは僕に飲み物を運んでくれたり、片づけをしたりと忙しい。
もえは何かしていないと落ち着かないようだ。自分をおいてもらうための対価を払わないと、また置き去りにされるかもしれないという心理が働いているのかもしれない。
あの着物だとちょっと動きづらそうだ。
ほんわかメイドさんに尋ねてみた。
「あの、つかぬ事をお聞きしますが、もえのサイズにあったメイド服って」
ほんわかメイドさん、いま何もない空間からメイド服を出したぞ。
こんなこともあろうかと。と言いそうで怖い。
双子も着たいのか、目が輝いている。
一着しかなかったメイド服が一瞬で三着に増えた。マジシャンみたいだ!
メイドさんは僕に正体を見破られたのがくやしいのか、どうにかして驚かそうという感じである。
とりあえず「おおっ!」と驚いて見せた。
ここに黒髪おかっぱメイドと銀髪双子メイドが爆誕した。
のちに「美幼女メイド四人を引き連れしもの」というありがたくない二つ名ができた。
四人目は・・・お察しください。一国の姫さま(ry
夕方から晩餐会らしい。とりあえず国王さまの横に立って、貴族に顔を見せるだけでいいといわれた。
それまでは時間があるので、マーガレットさんと式典の最中に石柱が倒れた件と夜中の「らいすぼーる」プロジェクトについて話をする。
柱の倒壊は人為的な線が濃厚だという。
幸いけが人が出なかったことと、あそこでお披露目を中断してしまうと仕掛けた側の思う壺になるので、そのまま続行したという。
僕が柱を戻した後車を取りに行っている間に決まったそうだ。会場の雰囲気に飲まれてしまってそこまで頭が回っていなかった。
ちなみにお披露目の後に柱の根元を調べたところ、いくつもの不自然な亀裂がみつかったという話だ。
「断定はできませんが「預言書否定派」の仕業ではないかと」マーガレットさんが言う。現在も調査中なのだそうだ。
ルラーニャをつきとばしたあの太ったおっさんの顔がちらついて嫌だ。
「らいすぼーる」は簡単に言ってしまえば、「暴れん坊ローブ」のうわさを目当てに倒そうとやって来た兵士を片っ端から捕まえるだけだ。
場所も押さえてもらって、バラの騎士団のみなさんに捕縛をしてもらうことで打ち合わせは終わった。
大臣はおそらく晩餐会で接触してくるだろうから、そのときに適当に話をしよう。
巨大な柱をささえて「ここは俺にまかせて先に!」とかダンボールに入っていない猫耳女児を拾ったりとか、勇者の毎日は非常に濃密です。
柱を直した後、本来であれば国王に危険だと進言すべきでしたが、なぜ勇者が言わなかったのかというのも気になります。
晩餐会と「らいすぼーる」でひともんちゃくあります。




