知人の結婚式の日程を気にする勇者
地上波放送が夜景に切り替わり、しばらく眺めていると姫さまから電話が。
それもビデオ通話だ。
『勇者さま!大変です』
オパール王妃さまとユークレスさんの後ろに山のように積みあがったフィギュアの映像が。
『こんなにたくさん持ち帰れるのでしょうか?』
「夕べの食玩もけっこうな量ありましたし、なんとかなりそうな気はしますが…」
それにしてもここまで緩かったかなクレーンの設定。
『エイトさま。お屋敷に置いていただいたくれーんげーむで練習を…』
姫さまの通話にオパール王妃も映り込んできた。
お屋敷のクレーンゲームは何のギミックもない本当に掴むだけの物なのだがあれで練習になるのだろうか?
プライズコーナーはフィギュアの箱の重心を見極め、いかに回転させるかが鍵となる。
アームパワーマックスでもそこまで難易度低いとは思えないのですが。
後はオパール王妃のスキルが元々高いというのもあるかもしれない。
ユークレスさんもかなり積み上げていますね。どうみても同じ種類のフィギュアを。
「火球の観察が終わったら見に行きますので…」
その頃にはもっと増えて居そうな気がしますが。
「益田!」
姫さまとのビデオ通話を一旦切ったところで社長が声をかけてきた。
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「今夜は割と早かったですね」
昨晩は30分ほど待たされたのだが、今日は10分ほどで出現した火球。
もう出てくるのが当然といった感じで見ているのだが、これは異常事態。
毎日のように何かしらのメッセージを送ってくるからには地球側でも異変が起きているのかもしれない。
解決すべき事が増えるのも大変だし、地球側には直接手を出せないのでどうしたものか。
社長はヤマさんに録画の状態を尋ね、自らもビデオカメラを取りつけた三脚を立ててモニタに映った火球の動きを追っている。
ここのモニタ、ビデオ出力が無いんですよね。
一応録画機能はあるのですが、録画形式が不明なのでデータが持ち出せない。
地球からインストールしたビデオカメラで画面を撮影するしか方法が無いのだ。
以前、ハマトーメン村で行われた結婚式の中継も同じ方法でビデオに収め、キャプチャしたデータを地球へと送っている。
社長は民俗学者にビデオを見せる予定だったらしいがあれを企画したのは殆ど僕と双子と分かり、やめたそうで。
今度、僕が介在しないイベントを中継しようと思うのだがなかなかそういった機会には恵まれない。
そもそも結婚式など管理貴族くらいしか行わず、普通の村ではお祭りの延長で数組まとめてやるのだとか。
一緒に住むようになってから何年か経って結婚式を挙げるというカップルもめずらしくなく、子連れで式を挙げるのも普通らしい。
という情報を元精霊溜の長であるアクアさんから聞いたところだ。
これはタングラートでの日常らしいので他の国の村ではどうなのかちょっと気になるところですが。
結婚式と言えば各国を回って合同結婚式と合コンを一度にやるという話も合ったような気がする。
貴族の次男、三男と城勤めの侍女の合同結婚式を派手にやって、そこにあぶれた独身の男女を集め、二次会で合コンを開こうというプロジェクトが水面下で進んでいる。
最初はアトレーンでやるという話までは出ているのだが。
まずはフリードリッヒさんとラダさんの結婚式を先にやらないと先に進めないので何とも。
今は宰相を務めるラダさんだが、元々は精霊国から迷い出てしまった精霊族。
フリードリッヒさんのおじいさまが預言書の言葉にしかがって森を捜索した際に見つけたのが弱り切ったラダさんだったと。
その後はフリードリッヒさんの世話役としてかれこれ30年ほど過ごしているとか。
まぁ、女性の年齢に関しては聞いてはいけないお約束があるので…。
そんな事を考えているうちに今夜の催しが終わったようだ。
しかしあの火球、どこから来たんだろう。
地球に送るドローンは今夜社長に持ち帰ってもらう予定だ。
お弁当箱1つ分くらいなので多分大丈夫だと思う。
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十六夜さん達も一緒にアミューズメントビルへと移動。
「様子を見に来ました…」
いつ用意されたのか、いくつもの段ボール箱に納められたフィギュアの数々。
一番多く取っているのがオパール王妃さま、続いてユークレスさん。
他の皆さんは数個程度といったところで、まぁ常識の範囲内と言いますか。
それに比べ、王妃二人はどこかで商売をするのかと言うくらいの数を。
これ、日の出荘の最上階からどうやって持ちだそうと一瞬考えたのだがインベントリに入れれば解決するんでした。
このフィギュアならインベントリに入れてもそんなに怖くないですし。
ラージソードガールのフルスケール版は本当に人が立っているとしか見えなくてちょっと怖いんですよね。インベントリに入れるのが。
何なら今のうちにインベントリに収納しておいてあちらで取り出しても、と思ったのだが持ち出しの法則が今一つ分からないので各自ログアウトの際に持っていただくことに。
段ボール箱は抱えてもらうのもしんどそうだし…。
一国の王妃さまがフィギュアのつまった段ボールを抱えるというのも全く想像がつかないのですが。
自分の分を取り終わった子は戦利品をぶらさげて境界の地にある自販機コーナーへと移動。
王妃ふたりには手押しのカートをお出しして、隠密メイドさんが荷物を運ぶことに。
僕と火球ショーを見ていた子は今からフィギュアを取ると言ってゲームコーナーへと散らばっていく。
さて、僕も何か…。




