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異世界に呼ばれた僕は姫様を食べるようお願いされた。  作者: まなみ5歳


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2040/2402

従者の星を案内する勇者

「勇者さま!ヤマさんに従者の星をお見せしようと思うのですが!」


時間はもう深夜と言っても差し支えない。


この時間に開いているのは繁華街と冒険者ギルドくらいなのものだ。


王城公園もふらついているのは酔っ払いくらいだろう。


「夜遅いですし、日を改めたほうが」


「益田さん、すいません。ちょっと話の流れで」


ヤマさんが古代遺物に興味があるという話が出たらしく、ならばその塊である従者の星へと案内したいのだと。


「ちょっと全員は無理ですけど、何人か護衛を付けて…」


姫さまは折れる気配が無いので妥協点を。


というかお子様達は既に就寝しているという。


あそこの案内なら数人いれば良いだろう。


ということで大体いつメンで固められたチームを編成。


シロさん、ドリアードさん、ござる侍、今日はソネッタさんも。


移動時間短縮のためにアヒルちゃんワンボックスを出すとヤマさんが何事かと身構えた。


「自我を持つ移動手段、その他色々、アヒルちゃんです」


「ぐえい」と挨拶をするアヒルちゃん。


とりあえずアヒルちゃんにご乗車いただき、急ぎ従者の星へと。


---


「ここが従者の星格納庫となります」


雑居ビルほどのサイズとなった囲いには夜番の兵士の姿が。


「預言書の勇者さま、もしや魔獣が!」


身構える兵士たち。


深夜の出動と勘違いさせてしまったようで申し訳ない。


「出動ではないのでご安心を。客人の案内をしておりますので」


夜はちょっと冷えるのでヤマさんには無難な灰色の耐火ローブを羽織ってもらっている。


というか耐火ローブ大丈夫か。しっかりしろ。


どうしてどりあーどさんみたいなことになっているんですか。山脈部分。


ヤマさんのご立派も相当のものでしたね。


いつものように入口に手をかざすとぱしゅっとスライドするドア。


「ヤマさん、どうぞ」


尻込みするヤマさんを押すのは姫さまだ。


---


「その昔、光の女神と仲間を運ぶために作られし魔導具、その名を従者の星。かつては星の海に漂い、空高くから地上を見守っていたとも言われております」


あれ、こんな場所に銘板が。


キューブオブデストロイ#33と読める文字が。


33番目に生まれし攻撃用衛星はその中身を作り替え、移動居住空間へと姿を変えた。


攻撃力はそのままに100畳敷きの和室と、管制室となる4畳半のアパートを内包。


ヤマさんには軽く概要だけを説明したのだが、100畳間に案内した時の表情が忘れられない。


近代的な空間の中にいきなり宴会場が出現するというギャップは日本人にしか伝わらないだろう。


「益田さん、これが本当に移動手段、そして攻撃手段に?」


「ええ、馬車でひと月かかる場所に1時間もあれば到着します。あとは遠隔で地表の魔獣をせん滅する機能も」


適当なガンカメラの映像を掘り出し、実際に戦っているところを見てもらうことに。


側面に設置された武器アレイからジャッジメントホーミングレーザーが放たれ、地表のぬるすらいむを爆散させるシーンを。


「益田さんはあんなものと戦って…」


「まだかわいいほうですよ。以前お見せしたと思うんですが全長50mのオケラには手を焼かされました」


まぁ、あれは攻撃してこなかったからなんとかなったのであって。


結局あのオケラが取り込んだエネルギーをどこに送っていたのかというところまでは突き止められていない。


もしかすると色々な世界にあれと同じようなモノを放ってエネルギーを集めている存在が…。


「勇者さま、どうなされたのですか?お顔の色が…」


「いや、ちょっとオケラの事を思い出して」


「あのオケラは本当に硬かったですよね…」


姫さまもジャッジメントレーザーをブッパしてましたし。


「あ…!」


「今度は何ですか勇者さま!」


「ハマトーメン村で拾った遺物、そのままだったのを思い出した」


荒れ狂う嵐の翌日に拾った、一辺が3mほとある謎の箱。


何重にもマジックスクリプトが巻き付き、ただならぬ気配を漂わせていた。


一旦僕預かりとなって従者の星の駐車スペース置いたままでまだ中を改めてなかったのだ。


「まぁ、明後日くらいでいいか…許可も取らないとならないし」


明日、というか今日は自販機を取りに行かないとならない。


そして夜にはお客様が大勢お見えになられる予定だ。


ヤマさんに100畳間を案内した後、4畳半に上がってもらい例の書き割りを見てもらう。


「これは何処の世界の…」


「たぶんみっちゃんさんの本体が居たところだと思うんですけれど」


高さ数キロはありそうな超超高層建築物の下に広がるサイバーシティ。


その一角にレトロな空間が存在し、このアパートもそのレトロ空間を構成する建物の一つと言う位置づけらしい。


先程書き割りと言ったが一応ライブなモノで、高層建築物には航空灯のようなものが明滅し、下層の街からは蒸気のようなものがたなびいている。


「益田さん、ここの写真を送ってもらうことは可能?」


「はい、可能ですよ。あ、もしかしたらポケットに」


ヤマさんに自身のポケットを調べてもらうとスマートフォンが出てきた。


A社の最新型っぽい。


「気になるところはどんどん撮影してもらっても構いませんよ」


ここで撮影したデータが何かの役に立つかもしれない。


「人物も?」


「ええ、先に断ってもらえれば」


ヤマさん、なぜかどりあーどさんに視線が。

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